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異世界スーパーマーケット一号店、本日開店します!  作者: 黒咲かぐら


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102/110

籠にかける雨蓋

「丸い籠と四角い籠、両方へつけろと言うのか」


 エナは、店に集めた六つの籠を見て顔をしかめた。


 大きさも、持ち手の位置も違う。昨日の薄い袋を見本にしても、同じ形へ作れば半分の籠には合わない。


「一種類で全部に合わせなくて構いません」と宗久。


「店の商品なら、誰でも使える方がいいんじゃないの」


 リリアの疑問に、エナがうなずいた。


「買って帰ってから合わないと言われるのは、俺だ」


 布工房は作る。だが返品を受けるのは一号店。責任の置き場所が別れていた。


 ポルカが、布の四隅へ革紐をつけた。籠の縁へ結べば、大きさが違っても使える。


 最初の試作品を水に濡らす。


 布は水を弾いた。ところが革紐が水を吸い、結び目から籠の中へ雫が落ちた。下に置いた塩包みへ、丸い染みが広がる。


「布は成功だ」と職人。


「中の商品は失敗です」と雨宮。


「俺の布のせいじゃない」


「でも、お客さんは布と紐を別々には買いません」


 エナの顔が固くなった。ポルカも、自分のつけた紐を外そうとしない。


「革を選んだのは俺だ」


「誰の失敗かを決める前に、塩を守ってください」と宗久。


 二人は黙ったまま、別の留め方を試した。


 木の留め具は、厚い籠には挟まらない。布紐は乾きやすいが、風にほどけた。縁へかける重りは、歩くたびに揺れて果物へ当たった。


 昼になっても答えが出ない。


「本社の袋を二重にすれば早い」と久瀬。


 いつから見ていたのか、入口に立っていた。


「一枚で破れるなら二枚。現場でよくある対処だ」


「二倍使えば、五十人分になります」とシャルナ。


「今日は困らない」


「明日の分が減ります」


 久瀬は反論せず、濡れた塩包みを手に取った。


「では、今日の客には何を渡す」


 試作品が完成するまで待ってもらう、とは言えなかった。


 そこへ昨日袋を破った客が、自分の籠を持ってきた。魚用の籠には、もともと木の蓋がついている。


「布は横へ垂らせばいい。上はこれで押さえる」


 布を籠より大きくし、中央に持ち手を通す穴だけ開ける。木蓋で布を挟めば、紐はいらない。


「蓋のない籠は?」とポルカ。


「店で板を貸す」と客。


 商品を一つで完成させようとしていた店へ、客が店の道具を組み合わせた。


 雨蓋は二種類にした。木蓋のある籠用は布だけ。ない籠用は、軽い押さえ板と一緒に貸し出す。買う前に、自分の籠へ合わせられる見本も置く。


 エナは濡れた塩の代金を払うと言った。ポルカも半分持つと言う。


「試験に使った塩です。店が負担します」と宗久。


「それでは、俺たちは失敗しても痛くない」と職人。


 結局、代金ではなく、改良品を一枚ずつ無償で納めてもらうことにした。失敗を罰金にせず、次の品へ返してもらう。


 夕方、雨は降らなかった。


 雨蓋を買いに来た客は三人。誰も今日使えない物を、それでも自分の籠へ合わせて選んだ。


 四十二番目の商品は袋ではなかった。


 籠の中身を守る、一枚の蓋だった。


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