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第4話 KANO④ 決着! 第8研究室

  決闘は次の日の放課後、競技棟の裏にある広大な敷地を持つ見渡す限り緑のグラウンドで行われることとなった。


  グラウンド中心あたりに魔術結界専用の触媒ーー結界柱となる黄色い宝石を埋め込んであり、その石から同心円上百ヨルドの範囲で今回の決闘は行われる運びとなっていた……知らん間に……


  もちろん、学園内での決闘は禁止とされているのでロリスは密かに裏庭とかでやるつもりだったのだが……噂が広がる早さは流石学園といったものだ。


  そしてその噂を聞きつけた内の数名の生徒がこうしてわざわざ立派なフィールドまでこしらえてくれたわけだ。


  こうなっては教員にバレてしまうのも時間の問題だ。


  ロリスはアナスタシアに“よかったら中止にしてもいいんだぜ? ”と掛け合ってはみたものの向こうは断固として決闘を破棄する気は無いようだ。


  そこにどんな作為がされているのかは判らないが取り敢えず気だるい身体を引きずってご立派な決闘場へと足を踏み入れるロリス。


  アナスタシア、ソフィーナ、アマデウス、クルトの四人はもう既に臨戦態勢を整えていた。


  「よく怖気付かずに来たわね。その面の皮の厚さだけは超一流みたいじゃない」


  相変わらず嫌味しか言ってこない後輩は何ともまあ嬉しそうな表情でこちらを見下してきている。取り敢えずぶん殴りたい。


  その後ろでアナスタシア以外の三人が顔を引きつらせどこか落ち着かない様子で周囲を気にしている。


「やっベ ( ̄ー ̄) これ見つかったら研究室だけじゃなくて学園を出て行くことになるんじゃね⁉︎」


  と言った心境は今のロリスには痛いほど伝わってくるのだが……


  何故かガラにもなく罪悪感を感じながらそれに気づいたことを気取られないよういつもの調子で返答する。


  「フッ、お前らこそ、今日ここで天賦の才を持つこの俺に挑んだことを生涯の誇りとするがいい」


  なーんてよく見るやられ役っぽい台詞になってしまい、ロリスが自宅(エリサの邸)に帰ってベットの上で悶え苦しんだのはあとの話。


  「まあ埃くらいにはなるんでしょうけど……」


  「やかましいわ⁉︎ ほら、さっさと始めるぞ」


  パチン、というアナスタシアの合図の元残る三人も覚悟を決めてロリスを取り囲むように散開する。


  対するロリスは「始めるぞ」と言っておきながらまさかの棒立ちだ。


  暖かい陽気の南風が吹く中初めに動きを見せたのはアマデウスだ。


  その健脚でロリスとの間にあった約五十ヨルドもの距離を消し飛ばしながら、今日初めて彼を見たときから握ってあった両の拳のうち右の方を開く。


  そこには既に完成済みの魔法陣が刻まれており、アマデウスの投擲により手を離れた魔法陣は完成された状態を保ったまま地面に直撃、と同時に発動。


  魔法陣が囲んでいた範囲の芝を轟音が円形に跡形もなく消しとばす。


  そこから少し遅れて空気を伝う振動波が身体で感じられるほどに強く流れる。


  ロリスはそれが掌から隠れ見えていた時点で数歩後ずさっていたので全く食らうことはなかったが、食らっていれば正直、言い訳をして試合を続行することも不可能なほどのダメージを負っていただろう。


  「オイオイ……地面えぐれてるじゃねぇか……あいつら、マジで俺を殺しにきてるんじゃねぇの⁉︎ 」


  ロリスは自分の乏しい脳内データベースから先ほどの衝撃波を放った魔術を探り当てる。


 

  風属性肯定型即時術式サウンド・エクスプロージョン。



  二十四番目のルーン。『変革』を用いた魔術式で構成されている範囲指定型の魔術爆弾だ。


  学園で習うにしては高すぎる殺傷性と難しい構成理解から三年生になっても使えない者は多い術式なのだが……恐らく昨日のうちから準備していたのだろう。まだ握られている左の掌には何の術式が書かれているのやら……(泣)


  残弾を考えながら突っ込んでくるアマデウスにばかり気を取られていると、後ろに下がったことで近づいていたクルトが空中に二本の直剣を浮かべて自分を狙っていることに気づく。


 

  闇属性肯定型即時術式ビクティム。



  十七番目のルーンである『勝利』を用いた斬撃用術式だ。


  殺傷能力はないが、斬られた部分より先が麻痺する特性を持つこの術式は術者によってある程度の遠隔操作が可能となっているため、避けることが難しくなっている。


  これも食らったらひとたまりもない術式だ。この布陣を考えたのがあの憎っくきアナスタシアならば意外と彼女はできる娘なのかもしれない。


  ロリスは脇目も振らず今自分のいる位置から最も遠いソフィーナの元へと走り込む。二人はそれを追う形で追撃を仕掛けてくる。


  「悪いな可愛いお嬢さん。俺も正直勝つのでいっぱいいっぱいなんだわ」


  明らかに同士討ちを狙っているロリスにソフィーナは何か策があるかのように微笑みかける。


  「ロリス先輩こそ、あまり私を甘く見ないでくださいね? 」



  「《ロックウォール》」


  ソフィーナがその術名を言い終わるやいなやロリスとソフィーナの間を大きく隔てる岩壁が現れる。


 

  地属性肯定型継続術式ロックウォール。



  地面を隆起させ、壁を作り出すという単純な術式なのだがここで出されたのは痛い。


  クルトとアマデウスの攻撃はこの壁のおかげでソフィーナに当たることはない。


  さらにロリスは壁一枚と三つの攻撃が四方から自分を捉えられている。


  アナスタシアは不敵に笑みを浮かべ、



  「獲った」



  と、喜んだのも束の間、ここまで順調にロリスを追い込んできたアナスタシアの完璧すぎる計画は音を立てて崩れた。


  「ぎゃー⁉︎ 」


  と、ロリスの短い悲鳴。


  そう、何を隠そうこのロリス、運動神経皆無である。今までの攻撃は生物的勘で何とかかいくぐってきたものの、ここにきて自分の足にもつれてコケるという無様な失敗をヤラカシたのだ。


  これに咄嗟に反応できなかったアマデウスとクルトの二人はそれぞれの魔術をソフィーナの作り出したロックウォールに直撃させ、ソフィーナはそのまま瓦礫の下敷きになってしまっていた。


  「ソフィーナ⁉︎ 大丈夫なの⁉︎ 」


  もう勝負そっちのけで瓦礫の下敷きになった親友の元に駆け寄るアナスタシア。


  「ううっ……」


  幸い意識はあるし、酷い怪我を負っているわけではなさそうだが……大岩の下敷きになった足が腫れ上がっている。


  「何事だ! 」


  結界の外から太く大きな声が聞こえてくる。データス教授だ。


  どうやらこの騒ぎの中ロリスが中心にある結界を解除していたようだ。


  駆け寄って来たデータス教授はまだソフィーナの足の上に乗っていた岩を軽々とどかし、抱え上げる。


  「今からこの子を医務室へと連れて行くが……その前に、この決闘騒動の首謀者は誰だ? 」


  その場にあった空気が三人に重くのしかかる。自分が決闘なんて受けなければ……と、アナスタシアは責任を感じ、手を上げようとした。


  が、それを制するように声を上げた人物がいた。


  「俺がこいつらに決闘をふっかけた張本人だ」


  ロリスが淡々とデータス教授の元まで歩いて来た。


  教授が抱えている痛々しい姿となった亜麻色の美少女を覗き込み、今までに見たことがない顔で


  「マジで、ごめんな」


  と、一言謝罪の言葉を述べると後から来た教員たちに連れられて消えてしまった。


  「うっぐ……ひっく……ソフィ……」


  泣きじゃくる彼女の目にはロリスの寂しげな小さな背中は映らなかった。

ロリスとデータス教授は意外と古い仲だったり……(悪い意味で)

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