第5話 ヒトのカノーセー
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扉絵です
ここはニシナリ、純喫茶スワン。
4人掛けのテーブルに、見るからにギャルと、不釣り合いなおっさんが向かい合い、一心不乱にプリンアラモードを食っている。
土曜日の昼下がりである。
「ところで師匠。」
サトーはまず脇役のメロンやチェリー、なんとなればカラメル上の生クリームを一掃し、しかる後に主役のプリンにとりかかる。
それがサトーの流儀なのである。
弟子になったからといって何が変わるわけでもない。
だが、なんとなく弟子っぽいのである。
「なんや、弟子?」
ハナちゃんはまずなにより主役のどてっぱらにスプーンをぶっ込み、脇役ごと一飲みにする。
それがハナちゃんの流儀なのである。
いかにも師匠なのである。
「前から気になってたんですけど、師匠は普段、何してるんですか?」
弟子としては、師匠の生態が気になるのである。
「うちか?そらお前、底辺ギャルやんけ。」
ハナちゃんの口からメロンの皮が釣銭のように排出される。
その横には日本人形が鎮座している。
「いやいやいや、そうじゃなくて・・・」
「うちハナちゃん言いますねん。普段はニシナリで底辺ギャルやらせてもーてます。ふんっ!」
ハナちゃんの鼻孔からチェリーの種がひり出される。
サトーの眉間にめり込んでいく。
「だからそうじゃなくて、例えば私の場合、ビジネスパースンじゃないですか。」
「ビジネスパースンぷ!何イキっとんねん、
要するに社畜やろ。
そんなもん資本主義経済社会の奴隷やんけ。」
「相変わらずボロカスですねえ。
まあ社畜うんぬんはいいとして、本業って言うんですかね?
そういう意味で、師匠は何者なんですか?」
「ふふふ気になるか。」
「そりゃそうでしょうよ、
だってギャルなのにやたら物知りだし、こんなにかわいいのに、
口を開けば関西版の立川ダンシみたいですし。
一体何者なんですか?
雰囲気的に言って大学生とも思えませんし、
なんか無駄に大物感があると言うか・・・。
あ、ひょっとして、会社とか経営してるんですか?」
ハナちゃんは残りのプリンをアナコンダのように丸のみする。
「可能性や。」
「は?カノーセー?」
「そや、うちは可能性なんや。」
「はあ・・・若さは可能性とか、そういう根拠なき若さ自慢ですか?」
「ちゃうがな、うちは可能性そのものやって言うてるねん。」
「あー、またいつものやつですね、意味不明なやつ。」
「まあ、無知蒙昧な愚民のお前には理解できひんわな。
まだ真実を知る準備もできてないしな。
よっしゃ、ほんならサトー、うちが今から特別に、
この世界のトップシークレットを教えたるわ。」
「おー待ってましたよ師匠、お願いします!」
「ションベンちびりそうになるど、いわゆる神回や。」
「ひゅーひゅー」
「でもその前に、ひとつお前に課題出すど。」
「おーいいですよ、どんな課題ですか?」
「こないだの逢い引きの時に、うちがお前に教えたったこと、簡単に説明してみい。」
「逢い引きって、ここで私が師匠の意味不明な話を延々聞かされてただけじゃないですか。あれは罰ゲームですよ。」
「なに言うとんねん、オスとメスが向かい合って、こんなオーセンチックな茶屋でレーコーしばいとったら、それはもう完全に逢い引きやと思えへんか?
まあ仮にこの茶屋に他の客がおったとしたら、そいつらからは完全に援助交際認定やろけどな。」
「援助交際って、せめてパパ活って言いましょうよ。ところで師匠、オーセンティックってどういう意味ですか?」
「そらお前、古色蒼然、旧態依然、崩壊寸前て意味やんけ。」
げらげら
「笑てんと、早よ説明せえや。」
「ああすいません、前回のセッションですよね、
えーっと、まあ要するに、
世界には何でもやりたい放題な超絶金持ちがいっぱいいる、
でも彼らの共通点は、いわゆる成功者とかそんなのじゃない、
彼らはみんなセーシンのソーゾーリョクを利用している、
だからセーシンのソーゾーリョクを駆使すれば、
たとえ私でも、ニシナリのピル・ゲイツになれる、
確かそんな話でしたよね。」
「おお、ええやんけ、サトーにしては上出来やど。
これで読者の皆様も時系列が整理できたやろ。」
「読者?整理?ジケーレツ?」
「せや。」
「なんですか、その読者って?時系列って、どういうことですか?」
「読者っちゅうのはやな、この小説的啓蒙記事を読んでくれておられる、読者の皆様や。」
「いやー、今回はさらにパワーアップしてますね師匠、おクスリでキマっちゃってます?」
「ほんで時系列っちゅうのはや、
第2話から第4話までがうちとお前の出会い編で、
第1話が初めての逢い引き、
ほんで今回がその続き、ちゅうことや。」
「師匠ー、こっちの世界に帰ってきてくださーい。」
ハナちゃんがポシェットから豚足を引っこ抜く。
「ええかサトー、お前、自分が生きてる生身の人間やと、そう思てるやろ。」
「思ってるもなにも、私は生身の人間ですよ。」
「ちゃうねんど。」
「はあ?」
「お前は生身の人間と、ちゃうねん。」
ハナちゃんの青い瞳が、ギラリと光る。
<第6話予告!>
ニシナリのシンジツを語るハナちゃん。
理解できないサトー。
混乱する読者の皆様。
果たしてこの物語は、
どこへ行こうとしているのか!




