第4話 師弟、爆誕!
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扉絵です
「おおそうか、想定外か、完全に想定外かいな。ほいだら、お前はどんな想定してたんや?」
「え?」
「そやから、お前の想定は、どんなんやったんや?」
「それは・・・」
サトーが言葉に詰まる。
「底辺ギャルなら、ちょろいもんや、それがお前の想定やろ。」
「・・・」
「頭の悪い貧乏ギャルなら、数千円の小遣い与えて、飯食わしたったらマタ開きよる、そう思てたんやろ。」
図星を突かれ、サトーは言葉が出ない。
「クズやんけ。」
「・・・」
「お前はクズや。ど腐れじゃ。」
「・・・」
「そこに愛は、あるんか?消費者金融ちゃうど。」
サトーは思う、誰かを手に入れたいと思ったことはある。
でも、誰かを愛したことなんて、あったのだろうか。
「例えばや、お前が女とせえや。」
「・・・」
「みちばたの糞みたいなクズ女ってわけや、まさにお前のストライクゾーンど真ん中やんけ、おもろ。」
「・・・」
「で、そんなクズ女の目の前に、今のお前が現れて、小遣いやるわ、ついでに吉野家で牛丼の並おごったるさかい、ヤラせろ、って言うて来たとするやん。」
「・・・」
「タマゴは有料やからあかんけど、つゆだくは無料サービスやから、じゃぶじゃぶにしていいよーとか、追い打ちかけてきたとするやん。」
「・・・」
「マタ開くか?」
「・・・」
「メスバージョンのお前は、ゆつだくはOKでタマゴはNGな今のお前のことを、なんて素敵なセニョールと思て、マタ開くんかって聞いとんねん。」
「・・・」
「まあ、そういうこっちゃ。」
サトーは床に刺さっている差し歯から視線を動かすことができない。
「ところでサトー、ここは喫茶店やど。」
やがてハナちゃんが口を開く。
「え、あ、そう、そうだよね・・・」
「なんか注文したんか?」
「あ、いや、何も・・・」
「あかんやろ、なんか注文せえや。」
「そ、そうだね、そりゃそうだね。」
「うちはいつものん頼むさかい、お前、早よ決めろ。」
「う、うん、ええっと・・・」慌ててサトーがメニューを探す。
「ここはな、コーヒーとプリンアラモードしかないねん、そやから、二択や。」
「え、そうなの?」
「どっちがええ?まあ、両方頼むって手もあるけどな。」
「え、い、いや、じゃ、じゃあ、コーヒーで。」
帰るという選択肢が存在したことを、サトーはすでに忘れている。
「おおマジか、プリンとちゃうんか?」
「え、あ、ああ、コーヒーで、いいよ。」
「そうなんか、見るからに甘党って感じの、締まりのないツラしとるけどな、まあええわ、で、ホットでええんか?温度は選べるど。」
「え、あ、そうなの?じゃあ、ちょっとのどが渇いちゃったから、アイスにしようかな・・・」
「よしゃわかった、シンちゃーん注文ええか?うちはいつものんな、ほんでこいつにレーコーよろしゅうに。」
「レーコー?」
「レーコーや、冷製コーヒーやんけ。知らんのか?この界隈では標準語やど。ひょっとしてお前、関西人ちゃうんか?」
「え?あ、うん、実は関東出身なんだ。」
「知らんがな、どうでもええわ、興味ないわ。」
「なんだよそれ、聞いてきたのはそっちだろ!」
げらげら
いつの間にか会話そのものを楽しんでることに、サトーは気付いていない。
「合格や。」
「は?」
「お前、合格や。」
「何、合格?何が?」
「せやから、お前は、合格なんや。」
何に合格なのか、サトーはさっぱりわからない。
「お前、反論せえへんかったやろ。」
「・・・」
「言い訳せえへんかったやん。」
「・・・」
「真正面からクズ扱いされても、反論も言い訳も、ブチギレたりもせえへんかったやん。」
「・・・」
「ふつうブチギレて、そこで終わりやど。」
「・・・」
「お前は世界を、つなぎとめたんや。それでええ、ようやった。」
「・・・そんな、大げさな。」
「そやから、お前は、合格や。」
「・・・だから、その合格って、クズ認定試験に合格って、こと?」
「お前、案外おもろいやんけ。」
げらげら
「お前、今日からうちの弟子な。」
「はあ?弟子?」
「まあ、乗りかかった船や。うちがお前を鍛えたる。」
「鍛える?え?」
「カネもらってもマタ開きたくない男から、少なくとも金額次第ではマタ開いてもいいかな、ってところまで、面倒見たる。」
「なんだよ、その中途半端な目標設定は!」
「せやから、今からうちのこと、師匠って呼べよ。」
「はあ?」
「ハナちゃんちゃんとか、馴れ馴れしゅう呼ぶなよ。」
「あんた、さっきから何言ってんの?」
「おいサトー!」
「は、はい!」
「うちのこと、よーう見てみてみい?」
床の差し歯しか見ていないサトーは、言われてハナちゃんを凝視する。
真っ青な瞳。
くるくるの金髪。
アリのようなウエスト・・・
「どや、かわいいやろ、うち。」
「う・・・」
「ばっきばきにかわいいやろ、うち。」
やばい。
かわいい、かもしれない。
「お前の想定のナナメウエやろ、うち。」
やばいーかわいー。
「ナウでヤングなぴちぴちギャルやど。どや、完全にマブいやろ。」
っきゃーやばいーうれしー!
「うちのこと、好きやろ?」
「うん、好き!」
「馴れ馴れしゅうすな言うてるやろ、撲殺するど。」
「すいませんでした師匠、愛していますー!」
「おー、ええがなええがな。ええかサトー、愛されたいなら、まずお前が愛するんやど、与えてほしかったら、まずお前から与えるんやど、わかったか?」
「はい師匠!」
「せやから、ここもお前が払うんやど、それが、愛や。」
「合点承知!!」
「床の差し歯、忘れんとひろて帰れよ。」
「ありがとうございます。師匠も、ご安全に!」
「おいおい、プリンアラモード、まだ食うてないやんけ。それにお前もゆっくりコーヒーしばいて行けや。ああそれと、言うとくけど、ここのコーヒー、びびるほど不味いど。」
げらげら
こうして無事、人生初ニシナリを果たしたサトーに、春が来るかわりに、人生の師匠が爆誕したのである。
そして帰るという選択肢が消え去ったあの瞬間から、サトーの人生が勝手に動き始めていることに、サトーはまだ気付いていないのである。
<第5話予告!>
ハナちゃんに弟子入りしたサトー。
そしてショーゲキ的なこの世のシンジツに触れる。
そしてサトーは、うっかり師匠の禁忌にも触れてしまう。
師匠の逆鱗に触れたサトーに天罰が炸裂!
それは神々の粛清なのか?それとも高枝切りバサミか!
っきゃー!!




