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第3話  そこに、愛は、あるんか?

https://img1.mitemin.net/6u/pd/8aqge04z9gim1czhgqffcccblw4f_155f_16o_sg_1r6iy.png


扉絵です

「待たせたなサトー、うちがハナちゃんや。ハナちゃんまでが名前やさかい、うちをちゃん付けで呼びたいんやったら、ハナちゃんちゃんになるわけや、アグヌス・チャンちゃんみたいなもんやな。」


言うなりハナちゃんはサトーの正面席に座り込む。

「で?」

たすき掛けのポシェットから、ハナちゃんが豚足を引っ張り出す。

「で、どうするねん、これから。」

細長いギャルが目の前で豚足を吸っている、それがサトーには理解できない。

帰りたい、しかしここまでの電車賃および繰り返しシミュレートして来たハッスルハッスル生活を考えると、それも惜しい。


どうしよう・・・

考えろ、考えろ私・・・


ぴきーん


そうだ、ピンチの時は「初心に帰れ」、これか!


「な」震える声でサトーがうめく。

「な?」

「な・・・」サトーの両手に汗がにじむ。

「なんやねん、はっきり言えや。」

言われてサトーは腹をくくる。

「なんて素敵な、セニョリタ・・・」

床に転がる差し歯に視線を向けたまま、サトーが絞り出す。

「どうしてん、お前、逝かれてんのか。」

げらげら


サトーの中で何かがはじける。やっぱり帰ろう、今すぐ帰ろう。

果たしてサトーは立ち上がる。


「帰るんか。」

ハナちゃんが豚足を灰皿に置く。


「お前、いったい何しにここまで来てん?ユーはなにしに、ニシナリへ?」

「・・・」

「人生変えに来たんとちゃうんか。」


人生?

変える・・・?

予想外の言葉にサトーは戸惑う、しかし反論できない。


「そんな、そんな大げさなもんじゃないよ・・・」

絞り出す声が裏返る。

「なんでやねん、お前、セフレほしいんやろ?」

「え?」

「そのためにわざわざニシナリ界隈まで来たんやろ。」

「・・・」

「ごまかさんでええがな、出会い系やっとるやつらなんて、どいつもこいつも程度の低い連中ばっかりや。お前だけちゃうから、安心せえ。」

「・・・そう、なのかな。」


「でもお前にセフレができるなんて、完全に異次元ストーリーやんけ。」

ハナちゃんが真正面からサトーを見つめる。

「な・・・」

「非現実や、ファンタジーやん。」

「君ね・・・」

「金銭のやりとりなしで女を抱けるなんて、今のお前には完全に不可能姉妹やど。」

「・・・」

「人生変えへんと、無理やど。」


人生を、変える・・・


「それか、ヤリたいだけか?」

「それは・・・」

「ヤリたいだけやったら、相手したってもええど。ホテル代別で2枚や。どや、こんなギャルと2枚やったら安いもんやろ。あ、ゴムはせえよ。」


「・・・違う。」

サトーの心が叫ぶ。

人生を変える

その言葉が頭から離れない。


「違う?ああ、生がええんか。ゴムなしやったら3枚や、そのかわり2発まで許したるわ。チックトック無限スクロールしとくさかい、2回イったら知らせてくれや。どや、条件的には悪ないやろ?でも中で出すなよ、中出ししたら、茹でて冷やして皮剥いてツーテンカクから突き落とすど。」


「だから、違うんだよ!」

心の叫びが、ついに言語化する。


人生が、変わる

「毎日」を日々繰り返すサトーは、そんな可能性についてなど、今まで考えたことがなかった。

しかし、とサトーは思う。

私は、セフレが欲しかったのではないのかも知れない。

人生を、変えたかったのかも知れない。

 

ハナちゃんが豚足をポシェットにしまう。

「愛されたいんやな。」

「え?」

「愛されたいわけやろ、お前。」

「・・・」 

「それやったら、愛さなあかんど。」

「え?」

「愛してほしほし、愛してくれくれ、それは、勝手や。完全に自己チューや。」

「・・・」

「愛してほしかったら、愛さなあかんねん。枯れたくないんやったら、まずお前が、枯れ木に花を咲かせたれや。」

おぢいさん、

おぢ悲惨、

でも、はなさかじいさん、

枯れ木に花を咲かせる人生・・・

サトーは考える。

自分は今まで、損得勘定なしに、誰かのために、何かをしたことが、あるのだろうか・・・


「よっしゃ、ほな、練習しよか。」

「え?」

「練習やんけ。」

「練習?」

「お前、今ここで、うちのこと、愛してるて、言え。」

「はああ?」

「はあ、ちゃうやろ、お前、うちの書き込み見て、ここまで来たんやろ。」

「あ、ああ。」

「会うてる間は、ずっと愛してるって言えって、書いたあったよな。」

「あー、あ、ああー!」

「ほんでお前はおっさんやさかい、うちの隠れた魅力がわかるんやろ、若い衆とは違うんやろ?」

「それは・・・」

「言え、ハナちゃんちゅきちゅきて、言え!」

「やだよ!」

「早よ言えや。」

「そんな、無茶苦茶だろ。だいたい今あったばっかりで、君のことだって何にも知らないんだぞ私は。それをいきなり愛してるだの好きだの、言えるわけないじゃないか!」

もう我慢ならない、サトーはついに爆発する。

爆発しながらも、こんなに感情的になっている自分に、少し引いている。


「おー、ええどええど、サトーええど。もっと言え、お前の本音、もっと言え。」

「こ、こんなことになるなんて、完全に想定外だよ、不愉快だ!」

「ソーテーガイ?」

「そうだ、想定外だ、完全に!」

しばし二人はにらみ合う。

一体私は何をしているのだろう、サトーはふと思う。

<第4話予告!>

サトーをしばき回すハナちゃん。

ハナちゃんにしばき回されるサトー。

やがてそれは、美しい子弟愛へと、昇華する。

二人をとりもつのは、プリンアラモードなのであった!


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