第2話 シャル・ウィ・ダンス イン ニシナリ
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扉絵です
タイトル:ていへんぎゃる
募集内容:なんでもします。なんでもいうてな。
そのかわり。あってるあいだわずっと。すきっていうてほしい。
そしたらいきて、いける。
投稿者は「ハナちゃん」、
21歳か。
私に家族がいたら娘でもおかしくないな、ちょっと若すぎるかな。
娘か・・・お嬢プレイも悪くないな、
いやいや、悪くないどころか・・・
おじょー!っきゃー!
しかしこの子どうやら相当に頭が悪そうだ。
それに男運もあまりよろしくないのかもしれない。
うん、たぶんよろしくない、
てかよろしいはずがない。
いいぞ、ものすごくいい、そんな気がする。
よしこの子にしようそうしよう、ロックオン!
でもここでがっついてはいけないのである。
なにせ相手は小娘、まずは大人の余裕を見せつけてしまおう。
だって大人の価値は「余裕」なのだから。
そして私は大人なのだから。
でもって、ねんごろになったあかつきには・・・
はぁーいハッスル!ハッスル!
っきゃー、やばいーうれしー!
マッチングアプリ歴6ヵ月。
いまだなんの成果もないその男は、しかして大人のヨユー的メッセージの送信を試みるのである。
(メッセージの送信)
ハナちゃんさん初めましてぺこりんこ。
サトーと言いマッスル笑。
あ、ぜい肉しかない爆笑!
投稿拝見しましたよ、はぁーいけんけんキリッ。
ハナちゃんさんだめだよそんなに自分を悪く言ったら。
だめよーだめだめ古っ。
ハナさんちゃん(故意=恋)は自分で思ってるよりずっとずっと素敵女子だしん!
若い男にはわからないちゃんハナ(故意=恋)の魅力、おぢさんの僕なら全部受け止めるしん!!
ひょっとしたらハナちゃんのお父さんくらいのおぢさんだけど(むしろおぢいさんてかおぢ悲惨でもおぢ遺産)。
おへんぢくれたらマンモスラッチー!
15分経過。
お返事キター!
初めてお返事キター!!
初めて「4ね」以外のお返事キター!!!
めっせーじありがとうとか書いてるー!
っきゃ、ーやばいーうれしー!
「あうなら、ばしょはうちがきめていい?」
もっちろんろん、と返信。
どこかなどこかなー、デイトー!デイトー!!
グランドフロント?西ウメエダ?
でも私、そういえばオサレスポットなど何も知らないぞ。
レストランとかカフェとか、スバータックスぐらいならわかるけど・・・
これはいかん、相談されたらどうしよう、オヌヌメとか聞かれたらどうしよう。
そうだAIに聞いてみよう・・・って
お返事キター!
しかも早いー!
世界はこれを愛と呼ぶんだぜー!!
「うちのほーむはニシナリやねん、そやさかいニシナリにきてほしい」
・・・ニシナリ?
どこ、それ・・・?
AIいわく、ニシナリとはオーサカ市にあるニシナリ区域のことで、日雇い労働者や生活困窮者が一点集中的に集まるスポット、すなわちオーサカで最も治安の悪い場所として全国的知名度を誇る、らしい。
なるほど・・・
まったくもって行きたくない。
しかし、しかしですぞ、この機を逃せば次いつこんな天使に出会うことができるのか、完全に未知数じゃないか・・・
そうだそうだよ、
行きさえすればいいのだから、
ニシナリに行きさえすればいいのだから、
ニシナリというのは、ただの待ち合わせ場所なのだから。
そしたらついに、ついに私に春が来るー!!
そしたら毎日ハッスル!ハッスル!
っきゃーやばいーうれしー!
かくしてサトーは指定の時間に間に合うよう、ニシナリ目指して進撃を開始するのである。
ハンキュ沿線住まいのサトーは何の矜持かナンカイー電車への乗車を頑なに拒絶、遅延しがちなジェイアールを乗り継ぎ「シン・イマミヤ駅」で下車。
「撤去反対!」というノボリがはためく意味不明な巨大廃墟に圧倒されながらも地図アプリに従い、進撃を継続する。
ショーワで時が止まったような街角を何度か右往左往し、やがてハナちゃん指定の逢引スポット「純喫茶スワン」がその姿をあらわす。
無駄に重厚な入り口扉。その右側にあるメニューディスプレイ。
空のコーヒーカップ、オリジナルブレンド350yen。
色褪せたプリンアラモード500yen。
その間にはなぜか日本人形・・・
理由はわからない、なんなら知りたくもない。
ただ「めぢるしわにほんにんぎょ」というハナちゃんのメッセージがストンと腹に落ちる。
カランカラン
何が鳴っているのだろう、扉を開くと音がする。
店内を見渡す。
テーブル席が3つ、カウンターも数席ある。他に客はいない、マスターらしき姿もない。
っきゃー、こわいー、帰りたいー!
テーブル席の一つに日本人形が鎮座している。
「めぢるしわにほんにんぎょ」。
勇気を振り絞ってサトーはそのテーブル席に腰をおろす。
すると奥からマスターっぽい人がカウンターの向こう側に登場。
少しほっとする。
ほっとした途端なけなしの余裕が戻ってくる。
そうだ、余裕。
大人の魅力、それは余裕。
サトーは冷静さを取り戻すと、あくまで冷静に、これまでそしてこれからの行動を整理する。
入店→日本人形→着席まで一直線すなわち入り口扉は背面にあるさすれば入って来るハナちゃんの姿を目視により確認できないしかしながら入り口をガン見できる向かいの席に移動すればそれはまるで死肉をむさぼる飢えたハイエナ同然でありすなわちそれはいわゆる大人のヨユーとは真逆なのであるからしてつまり今の場所が最適解なのであるなんとなればあのカランカランがハナちゃんの来店を告げるであろうからカランカランののち一拍置いて振り返るそれが大人のヨユーなのでありハナちゃんの姿を悠然と眺めなんて素敵なセニョリタとほほ笑みながら静かに立ち上がりそしてゆっくり近づきそしてハグからのチューからのベロチューさすればあとは・・・
はぁーいハッスル!ハッスル!
っきゃー、やばいーうれしー!
「お前が、サトーやな。」
唐突に後ろから声を掛けられ、サトーがえづく。
差し歯が飛ぶ。
一拍置いて、フクロウのように振り返る。
目線の高さにヘソが見える。
見上げようと口を開ける。
そして視線が合う。
抜けるようなディープブルーの瞳がサトーを見下ろしている。
「なんせ、客、お前だけやんけ、そやさかい、お前がサトーってことやん、これ完全に理屈やろ、ロジカルシンキングってやつやな。」
げらげら
ああ、やっぱり来るんじゃなかった、ニシナリなんか、来るんじゃなかった・・・
<第3話予告!>
初対面にしてサトーをフルボッコにするハナちゃん。
サトーはそれを受け入れるのか!それとも反発するのか?
果たして人生は、変わるのか!?
そしてそこに、愛は、あるんか!?




