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第11話 セット、設定、セッティスト

https://img1.mitemin.net/4s/5y/kac82gsglt6rhi6pgiu04tylan8s_18sf_16o_sg_1ujfb.png


扉絵です

ここはニシナリ。

純喫茶スワンでは、

ハナちゃんとサトーが、

アフターヌーンプリンアラモードを、満喫している。


「ねえ、師匠。」

「なんや、弟子。」

「この日本人形、必要なんですかね?」

ハナちゃんのとなりに鎮座する日本人形を眺めながら、

サトーがプリンの一角をスプーンで削る。


「当然やろ、完全に必要やんけ。」

スプーンをくわえたまま、ハナちゃんが答える。

「予約席には、この日本人形を置く、

それは、わかってるんですけどね・・・」

「わかってるんやったら、それでええやんけ。」

「いや、でも、ですね・・・」

「なんやねん、

何が言いたいねん、

はっきり言えや。」

「い、いや、あの、

正直、私も、もう何度もスワンに来てますけど・・・」

さとーが、ためらう。

やがて、腹をくくる。

「ここって、私たち以外、

他にお客さんが来たこと、ないじゃないですか・・・」

スワンに沈黙が、充満する。


ハナちゃんが、口からスプーンを引っこ抜くと、

ボールペンよろしく、指先でくるくると、回してみる。

1秒間に20回程度、回っているように、見える。


「そやったっけか?」

「何をとぼけてるんですか、

他にお客さん、見たことないんですよ、私。」

「それでよう潰れへんな、ここ。」

「そうでしょう、ほんとそうですよね。

だから、この予約人形、

存在意義を、ほとんど感じないんですよねえ。」

サトーがちらっと日本人形に目をやる。

日本人形が、サトーをにらんでいる、そんな気がする。


「それは、しゃあないやろ。

それがこの子の役割なんやからな。」

「まあ、そうかもしれないですけど、

実質的な意味は、ほとんどないですよね。」

日本人形が、少し哀しそうに、見える。


「実質という話をするならや、

もしスワンに、外国人観光客が炸裂してみいな、

予約しててよかったーって、感謝する日が、来るかもしれへんやん。」

「来ますかね、そんな日が。」

「そらわからんやろ、

なんせ今、ニッポン、大人気やんけ。

この界隈も、外国人観光客が炸裂しとるど。」

「まあ確かに、観光客用のホテルとかも、

近くにありますもんね。

その割にはこの通り、ぜんぜん人いないですけどね。」

「それがええんやんけ、

にぎやかになったら、それはもう、スワンとちゃうど。」

「だったら、ますますこの人形、意味ないじゃないですか。」

「まあ、そう言うなって。」


「それに・・・」

サトーが再び、視線を日本人形に向ける。

「それに、何や?」

「それに・・・ほら、汚したくないじゃないですか、この人形。」

「・・・そうなん?」

「ええ、はい。なんか、コーヒーこぼしたり、

プリンのカラメルつけちゃったりとか、いやでしょ?」

「・・・ふうん。」

「なんて言うんですかね、この人形、古ぼけてますけど。」

日本人形が、サトーににじり寄った、気がする。

「それでも、気品があるっていうんですかね。

なんか、汚したくないんですよね。」

「・・・」

「正直言いますと、結構、気を使ってるんですよ、私、この人形に。」

日本人形が、少し姿勢を正したように、見える。


「えらい、気に入っとるねんな。」

「違いますって、気を遣ってるんですって。」

「結婚したら、どや?」

「はあ?」

「お前、もう、三次元の女はあきらめて、

人形と、結婚せえ。」

「嫌ですよ!まだまだ、あきらめてないですからね、私!」

日本人形のほうも、嫌がってるような、気配がある。


「まあ、冗談はさて置いてや、

ええか、サトー、

これは大切なことやから、よーう、聞けよ。」

ハナちゃんが、サトーを見据える。

「な、なんですか、急に・・・怖いんですけど・・・」

サトーが、びびる。


「スワンでは、

予約席に日本人形を配置するっちゅうのが、

ルールや。」

「・・・な、なんですか、それ。

もう、びびらさないでくださいよ。

びっくりしたなー、もう。」

サトーが心底、ほっとする。

「いや、だからね、

そんなルール、変更すればいいじゃないですか。」


「そら、あかん。」

ハナちゃんが、プリンアラモードを、テーブルに、置く。

「ええか、ルールっちゅうのは、そない簡単に変更できへんのや。」

「え?」

「設定ちゅうのは、そういうもんなんやど。」

「そんなおおげさな。

設定なんて、変更すればいいんですって。」


ハナちゃんの青い瞳がきらりんと光る。

「お前、それはあかんやつや。完全に、あかんやつやど。」

「え?どういうことですか?」

「お前、設定を軽く考えすぎや。

設定こそ、すべてやど。」


サトーのメガネが、ギラリと光る。

「・・・来ましたね、今回はそういう話なんですね、師匠。」

「そやな、今回は設定について、深堀りしよやないか。」

「いいですね、おもしろそうですね!」

「よっしゃ、ほんなら、この日本人形の設定を理解するために、

サトー、まずお前、時速100kmで、走れ。」

「は?」

<次回予告!>

時速100kmでサトーが投げる!

時速100kmでサトーが走る!

そしてサトーが、光で世界を照らす!!

その光は、太陽なのか、

それとも懐中電灯か!?


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