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この世界の理不尽に耐えられず、心から願ったら異世界の空に放り出されたのだが???  作者: はるのひ


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第8話 守れなかった約束


挿絵(By みてみん)

「……まさか。」


「お前……ガレスか……?」


コラソンたちは驚く。


「知り合いなの?」


アルファは目を見開いたまま答える。


「元々私の騎士団にいた騎士だ。」


「娘の病を治す薬を探すため、騎士団をやめ首都アストリアへ向かったはず……。」


「お前は何をしてるんだ?娘さんを治すんだろ?」


「なんのために騎士団を、やめたんだ?」


男は何も反応しない。


ただ悪意の満ちた目をしている。


アルファはもう一度叫ぶ。


「おい、ガレス!私だ!アルファだ!」


アルファはガレスに何度も呼びかける。


「ガレス!!」


「娘さん、いやメイは今でも待ってる!」


「『お父さんは約束を破らない』って、ずっと信じてる!!」


「お前が帰ってくる事だけを希望にしていたんだ」


すると男は顔をピクッとさせる。


「…メ、イ…」


一瞬だけ記憶がよみがえった様に見えた。


しかし次の瞬間、胸元の魔石が赤黒く脈打つ。


男は苦しそうに胸を押さえ、


「俺はメイなど知らんっ!!」


再びガレスの瞳は再び狂気に満ちた。


アルファは歯を食いしばる。


「そんな……心まで奪われたのか……。」


「……。」


操られた魔獣がアルファを吹き飛ばす。


アルファは血を吐き、膝をつく。


「くっ……!」


コラソンは静かに歩き出す。


怒鳴りも叫びもしない。


ただ悲しそうにガレスを見る。


「あなたも……被害者なんだね。」


アルファは叫ぶ。


「コラソン!!」


ガレス


「お前はなんだっ!」


コラソンは刀・アルマにそっと手をかける。


そして一歩踏み込む。


一瞬。


誰にも見えないほど速い斬撃。


キン――。


静寂だけが残る。


ガレスは立ったまま動かない。


アルファは息を呑む。


「まさか……。」


しかし。


ガレスの身体に深い傷はない。


代わりに胸元に埋め込まれていた魔石だけが、


パキッ……。


と音を立てて砕ける。


アルファ


「これは魔石か?」


ガレスの赤黒かった瞳に、少しずつ光が戻る。


「……俺は……。」


「思い出した……。」


「娘の薬を探しに……アストリアへ……。」


「それなのに……。」


「娘のことまで忘れて……俺は……。」


涙が止まらない。


「そうだ首都に着き町中の、薬屋を回っている時、ローブを纏った怪しいやつに声をかけられて……。」


「俺は……何をしてきた……。」


「どこで……間違えたんだ……。」


「私がしてきた悪事は覚えている…。

もう取り返しがつかない…」


アルファは何も責めない。


「お前が何をしてきたか私は知らない。」


「それは許されない事かもしれない。だけど…。」


言葉に詰まる。


ガレスは崩れ落ちる。


アルファはそっと肩に手をかける。


「帰ろう、ガレス。ギルドにも報告しなければならない。」


「メイは今でもお前を待ってる。」


ガレスは娘の姿を思い出し。震えながら笑う。


「……帰れるのかな。」


「こんな父親でも……。」


その瞬間。


ガレスの胸元に残っていた魔石の欠片が、不気味に赤く光る。


ガレスが目を見開く。


「ま、待ってくれ……!」


遠く離れた場所から冷たい声だけが響く。


「─魔石の損傷確認。」


「消去」


ガレスは苦しみ始める。


アルファが駆け寄る。


「まさかっ!どこから?」


「ガレス!!」


コラソンも刀を抜くが間に合わない。


魔石が体内から暴走し、黒い魔力が全身を包む。


ガレスは最後の力を振り絞ってコラソンを見る。


「……メイに……。」


「約束守れなくてすまない……と……。」


その言葉を最後に、魔石は砕け散り、ガレスの身体は灰となって風に消える。


静寂。


コラソンは拳を震わせる。


「人をなんだと思ってるんだ……。」


「役に立たなくなったら捨てる。」


「そんなことが……許されていいわけない。」


アルファは歯を食いしばる。


「これがヨルムンガンドの力なのか……。」


その光景を――


はるか上空から、一人の少女が見下ろしていた。


ヨルムンガンド幹部、アリス。


彼女は唇を強く噛み締めていた。


「またマルギスの仕業か…。」


握った拳から、一筋の血が流れる。


「私は……やはりこんなことを望んでいない。」


しかし、命令には逆らえない。


アリスは目を閉じる。


(今はまだ…)


そして静かに背を向け、闇の空へ消えていく。


コラソンたちは、その視線に気付くことはなかった。


メルは剣を握ったまま動けなかった。


目の前で流れる血。


飛び交う悲鳴。


ボルドで盗賊に攫われた事を思い出す。


手が震える。


(怖かった……。)


(体が動かなかった……。)


(私だけ……。)


コラソンは仲間を守りながら戦ってた。


エマも恐怖を乗り越えた。


それなのに、自分だけが何もできない。


メルは唇を噛み締めることしかできなかった――。


帰りの馬車の中でメルは落ち込みくらい顔をしている。


それを見ていたコラソン。


静かにそして優しく何も言わず手を握ってくれた。



翌朝

アルファが木漏れ日の宿を訪れる。


マリア

「アルファちゃんおはよう」


「どうしたんだい?いつもは非番でもそんな服着ないのに」


アルファ

「なな何を言っている…!い、い、いつもと一緒だ」

と照れ隠し。


騎士の格好ではなく女性らしく爽やかな普通の格好


騎士の時とは違う柔らかい曲線。


コラソンはやはりしばらく目を奪われる。


メルエマはヤキモチを焼く。


「ガレスの娘メイの所へ行こうと思ってな」


「ぼ、僕も行きたいです」


「そう言うと思ったからわざわざ来たんだよ」


「ガレスの娘の名はメイ、騎士の間で非番の日に世話をしていたんだ。」


「ちょうど私も今日が非番で私の番なんだ」


道中、静かに話し始める。


「ガレスは優しい父親だった。」


「娘の病を治す薬を探すため、首都アストリアへ向かった。」


「俺の娘を頼むと言って出て行ったガレスの姿を思い出す」


「あそこだ」


アルファはコラソンたちを森の奥へ案内する。


柔らかい日が差し込む小さな丘。


花々が風に揺れ、小鳥のさえずりが聞こえる。


その先には、一軒の小さな木造の家が建っていた。


コラソンは辺りを見渡す。


「綺麗な所ですね。」


「娘さんの病には、澄んだ空気と静かな環境がいいんじゃないかと医師に言われてね。」


「実は医師でも病名を見つける事が出来なかったんだ」


「ガレスは騎士として貯めたお金で、この家を建てた。」


「『娘が元気に走り回れる庭も作るんだ』って、嬉しそうに話してたよ。」


家の前には、小さな花壇。


手入れは途中で止まったまま。


庭には娘が遊べるようにと作られた木のブランコが、風に揺れている。


コラソンは何も言えない。


ここには、ガレスが娘と幸せに暮らそうとした夢が、そのまま残されていたから。


コンコン


しばらくして、中から年老いた女性の声が聞こえる。


「はーい。」


アルファは優しく声をかけた。


「アルファです。」


扉が開き、白髪のおばあさんが穏やかに微笑む。


「おや、アルファかい。」


「いつもありがとうねぇ。」


アルファは少し目を伏せた。


「ローズさん、メイちゃんお変わりありませんか?」


「昨日の夜はいつもよりなんだかすごく苦しそうでね。

今日はまだベッドにいるんだよ」


「まぁ立ち話もなんだし、さぁお連れの方も入っておくれ。」


家に入りメイの部屋へ向かう。


コラソンはメイの顔を見る。


青白い顔。


苦しそうな寝息。


アルファ


「メイ、体はどうだ?」


メイは辛そうで何も答えない。


コラソンは静かに言う。


「……少しだけ、やってみたい事があって…

試させてください。」


アルファもローズも頷く。


コラソンはメイの胸にそっと手を添える。


すると胸の奥から、黒い靄のような魔力が見える。


「……これは。」


黒い魔力はメイの心臓へ絡みつき、命を少しずつ削っていた。


コラソンは目を閉じる。


「大丈夫。」


優しい光が手から溢れる。


心の力が、黒い魔力を包み込む。


やがて黒い靄は苦しむように消え去った。


部屋の空気が一瞬だけ澄み渡る。


メイの呼吸が穏やかになる。


青白かった頬に、少しずつ血色が戻る。


ローズは震えながら口元を押さえる。


「そんな……。」


アルファも目を見開く。


「さっきの光はなんだったんだ?

もしかして治ったのか……?」


目を覚ましたメイ。


ゆっくり体を起こし、不思議そうに体を見つめる。


「……苦しくない。」


「おばあちゃん。苦しくないよ。」


ローズは涙を流しながら抱きしめる。


そして。


メイはアルファを見る。


「アルファさん……。」


「お父さんは?」


部屋に静寂が流れる。


アルファ


「………実は…」


メイはしばらく悲しみに暮れる。


そして口を開く…。


「昨日ね。」


「熱でうなされてた時、お父さんが夢に出てきたの。」


「『ごめんな。』って。」


「だから……もしかしたらって思ってた。」


「でもやっぱり辛いよ。お父さんに会いたいよぅ……」
















最後までお読みいただきありがとうございます。


皆様のおかげで私も前進出来ました。


人間が魔石によって操られていましたね。


しかも人間の心の弱さにつけ込むなんてひどいですね。


約束守りたかったでしょうに。


次の話しもお読み頂けると暴走するほど喜びますのでよろしくお願いします。

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