第6話 心なき者
翌朝。
窓から差し込む朝日に照らされ、コラソンは目を覚ました。
「よく寝たぁ!」
メルは大きく伸びをする。
「おはよう、コラソン」
「今日は冒険者らしい仕事だね!」
(どうゆう意味だ?冒険者になって何もしてないのに?どこら辺が冒険者らしかったんだろう?)
「う、うん。そうだね。」
二人は身支度を整えると、木漏れ日の宿を後にした。
「おはようございます。行ってきます」
「今日が初仕事だね。行ってらっしゃい。気をつけてね。」
イリスの街は朝から活気に満ちている。
パン屋から焼きたての香りが漂い、商人たちが露店の準備を始めていた。
「宿代も稼がないといけないしまずはギルドに行こう。」
メルは嬉しそうに
「行こっ」
冒険者ギルド
「おはようございます。」
「おはよう、コラソンくん。メルちゃん。」
セリナは笑顔で迎える。
「今日は初めての依頼ですね。」
(今日も綺麗だな。セレナさん)
「はい!」
メルがコラソンの視線を遮るように元気よく返事をする。
セリナは一枚の地図を机に広げた。
「依頼を受ける前に、イリスのダンジョンについて説明しておきます。」
地図には巨大な洞窟が描かれていた。
「冒険者が現状立ち入れるダンジョンは3階層あります。」
「上階層、中階層、下階層。そして未だ踏破されてない超級下層ここには未知の魔獣がいて未だに攻略されてないんですよー。」
「そしてお二人が入れるのは上階層だけです。」
「中階層への入口にはギルドが管理する結界があります。」
「この結界は、Cランク冒険者が三人以上所属するパーティのみ通過できます。」
メルが驚く。
「そんな仕組みなんですか?」
「ええ。」
「下界層にもさらに強力な結界があります。」
「許可なく入ることは禁止されています。」
「とゆうのも資格がない者は通ることさえできずには弾かれます」
コラソンはセリナの胸を見ながら真剣に聞いていた。
「なるほど………。」
「初心者は絶対に無理をしないこと。」
「これが一番大事です。」
セリナは依頼書を差し出す。
「今日はダンジョンに向かう途中の薬草採取、上階層での魔石回収のCセットがおすすめですよ。」
コラソンは頷く。
(AセットてBセットが気になるけど…。)
(ランチなの…?笑)
「じゃあCセットにします。」
(言うともう完全にランチ!!笑)
⸻
2人は地図通りに進み薬草を採取する。
「メル。それ薬草じゃないよ。」
メルは綺麗な花に夢中。笑
そしてダンジョンへ到着。
巨大な頭蓋骨が、大口を開けていた。
(そうか。そうゆうタイプの入口かー。)
まるで今にも獲物を飲み込もうとしている魔獣のようだ。
コラソンは思わず息を呑む。
(でかい……。)
ゴクリ、と唾を飲み込む。
「よし。」
覚悟を決め、頭蓋骨の口の中へ足を踏み入れた。
薄暗い骨の中を進む。
奥に光が見えた。
(出口……?)
そのまま歩き続けると──
ひょこっ。
頭蓋骨の後ろから出てきた。
「……あれ?」
振り返る。
そこには、ただの巨大な頭蓋骨。
「コラソン。」
メルが不思議そうに首をかしげる。
「何してるの?」
「え?」
メルが少し先を指差した。
「あれがダンジョンの入口だよ?」
視線の先には、岩肌にぽっかりと開いた巨大な洞窟。
どう見ても入口だった。
(……。)
(恥ずかしー!。)
(やばい、めちゃくちゃ恥ずかしい。)
(俺、あんな真剣な顔で骨の中歩いてたのか……。)
コラソンは何事もなかったかのように咳払いを一つ。
「……メル。」
「ん?」
「あれが入口だね。」
「うん。だね」
メルは無邪気に頷いた。
ゴブリン程度なら余裕で倒せる。
ただいきなり後ろから来られるとびっくりして叫んでしまう…。
メルはコラソンにゴブリンの位置を伝える。
「コラソンっあとはそこの岩陰に2体」
ともあれ依頼を順調にこなす二人。
「魔石三つ!」
「薬草も集まったね!」
メルは嬉しそうに笑う。
「初依頼成功だね!」
その時だった。
「おい!」
怒鳴り声が洞窟内に響く。
2人ともビクッとする。
(急にでかい声やめてくれないかな…。)
「さっさと歩け!」
コラソンたちは思わず足を止めた。
少し先。
一人の少女が数人の冒険者に囲まれていた。
「す、すみません……。」
少女は怯えながら頭を下げる。
「謝ってる暇があるなら魔法使え!」
男は少女を突き飛ばした。
メルが顔をしかめる。
「ひどい……。」
コラソンは先ほどと違い顔つきが変わる。
男は少女の髪を乱暴に掴む。
「お前は俺たちの道具だ。」
「Cランクだから連れてきてるだけだ。」
「使えなくなったら捨てる。」
少女は震えていた。
(なんだ……。)
(この人たち。)
(心が……ない。)
(人間じゃないみたいだ。)
(いや……。)
(何かに取り憑かれているのか……?)
男が拳を振り上げる。
その瞬間。
ガシッ。
コラソンが拳を掴んでいた。
男が睨む。
「なんだガキ。」
コラソンは静かに言う。
「その子を離せ。」
男たちは笑う。
「ガキが口出しするな。」
「死にたいか?」
コラソンの瞳だけが静かに怒っていた。
「仲間なら。」
「そんな扱いしない。」
⸻
戦闘
男が剣を振る。
しかし。
コラソンは一瞬で懐へ。
剣の腹で男を吹き飛ばす。
二人目。
三人目。
誰一人、まともに剣を当てられない。
「な……。」
「強すぎる……!」
男がエマの腕を乱暴に掴む。
「くそっ行くぞ。」
「嫌……です。」
「はぁ?」
男はエマを突き飛ばす。
岩肌に体をぶつけ、エマが苦しそうにうずくまる。
その瞬間。
コラソンが男の前に立つ。
「なんだ、お前。」
「見ねえ顔だが新人だな?」
仲間の一人が笑う。
「新人がしゃしゃり出てくんな。」
コラソンはエマを見ながら言う。
「その人は仲間なんでしょ?」
「どうしてそんなことができるんですか。」
男は鼻で笑う。
「仲間?」
「違うな。」
エマの髪を掴み、無理やり立たせる。
「こいつは道具だ。」
「Cランクだから結界を通れる。」
「それ以外に価値なんてねぇ。」
「文句も言わねぇ」
その言葉でコラソンの表情が変わる。
静かだった瞳に怒りが宿る。
「……離せよ。全員が自分の気持ちを言葉に出来るなんて思うな。」
「思ってても口に出せない人もいる。なんでそれが分からない?」
メルの目には涙が滲む。
「訳分からねえクソガキが。」
コラソンのただならぬ威圧を感じた男。
男はエマを掴み、中階層の結界へ走る。
「こっちへ来い!」
エマは必死にもがく。
「嫌だっ!」
男たちは結界を通過する。
コラソンは迷わず追う。
「くそ。やられた。」
「コラソン、そこは結界が!」
メルの声も届かない。
目の前には結界。
(助けたい。)
(絶対に。)
胸の奥が熱くなる。
その瞬間。
バキィィィィン!!
音を立てて、なんか割れた。
そう結界が割れた。
メルは息を呑む。
「えっ……。」
コラソン自身も驚くが追いかけるのに夢中で
考えない。
⸻
中階層
逃げ場を失った男たち。
「てめえなんで降りてこれる?」
「ここはCランクじゃないと降りてこれねえはず、、、新人のこいつがなぜ?!」
⸻
戦闘
男が斬りかかる。
コラソンは最小限の動きでかわす。
アマブレとの修行で培った剣術。
一閃。
男の剣だけが真っ二つになる。
コラソンはエマへ向かう。
男が魔法を放つ。
「邪魔すんな!」
コラソンは抜刀。
魔法ごと斬り裂く。
男たちは動揺する。
「こいつ一体なんなんだ……。」
「なんて目を、しやがる…。」
男は懐から黒い結晶を取り出す。
「チッ……。」
「しくじった。」
男の身体から黒い魔力が漏れ出す。
その異様な気配にメルが息をのむ。
「なに……これ。」
男は不気味に笑った。
「俺たちは……。」
「ヨルムンガンドのために動いてる。」
「お前らみたいなガキには理解できねぇ世界だ。」
コラソンは静かに剣を構える。
「……。」
「やっぱり。」
「あなたたちは、心を失ってる。」
男は怒鳴る。
「黙れぇぇぇ!!」
黒い魔力をまとい襲いかかる。
しかし。
コラソンは一歩も引かない。
守りたいという想い。
そのすべてを乗せた一太刀。
ものすごい力の閃光が走る。
──ズバァッ!!
続く二人も一瞬で地面へ倒れ込んだ。
誰一人、コラソンには届かなかった。
少し離れた場所で、その光景を見つめる少女。
エマだった。
震える身体。
止まらない涙。
(また……。)
(また、この人が……。)
(私を助けてくれた。)
五年前。
奴隷として生きるしかなかった自分。
生きる希望すらなかった。
今日。
道具として使い捨てられようとしていた自分。
そのどちらも。
目の前の少年が救ってくれた。
涙が次から次へと溢れて止まらない。
「どうして……。」
「どうして、こんなに優しいんですか……。」
戦いを終えたコラソンはゆっくり剣を納める。
そしてエマの前まで歩いてくる。
怖がらせないように。
安心させるように。
優しく微笑んだ。
「もう大丈夫だから。」
その一言だけで。
エマの張りつめていた心が、ぷつりと切れた。
「コラソン様……。」
その場にしゃがみ込み、声を上げて泣き始める。
「あなたは……。」
「二度も……。」
「二度も、私を救ってくれました……。」
コラソンはしゃがみ、エマと目線を合わせる。
「……え?」
涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、エマは笑う。
「あの日……。」
「あの日、奴隷だった私を助けてくれた男の子……。」
その言葉でコラソンの記憶がよみがえる。
檻の中で泣いていた、小さな女の子。
「……あっ!」
「君は、あの時の……!」
エマは何度も頷いた。
「はい……。」
「ずっと……。」
「ずっと、お会いしたかったんです。」
ギルドへ帰還
事情を聞いたセリナは頭を抱えた。
「コラソン!」
(くんは?……)
「あなた……。」
「ギルドの結界を壊したんですか!?」
コラソンはしょんぼりする。
(怖いっ…。)
「ご、ごめんなさい……。」
セリナは深いため息をつく。
「エマを助けてくれたことは、本当にありがとうございます。」
「でも。」
「結界は冒険者と街を守るためにあるのです。」
「張り直すのがどれだけ大変か分かりますか?」
コラソンは申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません……。」
セリナは怒っている。
……でも、その表情はどこか安心していた。
エマは無事だった。
それだけは、本当に良かったと思えたからだ。
「まったく……。」
「それから結界を張り直さなくちゃ……。」
そう呟くセリナの顔には、呆れたような笑みも少しだけ浮かんでいた。
セリナ(この子結界破壊も前代未聞だけど、冒険者登録した次の日にCランクパーティを相手にして無傷で帰ってくるなんて。)
「ギルド長ゼノスに報告に行きます」
セリナに連れられギルド長ゼノスの部屋へ。
ギルド長は最初は怒る。
「結界を壊したのはお前か。」
「一体何をしたら結界が壊れるんだ?」
セリナも横で頭を下げる。
しかし事情を聞く。
エマも勇気を出して証言。
ヨルムンガンドの名前もここで初めてギルドへ報告される。
ギルド長の表情が変わる。
「……ヨルムンガンドだと?」
「やはり、またその名前か……。」
結界破壊は問題だが、
ヨルムンガンドの情報を持ち帰った功績で厳重注意だけで済む。
「後エマのパーティは解散だな。気づいてやれなくてすまなかった」
夕暮れ。
コラソンとメルとエマも一緒に歩いている。
後ろから。
「コラソン様!」
振り返る。
エマが立っている。
エマが深く頭を下げる。
「私、エマと申します。」
「5年前……助けていただいた者です。」
コラソンも笑う。
「あの時の子だったんだね。」
「あの日から。」
「何もなかった世界がほんの少し明るくなった気がして。」
「もう一度会いたくて」
「必死に魔法を勉強しました。」
「いつか恩返しがしたくて……。」
コラソン。
「恩返しなんて考えなくていいよ。」
「誰かのあんな目見たくなかったから」
ここでまたエマ泣く
エマ
「私を仲間にしてください。」
「私も誰かを守れる魔法使いになりたいんです。」
コラソンは少し笑って。
「こちらこそ。あと様は辞めようか……。」
「あっ分かりました。コラソン様っ」
「分かってない」笑
握手。
笑顔で。
「私はメル!」
「コラソンの幼なじみ!」
「よろしくね!」
エマも笑う。
「よろしくお願いします。」
エマは少し後ろを歩き、どこか遠慮している。
モジモジ。
「……。」
木漏れ日の宿へ着くと、扉を開ける。
カラン、と鈴の音が鳴った。
「ただいま戻りました。」
奥からマリアが顔を出す。
「あら、おかえり!」
そしてコラソンとメルの後ろにいる少女を見ると、にっこり笑った。
「あれ?」
「一人増えたのかい?」
あまりにも自然な一言に、三人は思わず顔を見合わせる。
「え、えっと……。」
コラソンが事情を説明しようとすると、マリアは手をひらひら振った。
「事情はご飯食べながら聞くよ。」
「それより、お腹空いてるだろ?」
「はい……。」
エマがおずおずと返事をする。
「よし!」
「今日から賑やかになるねぇ。」
そしてマリアはニヤッと笑った。
「その代わり――」
「料金は一人分追加ね!部屋は増やさないけど。」
一瞬の沈黙。
「えぇっ!?」
コラソンとメルの声が揃う。
マリアは豪快に笑う。
「あははは!」
「宿屋も商売だからね!」
「タダじゃ食べさせられないよ!」
コラソンは頭をかきながら苦笑いする。
「ですよね……。」
「その代わり、美味しいご飯は保証するよ。」
「さぁ、中へ入りな!」
エマはそのやり取りを見つめていた。
こんな温かい会話。
こんな笑い声。
自分には縁のないものだと思っていた。
気づけば、自然と笑みがこぼれていた。
その笑顔を見たメルが嬉しそうに言う。
「エマ、笑った!」
エマは照れくさそうに頬を赤くする。
「……」
「なんだか、とても温かいです。」
マリアは優しく微笑み、エマの頭をぽんと撫でた。
「子供は笑ってりゃいいんだよ」
「遠慮なんかしなくていい。」
「お腹いっぱい食べて、ゆっくり休みな。」
「今日くらいは、何も考えなくていいから。」
その一言に、エマは小さく頷く。
「……はい。」
その返事は、今までで一番安心した声だった。
最後までお読みいただき誠に誠にありがとうございます。
ジタバタした甲斐がありました。
異世界アニメとかでダンジョンの説明する場面私好きなんです。
ワクワクするし。
でもあんな酷い奴らがいるなんてなんて世界なんでしょうか?
5年前奴隷だった少女とまた出会いまた助けるなんて、もう仲間になるしかないですね笑
次の話しもお読み頂けますと次の話がわかります。
当たり前の事を言ってしまいました。
よろしくお願いします。




