第4話旅立ち
アマブレの強さ、エレナの優しさ、メルの純粋さ。
村の人達の暖かさに包まれながら…
5年の月日が流れ
多分15歳ぐらいになったコラソン。
少年だった体は大きく成長し、剣筋には迷いがなくなっていた。
ある日。
修行を終えたコラソンにアマブレが静かに口を開く。
「もう、お前に隠す必要もないだろう。」
「俺は昔、この村を出て騎士だった。」
コラソンは驚く。
「騎士……?」
「ああ。」
「イリスという街で騎士団長を務めていた。」
「騎士団長!?」
「今は引退して、ここで村を守っている。」
アマブレは遠くを見つめながら続けた。
「イリスには、この村では学べないものがある。」
「優秀な冒険者。」
「強い騎士。」
「そして――冒険者ギルド。」
「冒険者ギルド……。」
「世界中から腕自慢が集まる場所だ。」
「強くなりたいなら、一度は行くべきだ。」
コラソンの胸が高鳴る。
この村だけでは届かない景色。
もっと広い世界。
もっと強い相手。
もっと多くの人々。
そのすべてが、自分を待っている気がした。
コラソンは静かに拳を握る。
「俺……行きます。」
「イリスへ。」
「もっと強くなって、誰かを守れる剣士になるために。」
アマブレは満足そうに笑った。
「その言葉を聞けて安心した。」
「だが忘れるな。」
「剣は人を傷つけるためではない。」
「守るために振るうものだ。」
コラソンは力強く頷く。
「はい。」
その返事を聞いたアマブレは、どこか誇らしげな表情を浮かべた。
こうしてコラソンは、生まれ育った村を離れ、冒険者の街・イリスへ向かう決意を固める。
それから数日
コラソンは冒険者になるため、ボルド村を旅立つ。
荷物は少ない。
でも、胸には家族との思い出が詰まっている。
村人たちが見送りに集まる。
メルは笑顔で送り出そうとするけれど、どこか寂しそう。
そして、最後にアマブレの家で家族だけの時間が流れる。
⸻
エレナが静かに話し始める。
「……ずっと言えなかったことがあるの。」
棚から、一枚の古い写真を取り出す。
そこには幼いクルが笑っていた。
コラソンによく似ていた。
「この子が、私たちの息子……クル。」
コラソンは黙って写真を見つめる。
アマブレが続ける。
「お前がこの村へ来た日。」
「正直に言えば……クルを思い出した。」
「だから最初は、お前を見て面食らったよ。」
少しの沈黙。
エレナは涙を浮かべながら笑う。
「でもね……。」
「いつからか違ったの。」
「クルの代わりじゃなく。」
「コラソンだから、大好きになった。」
アマブレも静かに頷く。
「お前は、お前だ。」
「私たちの自慢の息子だ。」
⸻
コラソンはうつむく。
肩が震えている。
そして、小さく笑う。
「僕も……言わなきゃ。」
「初めてエレナさんに頭を撫でてもらった時。」
「母さんを思い出しました。」
エレナの目から涙がこぼれる。
「アマブレさんに剣を教えてもらった時。」
「父さんを思い出しました。」
「だから……。」
「最初は、お二人を前の父さんと母さんに重ねていました。」
アマブレは黙って聞いている。
「でも、違いました。」
コラソンは二人を真っ直ぐ見つめる。
「今は違います。」
「お二人は。」
「僕の、お父さんとお母さんです。」
⸻
エレナは泣きながらコラソンを抱きしめる。
アマブレは涙をこらえながら笑う。
「……行ってこい。」
「誰かを守れる男になれ。」
「はい。」
「二人が育ててくれたから俺は今日まで生きてこれました。
本当にありがとうございました。」
アマブレは照れくさそうに笑いながら、コラソンの頭を優しく撫でる。
旅立ちの日。
メルは笑顔で手を振る。
「行ってらっしゃい!」
「絶対に立派な冒険者になってね!」
コラソンも笑って答える。
「うん!」
「すぐ帰ってくるよ!」
村のみんなも笑顔で見送る。
コラソンの姿が見えなくなるまで。
⸻
その瞬間。
メルの笑顔が崩れる。
涙が止まらない。
「……やだ。」
「やっぱりやだ。」
家へ帰ろうとしても足が動かない。
⸻
その夜。
メルは一人で荷物をまとめる。
家族の写真。
水筒。
少しのお金。
そして、コラソンにもらった髪飾り。
旅に出るには到底足りないであろう荷物…。
眠っているアマブレとエレナを見つめ、小さく頭を下げる。
「ごめんなさい。」
「でも……」
「私、コラソンの隣にいたい。」
そして夜明け前誰もいないコラソンの部屋を見て決意を固める。
「えっ?」
ベッドに脇に光何かを見つける。
「コラソン…………。刀忘れてる……」
(まじか)
その刀を手に取り
メルは誰にも気づかれないように家を出る。
(ごめんなさい、お父さん、お母さん……。)
振り返らず、村を後にする。
しばらく歩いた森の中。
休憩しようと荷物を開ける。
「……あれ?」
自分で入れた覚えのない包みがある。
開くと、中にはまだ温もりが残るような布に包まれたパンと、小さな瓶に入った手作りのジャム。
村では希少なポーション。
エレナの字で書かれた手紙が添えられている。
「お腹が空いたら食べてね。」
「無理だけはしちゃ駄目よ。」
「あなたは私たちの大切な娘だから。」
「いつでも帰っておいで。」
――ママより
メルの手が震える。
「……ママ。」
さらに荷物の底にはもう一つの包み、一振りの短剣。
柄には見慣れた紋章が刻まれている。
アマブレが若い頃に使っていた短剣だった。
革の鞘には、小さな紙が挟まっている。
「旅は甘くない。」
「自分を守れ。」
「そして、コラソンを頼む。」
「お前ならできる。」
「お前は誰よりも大切な娘だよ」
――パパより
メルはその場にしゃがみ込み、短剣を胸に抱きしめる。
「……知ってたんだ。」
「全部……知ってたんだ。」
堪えていた涙があふれ、頬を伝う。
「ありがとう……。」
「パパ……。」
「ママ……。」
(パパ、村では中々手に入らないポーション、ママと被ってるよ)
両親の、優しさに温かい気持ちになる。
遠く離れたボルド村では、家の前に立つアマブレとエレナが、朝日に染まる街道を静かに見つめていた。
エレナが小さくつぶやく。
「泣いてる頃かしら。」
アマブレは優しく笑う。
「ああ。」
「でも、あの子は前を向いて歩ける。」
二人は並んで空を見上げる。
「行ってこい、メル。」
「コラソンと一緒に。」
⸻
街道を歩いてたはずのコラソン。
コラソンは刀を、無くしたと思い道をキョロキョロしながら引き返していた。
(おかしいなー?刀落としたちゃったのかなー?いや、そもそも持ってきたのかも覚えてないなー?どうしよう。)
コラソンはよく忘れ物をする。
村の向かうコラソン後ろから聞き覚えのある声がする。
「こーらーそーん!!」
振り返る。
全力で走ってくるメル。
息を切らしながら怒鳴る。
「もう!!」
「なんでまだこんなとこにいるの?!」
コラソンは目を丸くする。
「えっ!?メル!?」
「なんでこんな所に?」
メル
「そんなことよりもこれっ!!」
「部屋に忘れてたわよ。」
「普通忘れないでしょう?全く」
コラソン
「わざわざ持ってきてくれたんだ。ありがとう」
「村まで送るよ、メル…。」
メルは小声で
「…たしも行く…。」
「えっ?」
私もコラソンと行くっっ!!」
「ダメだよ、メル。メルがいなくなったらお、お父さん達心配するよ…。」
「嫌っっ行くの!!!」
メルは泣だぐみながら言う。
「一人で待つ方が、もっと怖い!」
「私……」
「コラソンが帰ってこなかったら、生きていけないもん……。」
「、、、刀だって忘れるし。」
コラソン何も言えない。
「メル、行こう。」
コラソンは手を差し出す。
朝日がボルド村を優しく照らしていた。
街道の先には、もう誰の姿も見えない。
アマブレとエレナは、しばらく黙ってその景色を見つめていた。
エレナが小さく微笑む。
「今頃、手紙を読んでる頃かしら。」
「ああ。」
アマブレも静かに頷いた。
「きっと泣いてる。」
「メルは涙もろいからな。」
二人は思わず笑う。
その笑顔も、少しずつ静かに消えていく。
長い沈黙。
アマブレは空を見上げた。
「……ちゃんと送り出せたな。」
「騎士としても。」
「父親としても。」
そう言って笑おうとした。
けれど、その笑顔はどこかぎこちなかった。
エレナは何も言わず、その横顔を見つめる。
アマブレはぽつりと呟いた。
「……でも。」
「やっぱり寂しいな。」
「クルを見送ることもできなかった。」
「だから今度こそ、笑って送り出そうと思ったんだ。」
「なのに……。」
「やっぱり寂しい。」
その声は震えていた。
エレナはそっとアマブレの手を握る。
そして優しく肩に寄り添った。
「あなた。」
「二人とも、大丈夫。」
「あなたが育てた子だもの。」
アマブレは目を閉じる。
堪えていた涙が、一筋だけ頬を伝った。
エレナは何も言わず、その涙を受け止める。
夫婦は寄り添ったまま、朝日に伸びる一本道を見つめ続けた。
その道の先には、二人が心から愛した子どもたちの未来が続いていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今喜びすぎて無の状態です。
本当にありがとうございます。
テンプレの流れ感が出てきましたね。
両親を失ったコラソン、
息子クルを失ったたアマブレ、エレナ
お互いに影を重ねてたんですね…。泣
あと刀は絶対忘れたらあかんですよね…笑
あっとゆうまに5年…。
小説だと1行で何年も遡ったり未来へ飛んだり。
便利なものですね笑
この先も読んで頂けると嬉しくて泣くと思います。
よろしくお願いします。




