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この世界の理不尽に耐えられず、心から願ったら異世界の空に放り出されたのだが???  作者: はるのひ


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第23話 畳み掛ける

コラソンは、アリスの前にに立っていた。


 アルマを握る手に、力が入る。


「この子には……手を出させない」


 マルギスはコラソンを睨みつけた。


「小僧……」


 その顔には、先ほどまでの余裕がなかった。


 目の前にいる少年。


 その瞳に宿る光。


 そして、仲間たちの連携。


 どれも、マルギスの予想を遥かに超えていた。


「なぜだ……」


 マルギスが呟く。


「なぜ、ただの人間が……これほどの力を……」


 コラソンは答えない。


 ただ、アルマを構える。


 次の瞬間――


 地面が弾けた。


 コラソンが一気に距離を詰める。


「速い!」


 マルギスが剣を振る。


 ガキィン!


 アルマと刃がぶつかる。


 火花が散った。


 だが――


「ぐっ……!」


 マルギスの身体が押し込まれる。


 コラソンは一歩も引かない。


「これで……!」


 横薙ぎ。


 マルギスは身を捻ってかわす。


 そこへ――


「逃がさない!」


 メルが手を伸ばす。


「リパルション・バースト!」


 凄まじい反発力がマルギスを弾き飛ばす。


「ぐあっ!」


 宙へ浮いたマルギス。


 その先には、フローレがいた。


「氷よ――」


 足元から氷が伸びる。


「捕らえて!」


 マルギスの動きが止まった。


「今だ!」


 アルファが叫ぶ。


 ハウンドが地面を蹴る。


「おおおおおっ!」


 拳がマルギスの腹部へ叩き込まれる。


「ぐっ……!」


 さらにセリナが踏み込む。


「これで終わりです!」


 マルギスは腕で受け止めた。


 だが、その腕から血が流れた。


「……馬鹿な」


 マルギスは後退する。


 息が乱れている。


 これほど追い詰められたのは、いつ以来なのか。


「この……私が……」


 その時。


「サラ!」


 エマの声が響く。


 サラが炎を纏う。


「ヘヴィフレイム!」


 轟音。


 巨大な炎がマルギスを包み込んだ。


「ぐあああああっ!」


 マルギスが地面を転がる。


 身体から煙が上がる。


「なぜだ……!」


 マルギスは震える手で自分の身体を見る。


「なぜ……人間の炎ごときが……私に……!」


 その疑問に答える者はいない。


 コラソンは、静かに歩いていく。


 その視線はマルギスではなく――


 倒れているアリスへ向いていた。


「アリス……」


 微かに身体が動いた。


 だが、まだ意識は戻っていない。


 その横では、フリルが必死にアリスの手を握っている。


「お願い……死なないで……」


 小さな声。


 コラソンは拳を握った。


「……大丈夫」


 そしてマルギスへ向き直る。


 アルマを構える。


 マルギスの顔から血の気が引いた。


「……ふざけるな」


 立ち上がろうとする。


 だが、足に力が入らない。


「私は……七魔皇の一人だぞ……!」


「貴様らごときに……!」


 マルギスの身体から、黒い魔力が噴き出す。


 空気が震えた。


 地面に黒い亀裂が走る。


「まだ……終わってはいない!」


 マルギスが手を掲げる。


 黒い魔法陣が現れる。


 だが――


「ケノス」


 コラソンが呟いた。


 光が走る。


 魔法陣が消える。


「な……」


 マルギスの目が見開かれる。


「また……」


 コラソンは一歩、前へ出た。


 その瞳に、今まで見せたことのない静かな怒りが宿っていた。


「お前は、この子を殺そうとした」


「……」


「妹を人質に、彼女の心まで縛って……それでも、足りないのか」


 声は静かだった。だからこそ、その奥にある怒りの深さが伝わってくる。


「それだけは、絶対に許さない」


 アルマが淡く光を纏う。


 その光は、怒りと共に膨れ上がっていく。


 マルギスは、その光を見つめた。


「……その力その眼。」


 呟いた声が、僅かに揺れる。


「やはり……」


「何?」


 コラソンが問う。


 マルギスは答えなかった。


 答える余裕が、既になかった。


 光が弾けた。


「ぐ……あああああッ!!」


 マルギスの身体が、光に飲まれていく。


「馬鹿な……この俺が……」


「お前がどれだけの人を傷つけてきたのか」


 コラソンの声に、初めて感情が滲む。


「その全部を、俺は許さない」


「く……このまま終わって……たまるか……」


 黒い霧が最後の抵抗のように渦を巻く。


 だが、光はそれを容赦なく飲み込んでいく。


「……覚えて……おけ……」


 消えゆく寸前、マルギスの唇が動いた。


「お前は……自分が何者か……知らな……」


 声は、最後まで紡がれることなく消えた。


 黒い霧が、跡形もなく晴れていく。


 静寂が村を包んだ。


「……終わった……のか」


 セリナが拳を下ろす。


 ハウンドが息を吐く。


「ああ」


 アルファが静かに言った。


「強敵すぎたな。だが今は、それよりも……」


 全員の視線が、一人の少女へ向く。


 倒れているアリス。


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