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この世界の理不尽に耐えられず、心から願ったら異世界の空に放り出されたのだが???  作者: はるのひ


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19/24

第19話 村長ソンチョの想い。



そして、もう一度だけ眠るように横たわる村人を見る。


「……ごめんなさい」


静かに立ち上がり、背を向けた。


その瞬間――


――ふわっ。


何かを感じた。


「……?」


コラソンが振り返る。


そこには誰もいない。


けれど、一瞬だけ――


先ほどの村人が、穏やかな笑顔を浮かべているように見えた。


身体は淡い光に包まれ、まるで何の未練もないかのように、ゆっくりと空へ昇っていく。


「…………」


コラソンは目を見開く。


そして――


「……ありがとう」


そう聞こえた気がした。


瞬きをすると、その姿はもうなかった。


ただ、夜空だけが静かに広がっていた。


コラソンはしばらく空を見上げる。


そして、小さく笑った。


「……うん」


ソンチョはコラソンに駆け寄り


「ありがとうございます…。」


「その子は村を守ろうとし番に飛び出して行った私の息子だったんです。」


「きっと喜んでると思います…。」


村人たちもソンチョに寄り添う。


静かな風が、コラソンの頬を優しく撫でていった。


しばらくして


「なんとお礼を申し上げればよいのか……」


そして顔を上げる。


「皆さんへの感謝でいっぱいです」


「いえ、そんな……」


「いえいえ!」


村長が手を振る。


「もうすぐ夜になります」


辺りを見ると、空はすでに夕暮れへと変わり始めていた。


「異変のこともお話ししたいのですが……その前に」


村長が笑顔を見せる。


「せめて今夜は、皆さんにグラトンウルフの料理をご馳走させてください」


「グラトンウルフの肉料理?」


メルが肉に反応する。


「はい!」


「滅多にお目にかかれない希少肉ですよ〜!」


村人たちが嬉しそうに準備を始めた。


やがて、エマが小さな炎を手のひらに灯す。


「ここでいい?」


「ありがとう、エマちゃん!」


村の広場に焚き火が灯る。


その周りを、コラソンたちと村人たちが囲んだ。


炎がゆらゆらと揺れる。


「私はここ座るー。」

とエマはコラソンの隣りに


「―――。」


エマもコラソンの隣に座りたいがモジモジして切り出せない


コラソン


「エマどうしたの?おしっこでもしたいの??」


「カーーー!!」


エマは顔を真っ赤にしながら


「ちち、ち、ちがうもん!」


「わた、わた、わたし」


コラソンはエマと反対側の席をポンっと


「ここ早く座らないともう料理来るよ?」と


ズキュン!


エマは食らった!


コラソンのさりげない?優しさに…笑


「お待たせしました!」


次々と料理が運ばれてくる。


グラトンウルフの香草焼き。


肉汁たっぷりの串焼き。


野菜と一緒に煮込んだスープ。


こんがり焼かれた肉に、村特製のソースをかけたステーキまで。


「うわぁ……!」


エマの目が輝く。


「こんなに……?」


ソンチョが笑う。


「今日は皆さんのお礼ですから!」


「いただきます!」


コラソンたちは料理を手に取る。


香ばしい匂いが広場いっぱいに広がった。


エマの炎を囲みながら、村人たちの笑い声が響く。


グラトンウルフの肉を焼いた香ばしい匂いが、村の広場に広がっていた。


村人たちは久しぶりのご馳走に舌鼓を打ち、子供たちの間からは笑い声も聞こえている。


「これ、めちゃくちゃ美味しい!」


メルが嬉しそうに肉を頬張る。


「ほんとだ……!」


エマも目を輝かせている。


少し離れたところでは、アルファ、フローレ、セリナも村人たちと食事を楽しんでいた。


コラソンはメルエマに挟まれ緊張であまり食べれない笑


(2人とも近すぎて正常じゃいられない…胸が当たってるー照)


そんな賑やかな輪の中――。


ソンチョだけは、どこか寂しそうに笑っていた。


村人に話しかけられれば笑う。


子供たちが肉を持ってくれば「たくさん食べろ」と声をかける。


まるで何事もなかったかのように。


けれど、その笑顔がどこか無理をしていることに、コラソンは気づいていた。


コラソンは箸を置き、口の周りにソースをつけたまま


真剣な顔で


「……ソンチョさん」


口の周りにソースがついてる。


何も言わずメルとエマがソースを拭き取ってくれた。


「もうっ話す前に拭きなさい!」


「はい?」


ソンチョが振り向く。


「……美味しいですね」


「……ああ。こんなに肉を食べられるなんて、久しぶりだ」


そう言って笑う。


けれど――その笑顔の奥にある悲しみを、コラソンは見逃さなかった。


「……無理してませんか?」


ソンチョの表情が止まる。


「…………」


「すみません。余計なことかもしれないですけど……」


コラソンは少し迷いながら続ける。


「ソンチョさん、ずっと村のみんなのために笑ってますよね」


ソンチョは答えない。


「村長だから……みんなを安心させなきゃって思ってるのかもしれない」


コラソンは自分の手を見つめる。


「でも……無理に平気なふりをしなくてもいいと思います」


ソンチョが顔を上げる。


コラソンは静かに言葉を続けた。


「俺も……昔、辛かった事がありました。」


「どれだけ頑張っても、どうにもならないことってあるんですよね」


「大切なものを失っても……『仕方ない』なんて簡単には思えない」


ソンチョの目が揺れる。


「だから……息子さんのことを、無理に忘れなくていいと思います」


「…………」


「悲しかったら悲しいって言っていいし、悔しかったら悔しいって言っていい」


コラソンはソンチョを真っ直ぐ見る。


「泣いたっていいんです」


少しだけ間を置いて。


「だって……大切な人を失って、平気でいられるほうがおかしいじゃないですか」


ソンチョの唇が震える。


「……そう、だな」


「俺……上手く言えないですけど」


コラソンは苦笑する。


「いつかまた笑えるようになったら、その時は息子さんの話をみんなにしてあげてください」


「どんな子だったのか」


「何が好きだったのか」


「どんなことで笑っていたのか」


「……忘れないために」


ソンチョは俯く。


ソンチョは何も答えなかった。


ただ、俯いたまま肩を震わせている。


「ソンチョさん……?」


「……すまない」


小さな声だった。


「……すまない、コラソン君」


ソンチョは両手で顔を覆った。


「私は……村長だがらっ…!!」


一気に泣き声に変わる。


「みんなの前で……泣ぐわけには……いがいがなかった……」


一度、言葉が途切れる。


そして――。


「でも……私だって……!」


押し殺していた声が、広場に響いた。


「俺だって……あの子の父親なんだ……!」


涙が、次々と頬を伝う。


「受け入れたくなかった……!」


「もう帰ってこないって分かってるのに……!」


「どうして……どうしてあの子なんだ……!」


ソンチョはその場に膝をついた。


「まだ……何もしてやれてないのに……!」


声にならない嗚咽が漏れる。


「もっと……一緒に飯を食いたかった……」


「もっと……話をしたかった……」


「まだ……まだ……あいつと……」


それ以上は言葉にならなかった。


ソンチョは子供のように泣き崩れた。


周囲の村人たちも、何も言えない。


ただ、静かにソンチョを見つめている。


やがて一人の村人が、そっとソンチョの肩に手を置いた。


「……ソンチョ」


それをきっかけに、別の村人も隣へ座る。


誰も励ます言葉を口にしなかった。


ただ、そばにいる。


それだけだった。


「みんな……ありがとう……」


その声は、もう村長の声ではなかった。


息子を失った、一人の父親の声だった。


ソンチョはコラソンに向かって、ゆっくり頭を下げる。


「ありがとう……」


それは敬語でも丁寧な言葉でもなかった。


けれど――心からの「ありがとう」だと分かった。


コラソンの隣でその様子を見ていたメルが小さく呟く。


「……やっぱり、コラソンのこういうところ……(好きだな)」


「うん」


エマも優しく微笑む。


「コラソンは……とびっきり優しいから」


と抱きつく2人。


アルファ、フローレ、セリナも何も言わず、その光景を静かに見守っていた。


アルファは微笑みながら呟く。


「……自分も痛みを知っているからこそ、寄り添えるのだろうな」


フローレも頷く。


「ええ。心の痛みを知っているからこそ……人の心に触れられるのね」


セリナは優しく目を細める。


「……コラソンらしいですね。」


コラソンは、少しの間立ち尽くしていた。


「…………」


不思議だった。


さっき自分がソンチョにかけた言葉が、胸の奥に残っている。


――泣いていい。


――悔しかったら、悔しいって言っていい。


――無理に平気なふりをしなくていい。


それはまるで――。


「……前世の俺に言ってるみたいだ」


コラソンは、誰にも聞こえないほど小さく呟いた。


前世の自分は、涙を流したことがなかった。


悲しくても。


悔しくても。


どれだけ理不尽なことがあっても。


ただ、耐えていた。


自分に優しくしてくれたのは、両親だけだった。


どんな時も味方でいてくれた。


何も言わずに受け入れてくれた。


そんな両親がいるから、まだ耐えられた。


――なのに。


その優しささえも、理不尽に奪われた。


大切な人を奪われても、泣くことすらできなかった。


泣いたところで、何も変わらない。


そう思っていた。


だから――涙を流すことを、いつの間にか忘れていた。


もう誰にも悲しい思いをしてほしくない。

と奥歯を噛んだ。


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