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この世界の理不尽に耐えられず、心から願ったら異世界の空に放り出されたのだが???  作者: はるのひ


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第16話 パーティ結成

謁見の間でアルベルトは机に向かい、一枚の古びた地図を広げた。


「これは……この世界ってこんなに広いんだ…。」


 コラソンが身を乗り出す。


 そこには、

広大な世界が描かれていた。


 大陸。


 海。


 山脈。


 そして、7つの王国。


 「そしてみて欲しいのが…。」


 アルベルトが言った。


 アルベルトは七つの印を順番に指差した。


 


「7つのダンジョンを対角線で結ぶとそこには。」


 アルベルトの指が、地図の中心へと移動する。


 そこには一本の大樹を描いた紋章があった。


「……世界樹」


 アルファが小さく呟いた。


 その声には、緊張が混ざっていた。


 アルベルトは頷く。


「そうだ」


 アルファは世界樹の紋章を見つめた。


「私は……代々受け継がれている使命しか分かりません。」


 コラソンがアルファを見る。


「エルフの一族には、代々受け継がれてきた使命があります」


 アルファは静かに語った。


「――世界樹を守り世界の恵みを守る。」


「それだけです」


 アルファは少しだけ目を伏せた。


 するとアルベルトが口を開いた。


「ならば、それは私から説明しよう」


 全員の視線がアルベルトへ向く。


「王家には、代々受け継がれてきた記録がある」


「その中に、世界樹について書かれた記述が残されている」


 アルベルトは世界樹の紋章へ指を置いた。


「世界樹は、ただ巨大な木というわけではない」


「世界そのものに流れる力を循環させる存在だ」


「力……?」


 メルが首を傾げる。


「魔力だけではない」


 アルベルトは地図の大地を指差した。


「大地の生命力」


 次に森を指す。


「森や植物が持つ生命の力」


 そして山や海へと指を動かす。


「水、風、火、そして魔力」


「この世界に存在する様々な力が、互いに偏らないよう均衡を保っている」


 コラソンは黙って聞いていた。


 世界樹。


 それは、世界の中心で全てを支える巨大な生命だった。


「もし、その均衡が崩れればどうなるんですか?」


 コラソンが尋ねた。


 アルベルトの表情がわずかに曇る。


「大地が枯れる」


「森が死ぬ」


「魔力が暴走する」


「そして、本来なら自然へ還るはずの力が、世界のどこかへ溜まり始める」


 コラソンは息を呑んだ。


 それは、最近起きていた異変と似ていた。


 魔物の異常発生。


 ダンジョンの異変。


 下層にいるはずの魔物が上層へ現れたこと。


「なぜダンジョンの中心点に世界樹があるのか」


「その理由までは、王家の記録にも残されていない」


 アルベルトは少し間を置く。


「だが、偶然だとは思えない」


「魔力が関係していることだけは確かだ」


 謁見の間に再び沈黙が落ちた。


 世界樹と七つのダンジョン。


 それはまるで、巨大な仕組みの一部のようだった。


 しかし――。


「一つだけ、確かなことがある」


 アルベルトの声が低くなる。


「先ほどの禁忌には300年前も悪魔は世界樹を狙ったと書いてあった…。」


「この世界は一度、同じ危機に直面したと思われる。」


 コラソンの表情が変わった。


 それは、5年前に起きたことと同じだった。


「今回の襲撃には魔王はいなかった…。」


「だから世界樹は枯れなかったのかもしれない…。」


 アルファが呟く。


「だが我々の街は滅んでしまった……」


5年前。


 彼女の故郷は襲われた。


 多くのエルフが命を落とした。


 そして世界樹も傷ついた。


沈黙。


 アルベルト


「だが結果世界樹は守られた。」


「代々受け継がれてきた使命をしっかり守ったんだ…。」


アルファは一筋涙を流す。


その両手をメル、エマが静かに握る。


 コラソンが口を開く。


「悪魔を止めるためには、世界樹を守るだけじゃ足りないんって事ですか?」


 アルベルトがコラソンを見る。


「おそらくその通りだ」


 そして、七つのダンジョンを指差した。


「悪魔が再び動き出したのなら、我々も知らなければならない」


「七つのダンジョンで、何が起きているのかを」


 コラソンは地図を見る。


ゼノスがやっと口を開く。


 「イリスのダンジョンでは、すでに魔素の弱まりが確認されている。」


コラソン

(そうだった。ゼノスさんもきてたんだ。)

(急に喋るからびっくりしたー。)


 「今すぐに何かが起こるわけではない。」


 「フローレが調査した結果、イリスのダンジョンは、現状では問題ない。」


「強力な魔物は現段階では出現しないだろうとゆう事だ。」


アルベルト


「なら、次は世界の情報を集めるべきだ」


「情報……?」


 コラソンが尋ねる。


「ああ。世界樹とダンジョンについて、我々が知っていることは少なすぎる」


 アルベルトは地図を広げた。


「そこで向かうのが――隣国のガルドア王国だ」


「獣人の王国だ……」


 メルが地図を覗き込む。


再びゼノスが口を開く


「そうと決まれば一度冒険者ギルドで話をしよう。」


 一同は冒険者ギルドへ戻ってきた。


 先ほどまでの緊張した空気とは違い、ギルド内にはいつものように多くの冒険者たちが集まっている。


 しかし、アルファたちの姿を見つけると、何人かの冒険者が小さく声を漏らした。


「……アルファ様?」


「フローレ様もいるぞ。」


「セリナさんまで……。」


 三人はそんな視線を気にすることなく、ギルドの奥へと進んでいく。


 そこにはゼノスがいた。


「おう。戻ったか。」


「ゼノス。」


 アルファが声をかける。


「大事な話がある。」


「……なんだ?」


 ゼノスが三人を見る。


 アルファは一度、コラソンたちへ視線を向けた。


 そして――


「私たちも、ガルドア王国へ行くわ。」


「私も行くのね。」


 フローレが続く。


「世界の危機を知った以上、ここで待っているつもりはないのね。」


 セリナも一歩前へ出る。


「もちろん私も行きます!」


「セリナさんまでまで?」


 コラソンが驚く。


「当たり前でしょ。アマブレさんに言われてるんだから…。」


 セリナは笑った。


「コラソン君たちだけに任せて、私だけイリスで待ってるなんてできないもの。」


 アルファが頷く。


「私たちにもできることがあるはずよ。」


「……。」


 ゼノスは三人をしばらく見つめていた。


 そして――


「……まぁそう言うと思ってたよ。」


 口元を緩める。


「え?」


 セリナが目を丸くする。


「最初から分かってたの?」


「お前たちの性格くらい、長い付き合いだからな。」


 ゼノスは肩をすくめた。


「なら――」


 ゼノスはカウンターの下から、三枚の書類を取り出した。


「これを使え。」


「これは?」


 フローレが書類を受け取る。


「冒険者の再登録申請書だ。」


「再登録……?」


 アルファが目を細める。


「そうだ。」


 ゼノスは頷いた。


「ガルドア王国へ行くなら、冒険者として動いたほうがいい。」


「……なるほど。」


「各国を回るなら、騎士や魔法師団として動くよりも、冒険者のほうが何かと都合がいい。」


 ゼノスは三人を見る。


「それに、今のお前たちなら――」


 一拍置いて、


「冒険者として動く理由も十分ある。」


 アルファは書類を見つめた。


「……分かった。」


 ペンを取る。


「私も登録する。」


「私も。」


 フローレが続く。


「もちろん私も!」


 セリナも勢いよく手を挙げた。


「よし。」


 ゼノスは頷いた。


「じゃあ、三人とも冒険者として再登録だ。」


ゼノス

「そうだお前たちも来い。」


コラソン

「え?」


 ゼノスは手招きする。


「コラソン、メル、エマ。」


 三人がカウンターの前へ並ぶ。


「お前たちにも話がある。」


「……なんでしょう?」


 ゼノスは三人を見渡した。


「お前たちは今日から――S級だ。」


「…………。」


 三人の動きが止まった。


「……え?」


 コラソンが聞き返す。


「S級?」


「そうだ。」


「……僕たちが?」


「そう。」


 ゼノスは頷いた。


「飛び級だ。」


「飛び級!?」


(前もFから飛んだよね…。)


 メルが声を上げる。


「そんなことできるの!?」


「普通はしない。」


「普通は……?」


「だが、お前たちがら普通じゃないだよ…」


 ゼノスは苦笑した。


「レイスの浄化」


「ヴァルタウロスとの戦闘。」


「悪魔を撤退まで追いやる力…。」


コラソンたちの表情が変わる。


「そして、アルファたちとの共闘。」


 ゼノスは三人を見つめた。


「お前たちの戦いは、すでにS級冒険者と同等以上の実績になっていると位置付けする。」


「だから、今回の件を受けて俺が判断した。」


 ゼノスは三枚のカードを取り出した。


「今日からお前たちはS級冒険者だ。」


 カウンターに置かれた三枚の冒険者登録証。


 そこには、それぞれの名前と――


 Sランク


 の文字が刻まれていた。


「……。」


 コラソンはゆっくりと一枚を手に取った。


 陽の光を受け、カードが僅かに輝く。


 表には自分の名前。


 そして、その下に大きく記されたSランク。


「……すごい。」


 コラソンの目が輝く。


「これ……。」


「どうしたの?」


 メルが覗き込む。


 コラソンは登録証を両手で持ちながら、


「なんか……カードゲームの超レアカードみたい…。」

(キラキラ)


コラソンは心を踊らされている。


「カードゲーム?」


 メルが呆れたように言う。


「コラソンってたまに理解できない事言うよね〜!?」


 コラソンは嬉しそうにカードを眺める。


「すごい!Sの文字……!」


「キラキラしてる〜!」


「ふふっ。」


 アルファが思わず笑う。


「コラソンらしいわね。」


「コラソン冒険者証と一緒に寝そう笑」


 セリナも笑う。


「額縁に入れて飾ったりして。」


「……それもいいですね。」


「本気で言ってる?」


 メルが呆れる。


 エマもコラソンの隣から登録証を覗き込む。


コラソン

「メルもエマも一緒なのも嬉しい。」


メルエマもその言葉を聞き自分の冒険者証を見る。


「……綺麗。」


「そうだね!」


 三人でSランクの文字を眺めている。


 そんな三人を見て、フローレが微笑んだ。


「まあ、喜んでいるところ悪いけれど。」


「?」


「S級になったということは、それだけ責任も大きくなるということよ。」


 コラソンの表情が少し引き締まる。


「……はい。」


 ゼノスも頷いた。


「その通りだ。」


 そして、ゼノスはアルファたちへ視線を移す。


「だから、お前たち三人も正式に冒険者へ戻ってもらう。」


 アルファ。


 フローレ。


 セリナ。


 三人の冒険者登録証がカウンターへ置かれる。


 そこにも――


 Sランクの文字。


コラソン

「みんなやっぱり言ってた通りS級なんですね。」


アルファが微笑む。


 フローレが続ける。


「冒険者を離れていただけで、ランクそのものが消えたわけではないのね…。」


 セリナが自分の登録証を見ながら笑う。


「久しぶりに見るわね、これ。」


 ゼノスは六枚の登録証を並べた。


 コラソン。

「は、はい」

 メル。

「はいっ!」

 エマ。

「はははぃー」

 アルファ。

「あぁ」

 フローレ。

「はい。」

セリナ。

「えぇ」

 六人分のSランク。


「これで準備は整った。」


 ゼノスは六人を見る。


「お前たちは、これから同じパーティとして行動してもらう。」


「六人で……。」


 コラソンが呟く。


 隣にはメルとエマ。


 そしてアルファ、フローレ、セリナ。


 それぞれ違う場所で生きてきた六人が、今ここに集まっている。


「……なんか、すごいですね。」


 コラソンが笑う。


「S級が六人って。」


「そうだな。」


 ゼノスも笑った。


「俺も、こんなパーティを作ることになるとは思わなかった。」


 ギルド内がざわつき始める。


「S級が六人……?」


「六人パーティだと?」


「そんなの聞いたことないぞ。」


 冒険者たちの視線が集まる。


 ゼノスはそんな周囲を気にすることなく言った。


「――今日から、お前たちは正式なS級パーティだ。」


 六人は互いに顔を見合わせる。


 そして――


「よろしくお願いします。」


 コラソンが頭を下げた。


「こちらこそ。」


 アルファが微笑む。


「よろしくね。」


 フローレが頷く。


 セリナが拳を握る。


 メルとエマも笑った。


「うん。」


「……よろしく。」


「出発は明日の朝だ。」


「城門に集合しよう!」


 六人の冒険者登録証が、カウンターの上で並んでいる。


 その六枚に刻まれた文字は――


 すべてSランク。


 こうして――


 史上でも類を見ない、


 S級冒険者六人によるパーティが誕生した。


 次に向かう場所は――


 獣人たちの国。


 ガルドア王国。


 六人の新たな旅が、始まろうとしていた。

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