第13話 下層階の魔物
一同は編成を組み直しダンジョンへ向かう。
やはりダンジョンの入口方面から魔獣たちが来ている。
戦いながら進む。
後方、弓矢部隊、魔法支援部隊のおかげで進みやすい。
巨大な骸骨の頭蓋骨が大口を開けている。
コラソンの視線が、ふとその髑髏に止まった。
(………………。)
初めてダンジョンへ来た日。
俺はこの髑髏をダンジョンの入口だと本気で勘違いし、真顔で中を通り抜けたんだよな…。
「……ふっ。」
思わず吹き出しそうになり、慌てて口元を押さえる。
(見るたびに思い出す。今思い返しても、めちゃくちゃ恥ずかしい……。)
メル
「クスクス…コラソン、どうしたの?」
コラソン
「メルのいじわる…泣」
(メル分かって言ってるな…!)
「ふふふ」
そしてダンジョンの入り口に差し掛かる。
「グゥゥゥゥルルルルーーーー!!!」
一同が思わずコラソンを見る。
コラソン
「今のは俺じゃないよ!!」汗
ダンジョンの入口奥から巨大な影。
「ミノタウロスだ!!」
コラソン
(異世界もので定番のミノタウロス…メチャクチャおっきいし本当に牛だな…)
後方部隊が構えを取る。
アルファ
「やはり結界が壊れているな…。」
「放てっっ!!」
後方から放たれた無数の魔法。
冒険者、弓矢部隊の弓の雨。
全てが、その巨体に直撃する。
巻き上がる噴煙。
「いくらミノタウロスでもこの攻撃じゃ耐えられまい」
一同の士気が上がる。
しかし。
噴煙が収まりかけようとした時その奥で赤い目が光る。
「……え?」
誰かが呟く。
ミノタウロスは避けることすらしなかった。
いや…。
防ぐ必要がなかった。
炎は消え、矢は皮膚に傷一つ残せていない。
「バカな……。」
アルファの表情が変わる。
「ミノタウロスの強さじゃない……。」
次の瞬間。
アルファが剣を構える。
「私が確認する。」
地面を蹴り、一瞬で距離を詰める。
コラソン
(速っっ!!)
巨大な斧を振り上げる魔物。
しかしアルファの剣が先に届く。
――ガキィン!
初めて魔物が腕を上げた。
「くっ!!」
アルファの一撃。
受け止めた腕が沈む。
ズゥゥン……。
巨体の足元の地面がひび割れる。
だが――
「……片手だけで…。」
次の瞬間。
魔物は腕を振り払った。
「っ!」
アルファが吹き飛ばされる。
コラソン
「アルファさん。大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫。ありがとうコラソン。」
コラソン
「メル、エマ行こう!!」
メルエマ
「うん!!」
エマは詠唱を始める
「炎よ…。」
コラソンは高く飛び上がる。
ミノタウロスの視線が上を向き斧を振り上げる。
「今だ!」
とメルが重力魔法をイメージ!
ドォォォンとミノタウロスの両腕が地面にめり込む!
「やった!」
コラソン
「メル! ナイス!!」
そのまま一気に切りかかるコラソン!
とミノタウロスの口が開く。
アルファ
「なんだあれは?」
「コラソン!!なんかまずい!!」
「何かするつもりだ!!」
ゴォォォォッ!!
ミノタウロスの口から火球が放たれ巨大な火球がコラソンへ迫る。
コラソン
(ミノタウロスって火吹いたっけ??)
エマ
「ファイヤーウォール!!」
ドォォン!!
コラソンの前に炎の壁が立ち上がる。
火球は炎の壁に激突し、激しい爆炎を巻き起こす。
アルファ
「防いだ……!?」
エマ
「コラソン! 今だよ!!」
コラソン
「ありがとう、エマ!!」
爆炎を突き抜け、アルマを振り抜く──。(あっつー!)
とミノタウロスから凄まじい雄叫びと共に魔力が発せられた。
爆風に押されコラソンは一旦引く。
ミノタウロスの胸元に埋め込まれた魔石が、赤く輝く。
アルファの顔色が変わる。
「……待って。」
「あの魔石……」
魔物の姿が少しずつ変化する。
角が伸びる。
筋肉が膨れ上がる。
「あれはミノタウロスじゃない……。」
「上位種……?」
アルファが静かに呟く。
「ヴァルタウロス……。」
ヴァルタウロスを見上げ、アルファの表情が険しくなる。
コラソンが振り返る。
「え?」
(聞いた事ない名前…。)
アルファは剣を握り直す。
「下層階の主……ヴァルタウロスだっ!!。」
「」
その言葉に、一同の空気が凍る。
「主……?」
アルファは頷く。
「本来なら、もっと下層階一番奥にいるはずの存在。」
「何よりこいつがいるせいでその下の超級下層が攻略できてないんだ…。」
視線を魔石へ向ける。
「それが……こんな場所まで上がってきたのか…。」
「コラソン、胸の辺りを見てみろ…。」
「…っ!?」
「はい。」
コラソンは真剣な顔で頷く。
そして
アルファの胸元を見る。
「……。」
「……。」
一瞬の沈黙。
コラソンの表情が少しだけ緩む。
「……。」
「ち、ちち違う!!」
アルファの顔が一気に赤くなる。
「私のじゃない!!」
「ヴァルタウロスの胸だ!!」
「す、すみません!!」
コラソンは慌てて視線を逸らしたくない。
しかし――
「コラソン!!!」
ビクッ!!
メルエマが同時に声を上げる。
二人が魔法の構えを取る。
「いや違う!今のは完全に言い方が――!」
「ごめんなさい!!」
コラソンは必死に謝る。
その瞬間。
凄まじい咆哮がダンジョン全体に響き渡った。
「グオオオオオオオオ!!」
ふざけた空気が一瞬で消える。
全員が戦闘態勢へ戻る。
アルファが剣を構え直す。
「……話は後。」
「まずは、あれを止める。」
「コラソン、ヴァルタウロスの胸元を見てくれ…。」
そこに埋め込まれた赤黒い結晶。
「……あれは。」
コラソンの目が鋭くなる。
「あの魔石……。」
アルファが頷く。
「そうだ。」
「誰かが魔石を埋め込み、操っている。」
コラソンは拳を握る。
「また……操られている魔物とゆう事か。」
次の瞬間、口から次々と巨大な火球を吐き始めた。
「なっ……!」
「こんなの避けきれない!」
辺りが炎に包まれていく。
コラソンたちは散開しながら応戦するが、火球は途切れることなく降り注ぐ。
メルが仲間を守ろうと前へ出る。
「重力魔法──!」
しかし、間に合わない。
巨大な火球がメルへ迫る。
「メル!!」
コラソンが飛び出すが間に合わない
その瞬間――
バシュッ!!
火球が弾き返された。
「え……?」
煙の中から現れたのは、セリナだった。
「ギルドの受付嬢を甘く見ないでね。」
コラメルエマ
「セリナさんっ!!」
続いて空から無数の魔法陣が展開される。
「──アイスランス。」
フローレが静かに詠唱すると、無数の氷槍がヴァルタウロスへ降り注ぐ。
ドドドドドドドッ!!
巨体が大きくのけ反る。
アルファも剣を構える。
「二人とも、合わせるぞ。」
三人が並んで立つ。
コラソンは思わず息を呑んだ。
「す、すごい……。」
アルファが小さく笑う。
「私は剣士、昔は三人とも、Sランク冒険者だったからな。」
セリナ
「私は戦士兼タンク、昔の、ですけどね。」
フローレ
「私は魔法使い、腕は鈍ってないのね。」
コラメルエマ
「えぇーーっ!!」
「今S級冒険者いないって……?」
セリナ
「今登録してる冒険者にはいないと言いましたよ…笑」
「そうそう、アマブレさんも騎士団長になる前はS級で同じパーティだったんですよ…。」
コラソン
(父さん、どおりで強い筈……汗。でもなんだか誇らしいな…。)
セリナとアルファが同時に地面を蹴った。
「行くぞっ!」
その声と共に、二人の姿が掻き消える。
「なっ……速い!」
次の瞬間――
ガキッッ!!
セリナは戦士兼タンク。ヴァルタウロスの巨体から振り落とされる斧を両手で受け止める。
ほぼ同時に、アルファの剣が閃き、無数の斬撃が巨体を切り刻んだ。
(2人ともこんなに強かったんだ…。アルファさん1人でも勝てた気が……。)
(アルファさんは他の冒険者や騎士団、後俺たちを気遣いながら戦っていたからきっと力が出せなかったんだ…。)
(足引っ張ってたんだ…。)
(引っ張らないようにしないと…。)
二人は止まらない。
セリナが攻撃を弾き打撃、アルファはセリナが作った隙を見つけ斬っては離れ、離れては再び懐へ。
まるで風そのものだった。
その頃
フローレは静かに杖を掲げた。
「――氷よ、その牙を示せ。」
足元に幾重もの魔法陣が展開される。
凍てつく冷気が森全体を包み込み、空気が白く染まっていく。
「上級氷魔法――グレイシャル・ランス!!。」
次の瞬間。
無数の巨大な氷槍が空中に出現した。
「行くのね!!」
ドドドドドドドドッ!!
ズゥゥン!!
ヴァルタウロスの巨体が大きく揺らぎその巨体が倒れた。
セリナは拳を握り、不敵に笑った。
「ふぅ……これがS級です!!」
アルファは剣を軽く振り、口元を緩める。
「少しはかっこいいとこ、見せられたかな。」
フローレも杖を下ろし、安堵の息をつく。
「ここ最近は、コラソンたちに驚かされてばかりだっからよかったのね…。」
三人は顔を見合わせ、同時に笑う。
「「「どんなもんだい!」」」
メルとエマは尊敬の眼差しを向ける。
「すごい……。」
「かっこいい……!」
――その瞬間。
ヴァルタウロスの胸の魔石が赤黒く脈打つ。
ギロリと瞳が開き、口を大きく開いた。
「っ!」
誰よりも早く異変に気づいたコラソンが叫ぶ。
「まだ終わってない!」
アルマを抜き、一気に駆け出す。
(ダメだ…距離が…。)
その背中へ、メルの声が響く。
「上級重力魔法――《リパルション・バースト》!!」
ドンッ!!
圧倒的な反発力がコラソンを押し出す。
景色が一瞬で流れ去る。
さらにエマが続けて叫ぶ。
「炎よ、その力を刃へ宿せ――付与魔法!!」
紅蓮の炎がアルマを包み込み、灼熱の刀身へと変わる。
「ありがとう2人メル、エマ…、行こう。アルマ!」
ヴァルタウロスが反応した時には、もう遅かった。
「心刀流――空烈!!!」
一閃。
炎の軌跡が空を裂く。
ズバァァァァンッ!!
燃え盛る刃が首を斬り飛ばし、巨大な頭部が宙を舞う。
遅れて巨体が轟音と共に崩れ落ちた。
静寂。
セリナは頬を膨らませる。
「せっかく私たちがいいところ見せられたと思ったのに!」
アルファも苦笑する。
「最後だけ一撃で持っていくなんて反則だよ。」
フローレはコラソンではなく、メルとエマへ視線を向けた。
「……今の重力魔法と付与魔法は?」
メルは少し照れながらも、どこか誇らしげに答える。
「魔導書で勉強したんです。毎晩、宿に戻ってから何時間も読み込んで……。」
エマも頷く。
「私も同じです。付与魔法の理論書を何冊も写して、この杖の炎サラと相談して……ようやく形にできました。」
フローレは目を見開く。
「……まずメル!魔導書を読み込んだだけで出来るもんじゃない!」
「そしてエマ…。時にサラとは?」
エマ
「この子の名前みたいです。」
「付与魔法の勉強に行き詰まってる時に教えてくれたんです…。」
フローレ
「やはり完全に意思があるみたいなのね…。」
アルファは呆れたように笑う。
「本当に、この子たちは規格外ね。」
セリナは肩をすくめる。
「そりゃ、私たちも驚かされるわけだ。」
**パチ……パチ……パチ……。**
森の奥から、不気味な拍手が響く。
「素晴らしい。」
ゆっくりと一人の男が姿を現した。




