↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界の理不尽に耐えられず、心から願ったら異世界の空に放り出されたのだが???  作者: はるのひ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/24

第12話 レイス

挿絵(By みてみん)


冷たい風が吹き抜けた。


木々の隙間から現れたのは、黒い霧をまとった人影。


足は地につかず、ゆっくりと宙を漂っている。


「………あれは、レイスだ。」


アルファの表情が一変した。


「みんな下がれ!」


その声には今までにない緊張があった。


「普通の魔物とは違う。物理攻撃はほとんど効かない。強い恨みを抱えた魂が魔物になった存在。こんな化け物全滅しかねない……。」


フローレ

「恨みが強すぎて私の浄化魔法が全くきかないのね…。」泣


レイスがゆっくり顔を上げる。


目は真っ黒で、底知れない憎しみに満ちていた。


次の瞬間。


ゾッ──


周囲の温度が一気に下がる。


フローレ

「なんて力……」


「くっ……!」


アルファが歯を食いしばる。


「これがレイスの怨念……心臓を手で掴まれてるみたいだ……!」


コラソンは無意識に近くの兵士の後ろへ。


「……。」


兵士も気付かないほどピタッと隠れる。


すると。


「きゃっ……」


同じように隠れようとしたエマが、コラソンの背中にぴったりくっつく。


「コ、コラソンのせい……怖い……。」


「なんで俺が?」


気づくととメルも恐怖に我慢できず兵士を合わせて4人が縦に重なっていた。


3人とも兵士の背中から顔だけひょこっと出してレイスを見ている。


兵士は困惑した顔で後ろを振り返った。


「……お前達…。」


アルファは思わず額に手を当てる。


「3人ともあの強さでもアンデットは無理だったか……。」


レイスがドス黒いオーラを放ちながらゆっくり近づいてくる。


前にいた兵士がレイスの力に耐えられず意識を失う。

コラソンが先頭に…。


次の瞬間――


レイスがこちらを向く。



レイスと目が合った瞬間。

コラソンは余りの恐怖に目を閉じるしかなかった。

すると


ドクン――


心臓が大きく脈打つ。


「っ……!」


コラソンの意識に、誰かの映像が流れ込む。


暖かな村。 (これは?)


妻と幼い娘。


笑い声。


平和な日々。 (誰かの記憶…。)


――次の瞬間。


空が黒く染まる。


鐘が鳴り響く。 (……っ!!)


「魔族だーー!!」 (魔族??)


村に絶望が走る。


人々は逃げ惑い、兵士たちは必死に剣を構える。


しかし、一人の魔族が静かに歩いてくる。


その圧倒的な魔力の前では、誰も近づくことすらできない。


父親は妻と娘をかばい、家族を守る為に囮になる。


「頼む……逃げてくれ。」


「あなた…?」


「お父さん。やだ…やだ。」


父親

「ダメだ!行くんだ!行ってくれ!」


魔族は父親を見下ろし、静かに笑う。


「命が欲しいなら俺のをやる……!」


「家族だけは逃がしてくれっ!」


父親は地面に頭を擦りつけた。


魔族はその姿を見て口角を上げる。


「……なるほど。自分の命よりも家族が大事だとでも?」


「そうだっ!だから頼む!」


「願いは聞き届けよう。」


父親の瞳に希望が宿る。


しかし次の瞬間。


魔族は黒く濁った魔石を取り出した。


「ククッ…?」


「その代わり、お前には最高の絶望を与えてやろう。」


魔石が胸元へ押し込まれる。


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」


激痛が全身を駆け巡る。


視界が黒く染まり、身体が勝手に動き始める。


(やめろ……。)


(身体が……動かない……。)


父親は必死に抵抗する。


それでも腕は勝手に剣を握る。


妻が涙を流しながら叫ぶ。


「あなた! あなた!」


娘は震えながら父親へ手を伸ばす。


「お父さん……?」


(逃げろ……。)


(頼む……逃げてくれ……。)


口は動かない。


身体は止まらない。


自分の意思とは裏腹に、剣が振り上げられる。


「やめろぉぉぉぉぉっ!!」


心の叫びだけが響いた。


⸻


その後。


炎に包まれた村。


父親は血に染まった剣を握ったまま立ち尽くしていた。


意識だけは残っている。


目の前には、動かなくなった家族。


「……なんで。」


「なんでなんだ…」


「なんで……俺が。」


魔族は父親の剣を奪う。


「自分が守りたかった。家族を自分で手にかけたんだ」


「恨むなら自分を恨むんだな。」


「私は何もしていない…クックック…。いい見せ物だったわ。」


「そうだ…。貴様の命もだったな…。」


ズバッッッ!


魔族は父親を容赦なく切り捨てる。


父親は涙を流しながら薄れゆく意識の中で深い感情を抱いていた。


「許さない。許さない。許さない。」


「なんて救われない。どうすればいい…。」


「この気持ちどうすれば…。」


その憎しみだけが魂に焼き付き、


「無念だ…………_____________ …………返せ!!!!!」


父親は余りの無念さ自責の念によりレイスに変わり果てた。




そこで現代に戻る。


コラソンは膝をつき、涙を流す。


(これはこのレイスの心か?)


「……。これはあまりにも酷い…。」


「ずっと苦しんでたのか……。」


レイスは憎しみに支配されながらも、心の奥底では誰かに救いを求めていたのかもしれない。


まるで自分がその人生を生きたかのようだった。


レイスは叫ぶこともなく、静かに震えるコラソンを見つめていた。


その視線だけで胸が締め付けられる。



コラソンは刀を握り直した。


「この人は……。」


ゆっくりと前へ歩く。


「この人……泣いてる。」


「分かるよ。自分の力じゃどうしようもない理不尽な事。」


「悔しくても嫌でも何も出来なかった自分。」


「分かる。分かるよ……。」


「こんな思いなんてあんまりだよ……。」


レイスは黒い瞳から一筋の涙。


アルマに胸に淡い光が宿る。


「もう苦しまないで……。」


「俺が終わらせる。」


「あなたの想いも俺がもらうから」


「灯火っ(ともしび)!!」


眩い光が森を包み込む。


レイスは苦しそうに叫びながらも、その黒い霧は少しずつ消えていく。


憎しみが剥がれ落ちるように。


怒りが消えていくように。


最後に残ったのは、一人の穏やかな父親の魂だった。


父親は涙を流しながら微笑む。


「……ありがとう。ありがとう。ありがとう」


その言葉を残し、光の粒となって空へ昇っていく。


空へ昇っていく姿を見上げるコラソン。

そこには先ほど見た家族と抱きしめ合いながら天に昇ってゆく姿がコラソンには見えた。

ふと娘が振り返りにこやかに手を振った。


森に静寂が戻った。


誰も言葉を発せなかった。


アルファだけが呆然とコラソンを見つめる。


「……レイスを浄化した?」


「さっきまで縦に隠れてたやつとは思えないな…!笑」


コラソンははにかむしかなかった。


「ところでコラソン。技の名前を言っていたな…。」


コラソン

「技の名前つけようと思ってメルとエマと3人で色々考えたんです…。」


「そうか…。」


「ところで魔物たちが向かってきた方向に何があるか分かるか?」


コラソン

「あの方向は……。ダンジョンですか?」


「そう。ダンジョンだ…。」


「確実にダンジョンで何か起きている。もしあの魔物たちがダンジョンから出てきたのなら、おそらく結界も破壊されているだろう。」


「前にも言ったが結界は冒険者を守る為、そして魔物のダンジョンからの流出を防ぐ役目もしていた…。」


「あの数の魔物、それしか考えられない…。」


「フローレは一度ギルドに戻り状況を説明してきてくれると助かる…。」


「編成を立て直してダンジョンへ急ごう。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。