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この世界の理不尽に耐えられず、心から願ったら異世界の空に放り出されたのだが???  作者: はるのひ


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第11話 いつもと違う。

今日もメルの言う冒険者らしい朝。


コラソン

「おはよう。」


メルエマ

「おはよ。コラソン」


宿の食堂。


「いただきまーす!」


エマは焼きたてのパンを両手で持ち、幸せそうに頬張る。


「ん〜! 木漏れ日の宿の朝ごはん、最高!」


コラソンは苦笑する。


「エマ、それ今日で何回目?」


「えへへ、毎日言ってるかも!」


その様子にメルも思わず笑った。


「ふふっ、本当に好きなんだね。」


「だって昔は、こんな温かいご飯なんて食べられなかったから……。」


エマは少し照れくさそうに笑う。


その一言に、コラソンとメルは顔を見合わせる。


コラソンは優しく笑った。


「じゃあ今日もいっぱい食べないとな。」


「うん!」


三人は笑い合う。


食事を終え、宿の外へ出る。


イリスの街では、露店の準備をする商人や、依頼を受けにギルドへ向かう冒険者たちで賑わっていた。


メルはその光景を眺めながら呟く。


「この時間が一番好き。」


「冒険者らしい朝だから。」


「みんな笑って出発して、夕方には『ただいま』って帰ってくる。」


エマも元気よく頷く。


「私もいつか、『今日も依頼楽勝だったね!』って言いながら帰ってきたい!」


コラソンは笑う。


「その時は帰りに甘いものでも食べるか。」


「やったー!」


エマは飛び跳ねるように喜ぶ。


その平和な時間は、長くは続かなかった。


突然──


ゴォォォン!!


ギルドの警鐘が街中に鳴り響く。


人々が一斉に立ち止まり、空気が凍りつく。


「何の音……?」


エマの笑顔が消える。


その中を鎧姿のアルファが走ってくる。


「コラソン!」


「メル!エマ!」


「森に大量の魔物が現れた!!」


「森へ向かう!」


「はい!」


コラソンは真っ先に刀を取り飛び出していく。


アルファ

「コラソン待てっ!」

コラソン

「待ってなんかいられない」

「一大事なんでしょ?」


「森はそっちじゃない!!逆だっ」


コラソン

(照。)


「行こう!」



イリス近郊の森。


騎士団、冒険者、


総勢約40人が森へ足を踏み入れる。


アルファが静かに言う。


「警戒しろ。」


「森の様子がおかしい。」


森へ入って間もなく。


茂みが揺れた。


「来るぞ!」


飛び出してきたのはゴブリン。


一体ではない。


十体。


二十体。


さらに奥からオークが姿を現す。


「オークまで!?」


冒険者たちが驚く。


「森にオークがいること自体は珍しくない!」


「だが……。」


「数が多すぎる!」


次々と現れる魔獣。


五十。


八十。


百……。


いや、それでは足りない。


百では到底きかない。


森中から咆哮が響き渡る。


「迎え撃てぇ!!」


騎士団長の号令と共に戦いが始まった。


⸻


コラソンたちも戦線へ飛び込む。


「エマ!」


「任せて!」


火球がゴブリンの群れを吹き飛ばす。


「メル!」


「うん!」


重力魔法でオークの足を止める。


動きを封じられた魔獣を、コラソンがアルマで次々と斬り伏せていく。


数日前までぎこちなかった三人。


しかし今は違う。


誰が何をするか、言葉がなくても分かる。


訓練の日々が、三人を一つのチームへと変えていた。


「いい連携だ!」


アルファもその成長に目を細める。


しかし。


戦いながらコラソンは違和感を覚えていた。


(なんだ……?)


目の前のゴブリンが何度も後ろを振り返っている。


オークも同じだった。


怒っているようでいて、その目には焦りがある。


(違う。)


(こいつら……。)


(俺たちと戦いたくて暴れてるんじゃない。)


(何かから逃げてる……?)


その瞬間。


森の奥から地響きが響いた。


ズシン……。


ズシン……。


巨大な影が姿を現す。


「ゴブリンキングだ!!」


騎士団が一斉に迎え撃つ。


しかし。


「ぐあああっ!」


兵士たちは吹き飛ばされる。


圧倒的な力。


誰も近付けない。


「何故だ…?ゴブリンキングにしてもいつもより強い」


エマが一歩前へ出た。


「私がやる!」


「炎よ……」


掌に炎が集まる。


「ファイヤーボール!」


ベテラン冒険者が叫ぶ。


「初級魔法だと!?」


「そんなので倒せる相手じゃない!」


放たれた火球は一直線に飛び――


ゴブリンキングへ直撃。


ドォォォォン!!


爆炎が森を包む。


煙が晴れる。


そこには、跡形もなく消し飛んだゴブリンキングの姿しかなかった。


「……え?」


誰も言葉を失う。


「初級魔法で……。」


「倒した……?」


ざわめきが広がる。


しかし休む暇はない。


さらに奥から雄叫びが響く。


「オークジェネラルだ!!」


巨大な戦斧を担いだ上位種が姿を現した。


「メル!」


「任せて!」


「ウェイト!!」


ズンッ!!


オークジェネラルの巨体が地面へ押さえつけられる。


「今だ!」


コラソンが地面を蹴る。


光をまとったアルマが閃く。


一閃。


静寂。


オークジェネラルの巨体がゆっくりと崩れ落ちた。


「一撃……。」


騎士団員が息を呑む。


アルファは静かに微笑む。


「違う。」


「あれは三人で掴んだ勝利だ。」


「だがこれは問題だ。ゴブリンキングもオークジェネラルも普段確認されている強さじゃなかった…。」


オークジェネラルを討ち倒したことで、森には一瞬だけ静寂が戻った。


だが、それは嵐の前の静けさだった。


「……変だ。」


最初に口を開いたのはアルファだった。


周囲を見渡し、眉をひそめる。


「これだけの魔獣が暴れていたのに、まだ魔力の気配が消えない。」


フローレも杖を握り直す。


「まだ終わってないのね。全員、警戒を。」


コラソンたちは息を整えながら、森のさらに奥へ足を進めた。


木々の隙間から、黒い霧のようなものが漂っている。


腐臭が鼻を突き、空気が重くなる。


やがて視界が開けた。


「……っ!!」


誰かが息を呑む。


そこにいたのは――


無数の骸骨。


腐敗した肉をまとった死体。


朽ちた鎧を身に付けた兵士。


折れた剣を握る亡者。


数百……いや、それ以上。


アンデッドの大群だった。


「アンデッド……!」


冒険者たちの表情が一気に強張る。


その時だった。


コラソンだけが、ぴたりと動きを止めた。


顔から血の気が引いている。


(やっと魔獣には慣れてきたのに……。)


額から冷や汗が流れる。


(待って待って待って……。)


(アンデッドって何!?)


(ゾンビ? スケルトン? 幽霊? どれ!?)


(そもそも人間がアンデッドになるの!?)


(骨だけでなんで動くんだ!? 筋肉もないのに!!)


(怖い怖い怖い怖い……!!)


心臓が嫌な音を立てる。


前世でもホラー映画や心霊番組だけは絶対に見なかった。


お化け屋敷では入口で引き返し、ホラーゲームもオープニングの映像が耐えられずやめた。


そんなコラソンにとって、


目の前の光景は――


人生最悪の天敵だった。


「コラソン?」


メルが心配そうに声を掛ける。


「顔真っ白だけど、大丈夫?」


「…………。」


返事がない。


コラソンは震える指でアンデッドの群れを指差しながら、小さく呟いた。


「む、無理……。」


「え?」


「俺……ああいうのだけは、本当に無理ぃぃぃ!!」


その叫びと同時に、


大地を埋め尽くすアンデッドたちが、一斉にこちらへ顔を向けた。

カタ……。


カタカタ……。


骨が擦れ合う不気味な音が森中に響く。


次の瞬間。


「グォォォォォォ……!」


腐敗した兵士が雄叫びを上げると、アンデッドの軍勢が一斉に動き出した。


「来るぞ!!」


アルファの号令と同時に冒険者たちが前へ飛び出す。


「前衛は壁を作れ! 後衛は魔法準備!」


「はっ!」


炎、風、水、雷。


無数の魔法が飛び交い、最前列のスケルトンを吹き飛ばす。


しかし――


砕け散った骨が、黒い瘴気をまとって再び集まり始める。


「なっ……!」


「倒しても再生してる!?」


冒険者たちに動揺が走る。


「頭を砕いても駄目です!」


フローレが叫ぶ。


「魔力で動いてるのね! 核を壊さない限り何度でも立ち上がるのね!」


その間にもアンデッドは距離を詰めてくる。


一方その頃。


コラソンは――


「無理無理無理無理……。」


木の陰で小さく震えていた。


「コラソン!」


メルが駆け寄る。


「戦わないと!」


「いや! だってあれ骨!? 動いてる!? 意味分からんやん!」


「今そこ!?」


「やん?」


エマも慌てて振り返る。


「コラソン! 怖いのは分かりますけど!」


「エマはあれ夜中に出てきてもそんなこと言える?……。」


エマは想像した。

エマも顔がこわばる。

「嫌ーっ!」


エマにも伝染してしまった。

2人で震えている。

「怖い〜〜ブルブル…」


メル

「もう!2人ともっ!」


そんなやり取りをしている間にも、


ガシャッ!!


一体のスケルトンがコラソンの目の前へ飛び込んできた。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


反射的にアルマを振り抜く。


ズバァン!!


光をまとった一閃。


スケルトンは真っ二つになり、そのまま黒い霧となって消滅した。


「……え?」


再生しない。


アルファが目を見開く。


「今のは……?!」


フローレもすぐに気付く。


「コラソンの光魔法の影響なのね……!

多分アルマを通して浄化したのね…。」


普通の攻撃では倒せないアンデッド。


しかしコラソンの光を宿した斬撃だけは、完全に消滅させられる。


「コラソン!」


アルファが叫ぶ。


「あなたの剣なら倒せる! 前へ!」


「ぎぃぃぃ!!」←コラソンの声


泣きそうな顔のまま駆け出すコラソン。


「近づきたくないぃぃぃ!!」


メル

「ドンッッッ!!」

メルはコラソンの為に一度に30体ほどのアンデットの動きを止める。

「これで向かってこないから!!」


「メメメメル〜。ありがとう〜」


恐怖で半泣きになりながら剣を振るうたび、アンデッドは次々と浄化され、黒い粒子となって夜空へ消えていく。


その姿を見た冒険者たちは士気を取り戻した。


「いけるぞ!」


「コラソンが道を開いてくれる!」


「援護しろ!」


だがその時――


森の最奥から、それまでとは比べものにならない禍々しい魔力が溢れ出した。


ズシン……。


ズシン……。


地面が揺れる。


アンデッドたちは一斉に動きを止め、まるで王を迎えるように左右へ道を開いた。


その奥、闇の中から現れたのは──


全身を漆黒のローブで包み、紫色の炎をまとった巨大な骸骨のアンデットだった。


眼窩には赤黒い光が灯り、身の丈ほどもある鎌を肩に担いでいる。


アルファの表情が凍りつく。


「……まさか。こいつはやばい……。」


フローレが息を呑む。


「最上位アンデッド……レイス。」

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