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第99話 銀髪弓使いのダンジョン探索 その8

 岩肌の天井から放たれた輝きで照らされた陸路と水路が入り混じる広大な地下水路。

 その一角に湖を想起させる程に広めな面積がある水路で前触れなく発生するのは水飛沫を伴う爆発音。

 それから数秒後に余波で揺らめく水面から顔を出すのは銀髪の少女――セリニであった。


「まだ……近くにあるよね」


 そう言うと周りを見たセリニが見つけたのは水に浮かびながら水流に乗る物体であり、見つけた途端に素早く泳いで向かう。

 その視界の先に鎮座するのは半透明な氷の塊――巨大な流氷であった


「これで最後だといいけど」


 現実では簡単に見ることが不可能な水面に浮かぶ巨大な氷の漂流物に近づくとそこから伸びた突起物を掴んだ後に海中に沈む氷壁を思いっきり蹴ったセリニはその反動の勢いに利用して大きく跳躍。

 宙を舞う中で軌道の調整――そして弓を手元に出現させながら流氷の上に着地した。


「冷たくなくて……普通に掴めて、乗っても滑らない流氷は……やっぱり……少し変な感じ……」


 外面こそテレビで見たことがあったセリニだが現実の氷とは全く別な性質であることを不思議に思えた。


「でも……そうでないと……ドロップアイテムの入手難易度が途轍もないことになるのかな?」


 そんな独り言を零しながらセリニは周囲を見る。

 その場は氷の床で形成されている。流氷のサイズが巨大なこともあって、自由に動き回れる程の全長があり、高さは地下水路の陸路に匹敵する。

 

 ――帰りは泳がなくても……大丈夫だね。

 陸への帰還手段を思い浮かべたセリニは流氷の上に来た目的を遂行する為に注意深く観察する。

 すると盛り上がってる一部分が微かに光っている事を確認して近づいて掴む仕草をするとパネルが表示される。


 ――【地下水路の氷塊】。

 書かれている内容を心の内側で呟いたセリニは「良かった」と口にした。


「これで二つ……アルーセさんからの依頼完了だね」


 先に入手したアイテムがフレンドからの頼まれ事であった。


「後は……」


 故に流氷に用事がなくなり、立ち去るだけとなったセリニであったが――足場が微かに揺れていることに気づいた。


「――だよね」


 一切動じないどころか呆れた色合いを見せたセリニは弓に式を向けながら横目である地点を見る。

 するとその地点の氷がせり上がりながら形が整えられて中型の氷山が作られ――四本の足と頭部に当たる部分が出現すると同時に自立して動き始めた。


「広い流氷だから……出ると思った……キネシス・パゴス」


 既に一度遭遇していた敵モンスター故に出現する可能性があると予感していたセリニは弓矢を構えながら相手の出方を伺う。


 ――回転じゃなければ……。

 初遭遇した際は矢を弾く、防御と移動を兼ねた攻撃を仕掛けてきた。


 ――けど……打倒するのも……楽しいよね。

 その時は慌てて回避に専念していたセリニであるが対処法があるかもしれないと思い。その攻撃方法を飛んでくるならばそれもありと思う最中に――キネシス・パゴスの氷山部分が輝きを放つ。


 ――それなら!

 その予備動作が何に移行するのか解っていたセリニはスキルを口にする。


「【弓術きゅうじゅつ鎧壊がいかい】」


 放たれた潤朱うるみしゅに染まった矢はキネシス・パゴスに直撃――氷の身体を抉り、エフェクトこそ発動するが動きに支障は与えられない。

 氷山の一部が欠けると操られるように浮き上がり、鋭利な部位を銀髪の少女に向けた刹那に三つの氷片が直線的に突き進んだ途端――セリニはスキルを口にする。


「【蒼球吸壁そうきゅうきゅうへき】」


 粘着質の蒼い球体が現出すると飛来した三つの氷欠片を取り込み吸収――それが終わると同時にスキルを解除したセリニはキネシス・パゴスに接近しながら蒼い粒子を纏う弓を振り下ろした。


 ――普通の一撃だったら……効果薄いけど。

 そう思ったとおり弓による直接攻撃にうんともすんともキネシス・パゴスは反応しない。


 ――けど……スキルなら……。

 だが続いて奔った蒼き衝撃が現れるとキネシス・パゴスは仰け反る――その隙をセリニは見逃さない。


「【弓術きゅうじゅつ貫穿かんせん】」


 放たれた矢は白い輝きを放ちながらキネシス・パゴスに貫いた。


「【暗影変異・黒之鋭刃くろのせんじん】」


 漆黒の双剣となった弓の一撃がキネシス・パゴスを切り裂くが――未だに健在。


「――」


 一度交戦しているために驚きはしないセリニであるが警戒はしており、反撃に用心して半歩後ろに下がり弓矢を構える――その間にキネシス・パゴスが動こうとしたがそれよりも先に冷静な色合いで追撃のスキルを口にした。


「【暗影流出・漆黒飛刃しっこくひじん】」


 その声に応じるようにセリニの髪飾りから現出した影より生み出されて空中に固定されるのは矢のような形状をした黒き刃。

 それは番えられた矢が放たれると追従するように直進してそのままキネシス・パゴスの総体を同時に貫いた瞬間――悲鳴のような音を鳴らしながら全身が細かく砕けて氷粒となり、消え去った。


「うん……倒せた」


「矢で放つ漆黒飛刃しっこくひじんも……いいね」


 それを見たセリニが喜びの声とスキルに関して声を出した最中にパネルが目の前に現れると内容を見る。


「ドロップアイテム……地下水路の氷塊」


 それは先に流氷の上で入手した同一のアイテムであった。


「キネシス・パゴスが落とすアイテム……だったんだ」


「最初に倒した個体がドロップしてたら……楽だったんだけどね」


 アルーセから依頼された地下水路の氷塊の数は二つであり、一つ余分に手に入れたことに思うところを感じたセリニ。


 ――あのセンサーが……ツインファンタジーワールドにも搭載されているのかな?

 過去にもゲームの中で似た経験をした記憶があったセリニはそんな感想を抱いた。

 

 ――予備で欲しいと言うかもしれない……そうじゃなくても……他の人に……きっと高く売れるよね。

 だが多く手に入れても問題ないアイテムだと思うことにしたセリニは他にもアイテムがあるかもしれないと周囲を探索を開始するその最中に色々と考え始める。


 ――それにしても……キネシス・パゴスは強い敵だった。

 先の戦いでは一方的に攻撃を続けて楽に倒していたセリニであるが――それは二戦目だからであり、初戦はかなり苦戦していた。


 ――あの外見なら……炎属性が使えるようになれば……最早く倒せるかな?

 今後も兼ねて色々と考えたセリニだが――その強さに対して多少の疑問が過る。


 ――アルーセさんは……そこまで強いモンスターはいないと言ってましたけど。

 聞いた話と齟齬があると感じたセリニ――それには理由があった。


 セリニは遭遇していないがキネシス・パゴスは通路側にも登場するモンスターで誰でも把握できるモンスターであり、その大きさは先に表れた個体の半分にも満たない、そしてそこまで強いモンスターではなかった。ドロップアイテムとして【地下水路の氷塊】を希に落とすことがある。


 ――依頼されたアイテムも変わった所にあった。

 セリニは個人的なある事情からまだ確認できていないが地下水路にも通路側にも凍った場所があり、そこで【地下水路の氷塊】を採取可能であった。

 

 しかし流氷の上にも中型のキネシス・パゴスが現れて――通路に現れる個体とは隔絶した強さであることやアイテムが採取可能な事は流氷の上に乗った経験がないアルーセにとっても初耳なゲーム情報であった。


「普通じゃない場所にアイテムとか……場違いに強いモンスターはいるよね」


 とはいえ想定外な強敵と戦えている現状にとても満足していたセリニはゲームならそういうことがあると楽しんでおり、聞いた内容とは違う状況であることに対して全く気にしていなかった。


「料理効果が切れた」


 地下水路に二度目の突入の前に食べた料理によるステータスアップが時間経過で失ったことをパネルが表示する。


「アイテム……ないよね?」


 周囲の確認したセリニはその場に座ると同時にパネルを操作――するとどんぶりと箸が手元に現れると蓋を取る。

 それはアルーセから貰った攻撃力が上がる料理の一つで中身は白米が敷き詰められており、その上に香ばしい炭の香りが漂う醤油のたれで塗られた焼き鳥に赤い粉が振りかけられた熱々な丼物であった。

 

「美味しそう!」


 一目みた瞬間に食欲が湧き上がったセリニだが――気になる点が浮かび上がる。


 ――さっきもだけど……焼き鳥がメインなのは……どうしてなんだろう?

 ――なんかの……ブームとか……?

 二回連続で似た料理が出た故にそんなことを感じるセリニであるが――


 ――別にいいよね。

 枝葉末節しようまっせつな事に突っ込んだから際限がないと思案したセリニ。


「流氷の上での食事……まさにゲームだね」


 そんな所感を口にしながらもセリニは焼き鳥丼を食べることにした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

明日も投稿予定です。

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