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第98話 銀髪弓使いのダンジョン探索 その7

「MPは……全部回復したね」


 周囲が螺旋階段で囲まれた安全地帯に移動を終えたと同時にパネルを開いたセリニは自身のステータスを確認していた。

 それが終わるとパネルを表示したまま緊迫感を解くように深い息を吐いた。


「魔法を連発できない敵を相手に……試してよかった」


 蒼球吸壁そうきゅうへきで魔法を吸収した際のデメリットを確かめた結果この場に舞い戻ることになったセリニ。

 しかしその負荷による身体に響く感覚はかなりのものであり、矢継ぎ早に攻撃を仕掛けてくる敵や二体以上の敵を相手にしていた時にそのデメリットを受けていたら間違いなく身体を動かす前に倒されて強制的に街に戻されていたと感じている。


「魔法を使うかもしれない敵には……基本的に使ったら駄目だね」


 故にそのような方針にすると口にしたセリニだが――それは絶対ではない。


 ――MPよりもHPを優先するときは……使えると思うけど。

 ――倒れたら……元も子もない……よね。

 街を即座に出た昨日と異なり今日はしっかりと準備をしていたセリニはMPを回復するアイテムの用意はあった。

 故に0になったら終わるHPを最優先とする時は使用を躊躇しないと心に留める。


「そんな状況にしないのが一番……だよね」


 そう言いながら蒼球吸壁そうきゅうへきに関しては一区切りしたセリニはパネルを操作して新たに表示したのは地下水路に入った後に入手したスキルであった。


「弓……専用だね」


 そう言うとセリニはそのままスキルの名を紡いだ。


「【矢継やつばや停滞ていたい】」


「地上に立っていて――更に動いていない間に効果が発揮するスキルで……矢の出現速度が少し上昇する……だね」


 スキルの内容を口にすると同時にセリニは頷いた。


 ――だから……早く現れた。

 先に起きた戦いで矢の出現速度が上がっていたと感じとっていたこともあってセリニは納得できた。


「習得条件はレベル15以上で……動いていない時に矢を敵に一定数当て続ける……何度かしてるね」


 矢継やつばや停滞ていたいに関わるものを理解――及び納得できたセリニはパネルを閉じる。


「動いているときと……矢の出現速度が変わる?」


 そんな疑問を口にしたセリニだがスキル名を思い出すとある蓋然性がいぜんせいが脳裏に過る。


矢継やつばやに……別のバージョンがないかな」


 スキル名に『停滞』と付いているからには別の動きに対応するスキルがあるかもしれない。

 そう思えたセリニはそれらを習得することでより高みに――より強くなれるかもしれないと思いを馳せてとても楽しい気持ちとなった。


「モンスターと戦うときに色々としてみよう」


 その思いを燃料としてダンジョン探索を再開しようと歩み出したセリニだが――あることを思い出して足を止める。


「アルーセさんから折角いただい物を……忘れてました」


 気持ちが進む事ばかりに向いていたからだろうか? 敵が現れる場所に向かう前にするべきことを忘れていたと自覚したと同時にセリニはパネルを操作すると手元にあるアイテムが現れる。


「これは……辛口焼き鳥……でしたよね」


 串に焼いた葱と鶏肉が刺されて、赤い粉が振りかけられた目の前の料理の名を口にしながらセリニは一口食べる。


「辛いけど……美味しいです」


 そのまま完食したセリニは自身のステータスを確認するとバフとして攻撃力が5上昇していた。


 ――料理にはバフが発生するものがある……本当ですね。

 ――継続時間は一時間。

 アルーセが言ってたことをセリニは再確認した。


 ――そういえば……ミストフォロスの本部でも沢山の料理があったけど。

 ――普通の料理ばかり……だった。

 料理を口にしたことで少し前に感じていた疑問が再発したセリニ。


 ――変わった料理がないのは……どうしてなんだろう?

 ツインファンタジーワールドの様々な要素に創作世界特有の雰囲気を感じとっていたセリニだが食事に関しては現実とあまり変化を感じないと思えたが――数秒後に「別にそれは良いことだよね」と結論を口にした。

 

「口にするのを遠慮したい……変わった料理ばかりよりは」


 ゲームの中でも料理は美味しいものを食べたいと思えたセリニは現状に満足できる。

 それを良しとすると同時に歩むと再びダンジョンの領域にに入った。


「どこから探索を……」


 するべき事はあるが時間制限もないのでのんびりとやろうとしたセリニは早速広場に微かな変化が起きていることに気づいた。


「宝箱?」


 広場の端にぽつりと置いてある箱の名前を口にしながら歩み寄ったセリニだが首を傾げる。疑問符が頭の上に浮かぶ心境であった。


 ――ほんの少し前の時は……置いてなかった……よね?

 数分間休んでいた間に変化が発生した故に心が驚きで満たされたセリニであったがそれが落ち着くと知っている要素と気づいた。


「時々で出現するの……だよね……多分」


 ツインファンタジーワールドでは場所が固定された宝箱とランダムで出現する宝箱がある――今回目にしたのは後者だとセリニは解釈した。


「なら……開けるべき……かな」


 気軽にアイテムを得るチャンスを見逃す理由はなかったセリニは手にするべく身体を動かしそうになったが――一呼吸置くと周囲を見渡した。


 ――モンスターは……いないね。

 安全を確認したセリニは手元に蒼球の弓を出現させる。


 ――出ないなら……それでいいけど。

 昨日の経験からある存在に対して警戒心を抱いていたセリニは覚悟を決めると宝箱に触れた。

 

 その途端――宝箱は独りでに――慌てた人物が急いで開いたかの如き急速な速度で開いた。


「――――」


 同時に宝箱の内側より水路に響くのは化け物の遠吠え――平行して宝箱には人歯を想起させる並びの牙が生え――上部の部分には目のような造形の水晶が形成された。

 宝箱に擬態していたモンスターは――待ちかねた獲物である銀髪の少女に文字通り数多の牙を向けるが――結果も向けるだけだ。

 それを示す冷静な言の葉が場を満たした。


「【弓術きゅうじゅつ鎧壊がいかい】」


 宝箱の擬態が解かれると同時に――発生した展開は昨日も経験しており想像の範囲内であったセリニは弓矢の準備をして終えていた――故にモンスターが攻撃を仕掛ける前に――潤朱うるみしゅに染まった矢が直撃する。


 ――効果……あり。

 自身が放った攻撃が当たると同時に怯んでエフェクトが掛かった場面を目撃しながらセリニは半歩後ろに下がりながら次の矢を番えると――追撃のスキルの名を言い放つ。


弓術きゅうじゅつ強撃きょうげき


 白き光に包まれた矢はモンスターに直撃――だが倒れない。


 ――そうだよね。

 この手のトラップモンスターは場にいるモンスターよりも強い――そんな印象があり、セリニは粛々と三回目の矢を放つと直撃する。


 ――そろそろ。

 四回目の矢を放つ事も考えたセリニであるが――反撃の一撃が飛んでくる可能性を考えて矢を手にして跳躍した刹那――宝箱のモンスターは高速で動くと牙で噛みついた。

 しかしその場には誰もいない――空振りとなった。


 ――早い。

 空中に身を預けていた故にその攻撃を回避したセリニだがモンスターの動きを一目見ると同時に警戒心を強める。


 ――ドレインスライムぐらいの速度。

 交戦中のモンスターは戦った事がある中ボスの域のステータスだと判断したからだ。

 

 ――別の敵と一緒だと……倒されるかもしれない。

 ――ここから一撃を加えて。

 戦いを長引かせると他のモンスターと同時に相手する可能性があると思ったセリニは空中で体勢を整えると真下に弓矢を構えて――冷静にスキルの名を口にする。


「【暗影流出・黒き浸透しんとう


 黒い影で覆われながら開放された矢は下方向に一直線に進むとモンスターに衝突。


 ――次は……。

 それで倒れると考えていなかったセリニはどう動くかと思案しながらモンスターの次の動きに目を向けたが――


「倒れてる」


 黒い粒子が晴れると同時に表わしたのは限界ぎりぎりまで大きく口を開けたような姿のモンスターであり、その姿のまま粒子となって消滅した。


「倒せた」


 着地しながら状況を語ったセリニ。


「HPはそこまで……高くなかったみたいだね」


 そう言いながらもセリニは脳裏で別の可能性を考えた。


 ――それとも……鎧壊がいかいの効果があったから……かな?

 通常のダメージを与えると同時に防御力を半減する効果を与える事がある。それがセリニが15レベルになった時に習得していたスキル【弓術きゅうじゅつ鎧壊がいかい】であった。

 その効果が発揮したことで先に倒したトラップモンスターの一種、ミミック・トレジャーを倒す時間を早めたのではとセリニは思えた。


 ――別のモンスターは……いない?

 しかしそれはそれとして勝利の安心感から来る油断はセリニに無く再び周りを見て警戒する。


「いないみたいだね」


 モンスターが大声を上げていたことから新たな敵が現れると警戒――及び期待をしていたセリニ。

 そんな彼女の耳に新たな情報が届いた。


 ――誰か……戦ってる?

 地下水路に響くのは衝撃音や何かが疾駆しっくする音――それは戦闘の余波で奏でられる音色であるとセリニは理解できた。


 ――当たり前……だよね。

 ここはオンラインゲームのフィールドである以上、他のプレイヤーが戦っているのは当然と思えたセリニは気にしないことにしたその刹那に目の前にパネルが表示される。

 それはドロップアイテムであり、どんなアイテムなのか口にした。


「【水中潜水の首飾り】」


 そしてセリニは効果を確認する。


「装備している間は【水中適応・潜水LV1】を付与……その効果は……水中に潜れる時間の増加……持ってるスキルと同じで……スキルと効果は重複する」


 自身が既に習得済みな能力で場所が限定される効果を付与する装飾品であると把握したセリニだが迷わずに装備する。その理由は今が使い時と理解していた為であり、その理由が解る場所の前まで歩んだ。


「潜るためにドロップアイテムとして手に入るんだよね……きっと」


 そう言い切ったセリニの眼前を覆うのは通路の間に流れる水路であった。

 目の前の見えるのは小規模だが――上で確認した中には湖と思える程の大規模な場所もあった。


 ――穏やかな……川と変わらないね。

 大樹から落下した後に起きた出来事によって初日から泳ぐ事となったセリニ。その経験から目の前で続いている流れは泳ぐことの妨げにならないと判断できた。


 ――ステータスも上がったから……楽しみ!

 レベルが上昇して以降泳ぐ機会がなかったセリニは今の状況を心から喜んでいた――しかしそんな銀髪の少女を妨害するように水流に逆らう微かな水飛沫が上がった。


「――もしかして」


 それを目にすると同時にツインファンタジーワールドで川を見たときから想像していたある可能性がセリニの脳裏に過ると同時に小規模な水飛沫が立ち上がる。


「!」


 驚いたセリニであるが――想像していたことと一致していた故に身体は動いて横に移動する。


「いるよね、この手のモンスターも!」


 戦える存在は基本的には歓迎であり、歓喜するセリニの右側を突き進んだ後に翻して対峙するのは牙を生やして、人のような瞳を持つ灰色の魚型モンスター――カーヌス・ピスキスであり、その大きさは人が両手で抱える程の大きさであった。

 しかし少女が最も驚いたのは別の事態であった。


「空中を……浮いてる」


 地上に飛び出したが現実のように地に屈せずに泳ぐように空中を漂っていた――それはそのまま戦闘を継続可能である示唆しており、再び突撃をする構えを見せたが――それと並行するのは弓矢を構えたセリニによるスキルを宣告する声だった。


弓術きゅうじゅつ拡射かくしゃ


 白く光る矢が放たれると同時に複数に分裂――数多の矢に刺されたカーヌス・ピスキスは力尽きるように地べたに放り出されるとそのまま粒子となって消え失せた。


「魚だけど、捕まえることは出来ないんだね」


 アイテムとして保有できるお馴染みの存在な為に少々残念に思えたセリニの前にパネルが出現、そこにはドロップアイテムの名が書いてあった」


「魚の切り身……ルプスもそうだけどモンスターは食べれるんだ」


 ルプスからはドロップアイテムとして肉を既に入手していたセリニはそんな所感を抱きながらパネルを消すと改めるように目の前の水路に目を向ける。


「――モンスターがいる水中」


 初日に泳いだ川とは異なる全く異なる環境だと把握したセリニ。


 ――入る前に……出てきてくれて……良かった。

 しかしセリニの考えは変わらない――寧ろ事前にモンスターが現れてくれことは銀髪の少女への積極的なアプローチとなった。


「他にはどんなモンスターがいるかな!」


 カーヌス・ピスキス以外の敵がどのような者なのか考えるだけでも楽しくなったセリニは全身の血を騒がせながら弓を手にする。


 ――水面に出るときは……気をつけないと。

 モンスター以外にも()()()()()()()()があると自身に注意しながらセリニは跳躍すると――そのまま水路への潜水を開始した。


 ハイテンションであった銀髪の少女であったが――実のところ、それを狙う地上のモンスターが数多にいた。

 然れどそれらは気づかれずに消え去っていた――それは自然現象でもゲーム的な都合でもあらず――もう一人のプレイヤーによる介入の結果であった。


 ――またやらかした。

 数秒前まで銀髪の弓使いが立っていた場所に現れるのは民族風の衣服と髪色を鼈甲色にしてショートカットに切り揃えた少女、シャールであった。


 ――話を邪魔されたくないから殲滅して。

 ――タイミングを見計らって話そうとしたのに。

 シャールは銀髪の弓使いに興味があり、その為に周囲のモンスターを葬っていた。


「まさか水中に潜るなんて、大胆」


 だが次に起こした行動は完全に想定の外側であり、見たと同時に目を見開いていた。

 

「追うわけには、そもそも追えないか」


 ある理由から追跡を断念することにしたシャールはこれからどうするべきか考え始める。

 なのだがそれを妨害するためのようにスケルトンやマウスが広場に姿を見せるが――少女はそれを見ると笑みを浮かべると撫でるような優しい声を場に響かせながら手元に持っていた短剣を振る。


「そのまま暴れ狂って――シュヴァル」


 口から出される言葉の羅列は敵意を向けるもの――しかし相手は言葉が通じぬモンスター。

 故に物怖じせずに突き進み始めるが――突如の騒音を伴う凄まじい速度で現れた闖入者の突撃によって蹴散らされ――瞬く間に広場に残るのはシャールだけとなった。


「やっぱり、シュヴァルの攻撃力だけで一撃」


 得心を得た口調でそう言ったシャールは歩み始める。


「一度上に戻って、マウスかスケルトンの依頼がないか確かめようかな」


 成すべきことを決めたシャールに迷いなく――地下水路の出入り口に向かった矢先――騒音が耳に届いて振り返る。


 ――随分と派手に。

 目の先で起きていたのは水柱――それの発端の予想はシャールからすると簡単なことだ。


 ――銀髪の弓使いとなら、あの場所にも。

 それを聞くと同時にある見込みが脳裏に過ぎながらシャールは歩み――ダンジョンから立ち去った。

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