第96話 銀髪弓使いのダンジョン探索 その5
「あ……そういえば」
黒き霞を見届けるとと同時にふっと思い出した色合いの声を出したセリニは――その数秒後に後悔の感情を滲ませる。
――折角……すぐに街に戻れる場所で……魔法を使えるモンスターと一対一で戦えた……あのスキルのデメリットがどんなのなのか試すチャンスだったのに。
何時起こるか分からない一縷の機会を不意にしてしまったことを自覚した為であった。
「次……いつ」
そう考えている間に耳に届くのはスケルトンが現れた音であり、セリニはそちらに目を向ける。
「弓矢持ち!」
現れた個体の武器は自身と同じであらゆる部品が骨にて構成されていた。
それを見て喜びの声をセリニは出した――その訳はスキルの発動機会を与えてくれる武器を所持していた為だ。
――けど……二体。
しかし数は複数――単なる攻撃スキルを試すのならば敵《的》が多いと喜んだセリニであったが今使いたいスキルはそんなシンプルなスキルではない。
だが状況は解決が困難な複雑怪奇なものではない――単純なことをすればいいとした銀髪の少女は動くと、刹那にスケルトンに接近する。
――上だと……。
――どうなるかな!
それと同時にあることも試そうと思案したセリニは弓を振り上げ――鋭利な勢いでスキルの名を口にする。
「【暗影変異・黒之鋭刃】」
弓全体を覆うは鋭き黒で染まる影の刃――形成されたと同時にセリニは振り下ろし――その軌跡に存在したスケルトンは縦に両断される。
――上でも……倒せる。
切り裂かれたスケルトンは粒子となって消失――確認したセリニは振り下ろす斬撃でも確実に倒せると確信した。
「――」
粒子が消失すると同時に隣に立つスケルトンの矢が放たれた――それを一瞥したセリニは弓を薙いで払うとスケルトンを目にしたままバックステップで距離を取る。
――こういうのも……楽しいね。
相手を目にしながら後ろに下がるのも面白いとセリニは感じる合間に第二の矢を放ったスケルトン――それに対抗するように銀髪の弓使いも矢を放ち――鏃同士が空中で到達すると互いを霧散させる。
「――」
その間に蒼い弓に新たな矢を番えるセリニだが――途中で止まる。
――一体は残さないと!
反射的に倒そうと思った自身にツッコミを入れながら構えを解いたセリニに向けて放たれるのはスケルトンの矢。
「……」
自身に向かって突き進む凶矢を確認したセリニは――弓を前に向けると同時に淡々とスキルの名を口にした。
「【蒼球吸壁】」
蒼色の弓を介して銀髪の少女を包み込むように展開されるのは蒼色で塗られた粘着質な球体。
突然展開された蒼の球体に突き刺さるのは一本の矢――しかしその勢いが停止する。
そして矢は蒼い粒子となると――蒼い球体の中心に立っているセリニの身体に入り込んだ。
「命喰禍爪……と似た感じ……だね」
皮膚からものを喰らう感覚を唐突に味わったセリニは独り言を零した。
――もう一回……矢を……。
それと同時に数秒前に起こしたことの再度しようとするが――スケルトンとは別の音が聞こえるとそれは迫ってきていた。
――遠距離攻撃じゃないなら……意味ない。
現在展開しているスキルで対処出来ないモンスターが出現したことを察したと同時にセリニは弓を振る――すると蒼き球体は瞬く間に弓の中に吸収されるが残滓の様に蒼い粒子が弓を覆う。
「どの……」
弓を放つスケルトンよりも先に接近するモンスターを倒すと決めていたセリニの視界に現わすのは一匹の鼠であった。
「一体なら……すぐに」
そう言いながら飛びかかって鼠を避けたセリニは倒そうと弓に力を入れると――弓からいつも以上の力を感じとる。
――蒼球吸壁の効果。
その大元が先に使用して効果を発揮したスキルであるとその効果の詳細を知るセリニは判断しながら弓を振るとその軌跡の先にいる鼠に直撃したその瞬間――蒼い粒子が弾ける。
「一度で……二回攻撃」
弓から伝わる感覚をセリニが呟いた最中に鼠は吹き飛ばされながら粒子となって消滅した。
「――一撃」
攻撃力も重点的に上げているがスケルトンとは異なり、一回の攻撃で倒せると考えていなかったセリニは驚いた。
――スキルで威力上がってる。
その理由を推測したセリニだがまだ他の敵がいる為にそちらに目を向けると――三体の姿が目に入る。
――一体……だったよね。
――分裂……増援?
数の増幅は想定外なセリニ――しかし戦って感じた事を下敷きとしてある推測が脳裏に現れる。
――HPが低いけど……数が多いモンスター?
復活こそ許しているが出会ってからあっという間に倒している事もあってそんな傾向があると考えたセリニは増援のスケルトンの得物を見る。
「全部弓矢」
すると揃いも揃って銀髪の少女を含めて同じ武器であった。
それにセリニが気づいた傍らにて三体のスケルトンは同時に矢を構える。
「……」
瞬時に気づいたセリニは――鏡写しの如く弓矢を番えた。
――できるかな。
構えを見た以上――矢を動いて避けるのはセリニにとって容易い。
――やってみたい
しかし三体から矢を向けられる現状となった瞬間にしたいことが脳裏に浮かんだセリニはその場で停止して速やかに弓矢を構える選択した最中に――三体のスケルトンはほぼ同時に骨の矢を放つ。
「――――!」
極限まで集中したセリニは標的を捉えると矢を射る。
矢継ぎ早に三回繰り返したことで放たれるのは三本の矢――その軌道の先に同数の骨の矢が駆け――衝突――六本の矢は塵となって消え去った。
「やった!」
飛来する一つの矢を撃ち落とすことに慣れてきた故に複数の矢を一気に撃ち落としたい――三本の矢を向けられた状況下から即興で浮かんだそんな願望を叶えられたセリニは笑みを浮かべながら喜びの声を出すと更なる行動に移った。
対してスケルトンは何も変わらない――三体による同時攻撃が同じ攻撃によって防がれた所で――するべき事は先と変わらない同じ動作だ。
各々が再び矢を手元に出現させるのだが彼の者にその先はない――それを示すのは上から聞こえる攻撃の合図。
「【弓術・拡射】」
跳躍しながら接近していたセリニから放たれた一矢は白く輝きながら分裂――数多の矢となってスケルトン達に降り注いだ。
一体のスケルトンは頭部に直撃すると粒子となって消滅――一体のスケルトンは胴体に当たると砕け散って地に落ちるが――着地した銀髪の少女が履いていた靴に潰されると粉砕されて跡形も無くなる。
――ジャンプして……潰して……倒す……あのゲームみたい。
今も時々遊んでいるあるゲームのことを思い出したセリニは自身の身体でそれを出来たことを面白いと感じたが――それは刹那の間だけ――すぐ近くにスキルを受けながらも倒れていないスケルトンが残っていた。
――隙だらけ。
――あれで倒せる。
だがスケルトンがしているのは弓矢の準備であった。
それを見て同じ武器を得物とする者として呆れたセリニだが――空いた手を向けながら冷ややかな色合いでスキルを口にする。
「【暗影変異・命喰禍爪】」
影が織り成す鋭利な爪が生えた黒き手の一撃を受けたスケルトンの総体が霧散――同時に黒に塗り替えられるとそのまま銀髪の少女の身体に取り込まれる。
「骨だけど……他と同じ感触で……硬くないね」
黒き手が霧散して普通の手に戻る場面を目にしながらセリニは――そんな独り言を零していた。




