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第95話 銀髪弓使いのダンジョン探索 その4

「やっぱり……上から見た景色とは違う」


 数歩進めば出入り口に引き返せる場所で足を止めていたセリニは全域に響き渡る水の音を聞きながら周囲を見渡していた。

 通路は舗装された鉄で作られており、人工的な雰囲気であった。


「上は……洞窟と同じ」


 だが降りる最中に視線に入っていなかった天井は自然物である岩肌で形成されている。


 ――光る岩が混ざって……明かりの変わりに?

 天井から輝きは地下全域に行き届いており、暗さとは縁が切れた空間を生み出していた。


「ちゃんと……」


 続いて螺旋階段から下りている間に気づき――自身が受けた依頼にも関わりそうな要素に目を向けようとしたセリニに届くのは日常では聞かない音が混ざった歩行音。


「!」


 それは人か織り成す音で無いと瞬時に判断したセリニは弓に意識を向けながら振り向いた。


「――」


 セリニの前に立っていたのは――皮膚と肉と内蔵が全て削ぎ落とされて骨だけで形成され瞳の部分が微かに輝かせながら動く人体――スケルトンであった。


「!」


 それを見て軽く驚くセリニだが即座に抑えられる。


「現れるよね!」


 スケルトンはRPGでは定番モンスターで地下に現れるのが基本なこともあってセリニが続いて感じるのは歓喜な感情。


 ――二体。

 現れた数を把握したその刹那に剣を持っていた個体が近づき始めたが――それよりも速く動いて接近したセリニは弓本体を振り抜いて攻撃を仕掛けると頭部に直撃し全身の骨が一気に砕け散ると()()()()()()()()()()


 ――次。

 それを確認しながらセリニはもう一体のスケルトンに目を向ける。

 その得物は杖で構える動きを見せるが――それとほぼ同時に放たれた矢が胴体に直撃するとバラバラとなって()()()()()


「こんな感じになるよね」


 あっさりと戦闘を終えたセリニであるがそうなる可能性は事前に知っていた。


 ――ゴブリンより……少し弱いモンスターが生息してる……本当だったみたい。

 現在のセリニが探索を開始したダンジョンのモンスターの強さは街の周囲に出現するモンスターよりも強いが川を隔てた先にいるモンスターよりは弱い。

 その情報をアルーセから受け取っており、先の戦いの結果は当然の流れだと受けて止めていた最中に――新たな物音が届いた。


「新しいモンスター」


 目の先にあった通路から姿を現わすのは灰色の鼠。

 そのサイズは自転車ぐらいで非現実的な大きさであった。

 その造形が普通の鼠であったのならば悲鳴が上がっても不思議でもないが――デフォルトとファンタジーな色味が重ねられたことでチャーミングな見た目となっていた。それを見た途端にセリニは脊髄反射な勢いで「か……可愛い」と愚直な感想を声にした。


「でも……敵だよね」


 それはそれとして倒すべきモンスターだと認識していたセリニは思考を切り替える。


 ――一体だけ……なら。

 相手の数を確認したセリニは余裕を感じてどう倒すべきか考え始めたその矢先――耳に乗るのはカタカタとした音色。


「!」


 その音に聞き覚えがあったセリニは瞬間的に何なのか把握する。


 ――すぐに倒さないと!

 それと同時に鼠を即時に対処することを決めながら跳躍。

 敵がいることに気づいていない鼠の前にセリニが到着すると同時に――スキルを冷たい色合いで口にする。


「【暗影流出・黒き浸透しんとう】」


 暗影の髪飾りを通してセリニの内側より現れた黒い影に包まれながら振り下ろされた弓は鼠に直撃――その身体は瞬く間に粒子となって霧散した。


「もう一体」


 しかしそれで終わりでないと把握していたセリニの視線の先には――スケルトンが杖を構えた姿であった。


 ――あの位置。

 それが出現した場所を見てセリニが疑問を感じた最中。


「――――」


 スケルトンの口からからからと音が鳴り――その声は力を感じさせる――それに呼応するように地面に光が発生して陣が描かれ始めた。

 それが何を意味するのか手に持つ得物から把握していたセリニは声を零した。


「【瞬迅】」

 

 言うと同時に姿を消したセリニが再度姿を見せるのはスケルトンの正面――現れると同時に蹴りを放つ――然れど頭蓋を破壊する一撃は蹴りであらず――靴先より現れた鋭利な刃。

 両断された頭蓋が宙を舞うと同時に自立していた骨は粒子となって消え去った。


「倒せたね」


 体勢を戻して仕込み刃を収納しながら事の確認をしたセリニは周囲を見て一息ついた後に――溜めていた疑問を零した。


「今の……一度破壊した個体?」


 今倒したモンスターが立っていた場所は矢で倒したスケルトンが立っていた地点とセリニは記憶していた。


 ――矢を放った……後は……。

 全てのスケルトンを倒したと思った時の記憶を脳裏で再生したセリニ――すると一体目のスケルトンと二体目のスケルトンでは倒した時の挙動が違うことに気づいた。


 ――弓で頭蓋を直接攻撃したスケルトンは……すぐに粒子になったけど。

 ――矢で胴体を撃ち抜いた個体は倒れただけで……粒子になっていない。


「つまり」


 その違いから推測するとある可能性を脳裏に現れたセリニの耳に届くのは――スケルトンの歩行音。


 ――ちょうど……いいね。

 それは現在のセリニにとっての福音であり、聞こえた刹那に銀髪の少女は思わず笑みを零した。

 それが鳴った方向に身体を向けると視界に入り込むのは二体の獲物(スケルトン)


「――」


 見た刹那動いていたセリニは瞬く間に接近すると一体のスケルトンの胴体に蹴りを――もう一体のスケルトンの頭蓋には矢を撃ち込んだ。


 ――どうなるかな?

 自身の推測を思い浮かべながら二体のモンスターの様子を見るセリニ。

 胴体に蹴りを放ったスケルトンはバラバラになりながら地に落ち――頭蓋に矢を撃ち込んだスケルトンは――粒子となって場から消え去った。


「やっぱり」


 そう言いながらバラバラになったスケルトンから半歩下がって様子を見たセリニの目前にて変化が起きる。


 ――頭蓋を壊さないと復活する?

 バラバラになったスケルトンだった骨達は蠢く虫の如く動き始めながら揺らぐ光を放つと同時に結合を開始する。


 ――復活するみたい。

 ――HPバーが無いから……気づけなかった。

 その様子を見たセリニは倒した筈のスケルトンが再び敵対行動をとった原理を把握する。

 その傍らで――スケルトンは復活――しない。


 ――光っている間に攻撃しても……倒せる。

 ――覚えて……おこうかな。

 復活する最中にセリニは淡々と矢を放っており、その一撃を受けると同時に骨は光と共に霧散して粒子に変化していた。


 ――衝撃を放つ攻撃だったら。

 それを見ながら自身が使える別の攻撃手段だとどうなるのか気になっていたセリニの前にある通路から出現するのは――歩行する一体のスケルトン。

 それを見るや銀髪の少女は瞬時に弓矢を番えると冷徹な色合いで発動させるスキルの名を表わした。


「暗影流出・黒き浸透しんとう


 黒き影に覆われた矢は弓から解放されると同時にスケルトンの胴体に直撃、一弾指に起きた黒き衝撃波で全身の骨が砕け散る。

 後に残る残滓は――黒き粒子だけであった。


「範囲攻撃できるスキルなら……胴体狙いで大丈夫だね」


 その光景を見終えたセリニは心底楽しそうな様子で――眼前で起きた結果を口にした。

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