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第92話 銀髪弓使いは劇中作から

「不死を穿つものだけど」


 アルーセが語るは話の主題――聞くと同時に先までの話の流れは完全に無関係への方向に逸れていたと察したセリニは紡がれる言葉に集中する。


「ツインファンタジーワールドに登場することはないと思うわ」


 その色合いは自信で満ちあふれていると聞いたセリニは感じ取る。


「そ……そうなのですか」


 にかわに自ら話題を振った事もあってアルーセは信じている側なのでは? そう考えていたセリニは驚いた。


 ――わたしは……よく分からないです。

 対してセリニは先にその存在を知ったばかりな為に答えを出せない――曖昧なことを口にするのは駄目だと思う最中にアルーセはその話した理由を明かした。


「不死を穿つものは――物語の登場人物なだけだと感じるのよね、わたしは」


「物語……ですか」


 アルーセの言い分の意図を読めないセリニは困惑する。


 ――物語……ここは……物語の世界……ですよね。

 ――どういう……こと……でしょうか?

 現在自分達、そして他のプレイヤーを含めている場所はゲーム空間――アルーセが口にした世界そのものだと見解したセリニ。


「物語だけど……ツインファンタジーワールドの事じゃないわ」


 そんな少女の思考を読み取る言い回しをしたアルーセは――自身が何を言いたいのか語り始めた。


「ツインファンタジーワールドの中にある本に書かれた物語の事――劇中作よ」


「そのことですか」


 聞こえたそれはゲームを遊んでいる中で自然と知った要素である故にセリニはあっさりと理解しながら頭に過ったことをアルーセに向けた。


「タイトルとか……あるのですか?」


「『存在しない物語』――それがタイトル」


「変わったタイトルですね」


 感じたことを直球で口にしたセリニにアルーセは微笑みで応じる。


「変わったところはそれだけじゃないわ」


 別の部位にも秘密が隠されている物言いと思ったセリニはそれに反応した。


「他にも……変わった点……あるのですか?」


 セリニの問いに頷くとアルーセは自ずと語り出した。


「その本が置いてあった場所が特殊な場所だったのよ」


 ――特殊な……場所……ゲームが舞台らしいですね。

 その本が置かれている場所を想像すると愉しく思えたセリニにアルーセはその地点の名を口にする。


「図書の館」


 ――図書館……みたいな……場所ですか?

 現実にある建物の名を思い出すセリニを尻目にアルーセは言葉を続ける。


「その建物の絡繰り仕掛けを解いた先に現れる隠し部屋よ」


「隠し部屋……あるんですね」


 普通では見えないが条件を満たすと入る事が可能となる個室――ゲームではお馴染みの要素の為にすぐに受け入れたセリニ。


 ――どう見つけるんだろう。

 その発見方法が気になったセリニにアルーセは声を向ける。


「肝心な『存在しない物語』の内容だけど掻い摘んで言うと、不死を穿つものの物語よ」


「不死を穿つものの……どんな物語なのですか?」


 気にはなったが心が惹かれるまでではないセリニはとりあえずアルーセに尋ねた。


「――世界そのものを敵にした不死を穿つものが憑き人を倒し尽くす物語よ」


「え――」


 物語の中であるといえども――自身と同じ存在が葬られるその内容に知った刹那にセリニは底知れない寒気を感じる。


「その……不死を穿つものの……目的は……」


 とは言え――そういったことをする者達には何らかの特別な事情があると思ったセリニはアルーセに聞いた。


「それが心境とかの文……細かい所もだけど、黒線が引かれたり、空白があって読めないのよ」


 ――あえて……秘密に?

 ――そもそも……考えていない?

 それを聞いて色々と思うところがあったセリニにアルーセは別の事を口にする。


「目的なのか分からないけど、憑き人以外にも狙っている敵……宿敵がいると書いていたわ」


「どんな名前ですか?」


 不死を穿つものが織り成す物語に少し興味を感じたセリニの言葉にアルーセは敵の名を口にする。


「宿敵の名は停滞の刹那よ――不死を穿つものもそうだけど、物語とはいっても随分と抽象的な名前だわ」


 言ったそばから呆れ返る様子を見せるアルーセであったが――その名を聞いた刹那にセリニは目を見開いていた。

 

 ――停滞の……刹那……。

 ――え……それって……。

 その理由は――アルーセが明かした不死を穿つものの宿敵の名にセリニ――ではなく月影としてゲーム空間に存在していた間に聞き覚えがあった為だ。


 ――LODCさんが……言ってた。

 ツインファンタジーワールドが遊べるゲームハードNEW WORLD2。それのオンラインモードを初めて起動した時の場面で声のみであるが遭遇した謎の存在――LODCが独りで語り続けていた言葉の羅列に『停滞の刹那』が含まれていたとセリニは明確に覚えている。

 

 ――けど……うん……。

 ――多分……きっと偶然……そうだよ……ね。

 しかし今遊んでいるゲームとLODCは全くの無縁であるとセリニは思っていた。


 ――だけど……なんで……なんだろう?

 だが同時に――どうしてなのか偶然の一言で済ませては駄目だと思ったセリニはある決心をすると同時にアルーセにあることを尋ね始めた。


 ※     ※    ※     ※


「停滞の刹那――LODCさんが言っていたのは……偶然なのかな」


 思い返しを一時的に止めたセリニは是が非でも気になる単語を口にして――それは周囲に反響した音色を感じながら少し前に起きたことを脳裏に張り巡らす。


 ――あの時は……尋ねて。

 停滞の刹那がどうしても頭から離れないセリニは――LODCと関わっているのかは不透明と思っており、その事は言わずにアルーセに隠し部屋に関して聞いていた。


 ――色々とあったけど。

 その後色々と話した後にアルーセと分かれてヘイス・ピュルゴスから出ると本来の目的地に向かう前に寄り道で図書の館に向かっていた――その目的は存在しない物語を自身の目で読む為である。

 塔から出た直後に自身のある変化が発端となったと思われることに驚きを感じながらも図書の館に入ったセリニだが――更に驚いた。


 ――リーザロッテさんと出会って。

 図書の館にはセリニのフレンドが滞在していた。


 ――一緒に……捜索してくれました。

 互いに気づいたために挨拶して言葉を交わす最中にセリニは自身が図書の館に訪れた理由を語った。

 するとリーザロッテも気になったと言って隠し部屋を探すのを協力してくれた。


 ――ヒントを……頼りに。

 図書の館の隠し部屋が何処にあるのか、絡繰り仕掛けの解き方は直接は教えてくれなかったアルーセであるが「現実では消えないけど、ゲームでは消える、けどゲームでも消えなくなった物をある凹みに填め込むと部屋が現れる」と手がかりだけは教えてもらい、それをセリニはリーザロッテにも伝えて探した結果。


 ――隠し部屋を……見つけられました。

 仕掛けと仕掛けを解く鍵に当たる調度品を凹みに填め込んで目的地を発見できたセリニとリーザロッテは早速存在しない物語を探したのだが――


 ――無かったんだよね。

 しかしセリニ達は掲載された本を見つけることはできなかった。


 ――言われたとおり……だったけど。

 然れどもそれはアルーセが事前に予想していたことでもあった。


 ――図書の館に置かれている本は……日によって変わるみたい。

 今日初めて知ったセリニは決して気づけないが何日も通っているアルーセはそれを知っていた。

 その入れ替わりは隠し部屋に置かれている本も対象であるとの事。


 ――アルーセさんは……存在しない物語は一度しか見たことがないとか……言ってた。

 そういった情報を事前に知らされている故に直接見られないと知ったと同時に本来の目的地に向かう心持ちとなったセリニは隠し部屋の本に興味津々なリーザロッテと別れると現在の地点に繋がる場所に向かって今に至る。


「どうして……停滞の刹那のことが……気になるのかな」


 今日は探すのは無理だと心は理解している筈なのに心に引っかかり続けていると自覚しているセリニであったが――視界の先に変化が現れたことに気づくとそちらに意識が向いた。


「到着……なのかな?」

 

 その先が目的の場所なのか確証こそないセリニであったが場の変化は起きるのは間違いないとして――階段を歩み続けた。

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