第91話 銀髪弓使いはサービス終了から
「不死だから何度でも蘇る」
自身が言った言葉の羅列を意味深長な色合いで言い放ったアルーセ――耳に届いた途端にその事実を察したセリニ。
――だ……大丈夫……ですよね。
自身が何か駄目なことを言ってしまった。そう考え込みそうになったセリニであったが――明るいアルーセの声が届いたことで中断される。
「とりあえず座りましょう」
日常会話な色合いでそう話したアルーセは椅子に座る。
「は……はい」
それを聞いたセリニも対面の位置にある椅子に座ると同時に会話を再開した。
「不死を阻止する方法があるらしいわよ」
しかし聞こえた内容はセリニからすると想定外で驚きを誘発させるものであった。
「不死を……あ……あるんですか!」
それを声として表わしたセリニにアルーセはその方法を明かした。
「不死を穿つもの……みたいよ」
「不死を……穿つ……ものですか」
――者じゃない……それとも……物?
聞いたセリニは驚きも感じながらも言葉の意味を推測する――だが同時に合点も感じた。
――不死を無効にするのは……お約束ですね。
無敵と思える能力に対する対抗手段の出現――それはゲームでの定式の一つで定番と今までの経験からセリニは理解する。
――けど……らしい……みたい……と言ってましたよね……。
――つまり……。
しかし細かい点に注目を向けるとある推測が可能であり、それが気になったセリニは尋ねた。
「あの……もしかして……言われているだけで……実際には確認できていないのですか?」
「そうよ」
自身の予想が当たったセリニであったがアルーセは「正確には記されているだけどね」と言葉を添える。
「記され……た」
言われた内容を口にした瞬間にセリニはアルーセが言いたいことを概ね理解する。
「もしかして……本に書かれて……いるのですか?」
少し前に知ったことが関わっているとセリニが指摘するとアルーセは応じる。
「ええそうよ、読める本に伝承として載っているわ」
不死を穿つものの現状を理解したセリニがアルーセに向けるのはその存在そのものに対する疑問であった。
「ですけど……不死を無効にするのは……その……何の意味が?」
アルーセからの返答は即座に返ってくる。
「それはわたしにも――きっと他のプレイヤーにも解らないわ」
「そ……そうですよね」
――言……言わなければ……よかった。
反射的に口にした自身の言動は――反省するべきなものだと独り考え始めたセリニに向けてアルーセは呆れた色合いで語る。
「とは言え――だからなのかみんなして好き勝手な予想をしているわ」
――気にしてない……みたい……ですね。
自身とは無関係なことを言っていることに気づいたセリニは落ち着きを取り戻した。
「――どんな予想ですか?」
他のプレイヤーが抱いた想像に興味を持ったセリニの言葉にアルーセは答える。
「色々とあるけど一番多いのはサービス終了するときに現れるね」
「え……ツインファンタジーワールドも……サービスを終了するんですか!」
それを聞いた刹那にセリニは驚嘆を露わにする。
何せ月影が爽陽と同じVRMMOを同時期に遊べない発端が別のVRMMOのサービスが終了するからであり――聞こえたそれが他人事とは思えなかった為であった。
「違うわ、サービス終了すると仮定した場合よ」
「そ……そうですか」
自身が勘違いしただけと気づいたセリニであるが――それはそれで疑問が生じる。
「あの……どうして……仮定するのがサービス終了なのですか?」
どう考えれば話がその流れになるのか想起できなかったセリニにアルーセはその理由を語る。
「サービス終了する寸前のイベントで不死を穿つものが現れて、プレイヤーである憑き人を襲来して不死を無効にしてゲームからプレイヤーを弾き出す。
そんな予想よ――勿論プレイヤーによる想像だから、実際にそうなるのか……そもそもゲームの中で登場するのかさえ解らないわ」
――不死が絶たれるから……プレイヤーキャラはゲーム世界で死亡扱いになって。
――ゲームにログインできなくなる……そういうこと……ですね。
――サービス終了して……どの道……ゲームを遊べなくなるからできる……イベント。
届いた話しの内容を自身なりに纏めたセリニは――感じた所感をアルーセに伝える。
「その……何というか……想像上ですけど……物騒ですね」
ゲーム内のイベントと雖も理不尽に思えたセリニは感情が沸かずに淡々としか捉えられなかった。
「そうね」
その感想に同意を向けたアルーセだが「けど実際にサービス終了日にその世界を破滅させるイベントを遂行したオンラインゲームもあったらしいわ」とセリニに話した。
「――ゲームにも……色々とあるんですね」
それがどういったゲームなのか全然知らないために細かい部分は聞かないことにしたセリニにアルーセは別のゲームのことを話し始めた。
「とはいってVRMMOでも――不死殺しから想像した仕様が本当に実装されるゲームが発売予定だけどね」
「? どういう……ゲームですか?」
突如言われたこともあって一切の想像ができなかったセリニはアルーセに聞いた。
「戦乱の時代を生き残るゲームでVRMMO専用よ、最大の特徴は一度死亡すると強制的に現実に戻されて二度とログインできなくなる。ゲームの中では完全に死んだ扱いってこと」
「え……でしたら……つまり……一度倒れたら二度と遊べないソフト……そんなゲームですか」
聞いた話を丸呑みしたセリニはそこまで極端なゲームを聞いた事がない故に驚きで満たされたが「少し違うわ」と少々気まずい様子となったアルーセは続きを語る。
「死亡してログイン不可能になるのはそのシーズンだけ、新しいシーズンが始まったら、またログインして参加できる」
「そう……ですよね」
ゲームソフトが一度遊ぶだけで使用不可となる消耗品――それはあり得ないと思えていたセリニはアルーセの話に納得できた。
「そうは言っても一つのシーズンは一ヶ月掛かるらしいわ」
さらりとセリニからするととんでもない情報を明かしたアルーセ。
「い……一ヶ月……」
ゲームを長時間遊ぶのが当たり前と考えているセリニであるが――一回遊ぶのにそこまでの期間を使うとは思っていない為に狼狽してしまうが――
――もしかして……あれを……。
VRゲーム専用ゲーム機であるNEW WORLD2の機能の一つを使えばそれは苦でもないと考えついたセリニはその機能の名を口にする。
「あの……ステイシス・ワールドを使用することを前提とした……ゲームなのですか」
ゲーム世界の時間を停滞させてゲーム時間を伸ばすことを可能とする機能の名をセリニは口にするとアルーセは頷いた。
「そうよ、シーズンが開始される前にログインして、ゲームが開始されると同時にステイシス・ワールドが発動みたい――だからゲームの中で眠って、その間に襲撃されてゲームから退場、そんな事態も発生するみたいよ」
「それなら……大丈夫そうですね」
ゲーム機の機能を活用すれば、遊び方が広まる。それに心がときめいたセリニは気になった根本的な部分を尋ねた。
「それで……ゲームタイトルは……発表されているのでしょうか?」
するとアルーセは即時に答える。
「エターナル・ジェネシスよ」
聞いたと同時にその意味を読み取れたセリニは「らしい……タイトルですね」と印象を口にする。
「ええ、それとだけど国ごとに分けられているツインファンタジーワールドと違って全世界のプレイヤーと同じサーバーで遊べるオンラインゲームよ」
「そうなのですか」
――全世界……他の国の……人……。
その情報を知ったと同時にあることが脳裏を過る。
自身はツインファンタジーワールドを遊び尽くすと決めているために無関係だと思えたセリニであるがそれはそれとしても途轍もなく気がかりな事があり――独り言ちる。
「言葉……伝わるのかな」
他の国とは言語の壁があると思えたセリニ。
他の国の人から何かを尋ねられた経験は一度も無いが――そうなったらどう対応すればいいのか――知らない国の言葉が聞こえたらどうすればいいのか――想像するだけで寒気を感じている月影。
現実での問題がそのままゲームにも影響を及ぼすと考え始めるとゲームを遊ぶどころの話ではないと思い始めた少女にアルーセは言葉を向ける。
「自動で翻訳されるから問題ないわよ」
「え……翻訳……できるんですか」
「ええ、相手に伝えたい漢字の読みを伝えられる機能あるでしょ」
「は……はい……ありますね」
言われた機能の有用性は十分に感じているセリニは――アルーセが話したいことを解する。
「他の国の言葉も……分かるように解読されて伝わるのですか?」
「そのようね、インターネットにそれを実践する動画が公式にあるわ」
「それほどまで……すごいですね」
そこまでのことが可能な機能だったとは思ってもいなかったセリニは絶賛の言葉を口にする。
――そういえば。
それを知ったと同時に今遊んでいるゲームソフトに関して思うところをセリニは感じた。
――ツインファンタジーワールドは……別の国の人とは……遊べないのですね。
しかし思ったことを口にしなくていいと思えたセリニは――届いたアルーセの言葉に耳を傾けることにした。
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