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第83話 銀髪弓使いは視線から

「これで……いいかな」


 座り込みながらポイントを振るのを終えたセリニはあらためるように目の前に浮かぶパネルに目を通した。


プレイヤー名 セリニ


Lv17


HP30(-10) MP206(+20)


攻撃力【70(+40)】 


防御力【0(0)】 


攻撃魔力【0】


回復魔力【0】


器用力【37(+5)】 


疾走力【90(+14)】


技巧力【0(+20)』


装備品


武器


右手【蒼球そうきゅうの弓】


左手【蒼球の矢】


鏃【通常鏃】


仕込み武装

右足【鉄の短剣+1】


左足【鉄の短剣+2】


防衣


頭【始まりの狩人帽子】【表示】


体【始まりの狩人フード】


腕【始まりの狩人手袋】


靴【ゴブリンの靴】


見た目装備【有効】


装飾品


【暗影の髪飾り】【装備無し】

【装備無し】【装備無し】


武器スキル

【弓術・強撃きょうげき】【弓術・貫穿かんせん

【弓術・拡射かくしゃ】【弓術・鎧壊がいかい】【仕込み短剣・脚部きゃくぶ


戦闘・アクティブスキル

瞬迅しゅんじんLv1】


戦闘・パッシブスキル

【探知軽減Lv1】【消音攻撃Lv1】【特化強化とっかきょうか脚力きゃくりょくLv1】【MP回復・自動Lv1】


装備スキル


蒼球の弓【蒼球吸壁そうきゅうきゅうへき


鉄の短剣+1【攻撃時MP吸収】


鉄の短剣+2【攻撃時MP吸収】【MP自動回復】


暗影の髪飾り【暗影あんえいへの序開じょかい】 


探索スキル【水中適応・移動LV1】【水中適応・潜水LV1】

     【隠密採取Lv1】


技巧スキル【鏃作成Lv1】【魔鉱之鏃作成】


エクストラスキル【無取得】


イディオススキル【無取得】


融合スキル【無取得】


契約【契約不可能】


「うん……大丈夫だね」


 自身のステータスを見たセリニは満足していた。


 ――技巧力が……20に。

 魔鉱之鏃作成を習得したことでステータスポイントが10追加されたことにセリニは注目する。


 ――いつか……戦闘に役に立つかな。

 そんな想像をしながら別のステータスを見る。


 ――攻撃力と疾走力……百を超えた。

 直接的な戦闘能力に関わる二つのステータスの数値が二日目で三桁となった事はセリニをとても楽しい気持ちとさせた――しかしその一方で懸念点もあった。


 ――HPと防御力……このままでいいのかな?

 リーザロッテと一緒に進んでいる間にゴブリンからドロップした装備によってちょっぴりステータスが上昇したがそれでも低いままであった。


 ――MPも二百になったから……これからはHPに振っても……。

 攻撃が当たった時のことも視野に入れたセリニだが――ふっと昨日の最後の戦いを思い返すとHPは最小。そしてMPは最大がいいのでは? と思案した。


 ――暗影のスキルのゲージが無くなったときのために……沢山あったほうがいいかな。

 ――スキルを使ってたら……どのみち体力無くなるから。

 ギガントスライム・アペイロンとの戦いはリーザロッテととの共闘――更に暗影あんえいへの序開じょかいを保有してなければ勝てなかったとセリニは断言できた。

 そしてこのスキルはゲージが尽きた後にも最大限に活用するとHPを消費して最終的には1となる。

 それならばHPは最初から無いものとして見切りを付けた方がいいと思えた。


 ――それに……やっぱり攻撃スキルも沢山使いたい。

 更に自身の戦い方は湯水のごとくMPを消費するものであり、暗影あんえいへの序開じょかい関係なしにMPは多量にあったほういいとセリニは自己分析した。


 ――もしもの時のあのスキルも……MPで発動するよね。

 条件を満たしていない故に使用した機会が一度もないスキルの使い勝手も大幅に向上することに気づいたセリニは今後のステータスの振り方を決める。


「今のまま……続けていいよね……」


 そう言いながら立ち上がったセリニ。


「とりあえ……」


 これからのことを考えだした途端に知らない男性の声がいきなり届いた。


「お嬢ちゃんがこんなところで何をしているんだい?」


 聞こえた色彩は攻撃的で喉太のどぶといもの。

 現実では直接的には聞くことはない――現実では決して関わりたくない――凶悪な面構えが刹那に脳裏に想起させるものであったこともあってセリニの感情は瞬く間に恐怖で塗り固められた後に――悲鳴となって表舞台に炸裂した。


「――――――――!!」


 その結果――言葉と解してはならない大音量の叫び声が一帯に響き渡った。


「!」


 そんな大声に最も反応したのは発信源であったセリニ自身であった。


 ――う……うるさすぎる……。

 自身の大声が耳を通じて身体の中に入り込んでいた。

 そしてそれは少しだけセリニの身体に負担を与えている。


 ――ほ……か……他の誰かに……聞こえ……。

 真っ先に思ったのは別のプレイヤーに迷惑になった可能性であった。

 しかしここは街の外れである故にそれはないとセリニは気づいたが――目の前に自身と違う人がいる時点で損害を与えている。


 ――よ……余計に……。

 その声は相手に嫌な感情を与えるものだと思いながらセリニは相手の様子を見る為に顔を上げる。


 目前に立つのは想像したとおり強面の男性で普段着を着て腰に剣を差していた。

 そしてその後ろには取り巻きの二人を立っており、短剣を持つ。

 相手側は一人でなく三人――そして凶器を保有する。

 そこまで想像していなかったセリニの絶望感はより深い拘泥こうでいに沈む――ことはない。

 ある理由から感情の波は落ち着いてなぎとなった。


 ――NPC……だったんだ。

 三人組の頭の上には白いマーカがあって人ではなかった。それに気づいた途端にこの状況はイベントだとセリニは解釈すると安心感を感じて深い息を吐いた。


 ――前振り……ないのかな?

 一気に落ち着いたセリニであったが――先までの恐怖の感情は本物でもあり、怖いと――何処かに逃げたいと感じていた。

 故に事前にイベントが発生すると告知してほしいと思った。


 ――NPCなら。

 ――誰にも迷惑かけないで……良かった。

 それと同時に一安心もしたセリニ。


 ――リアル感は……あるけど。

 とはいえ今のような状況を楽しみたい人がいるかもしれない。そう思っていたセリニに強面の男性の声が届いた。


「こんな場所にいるくらいなら俺達と遊ばないか?」


 そう言うとにやりとした笑みを浮かべる。

 相手がNPCと気づいているセリニだがその表情には嫌悪感を抱いた。


 ――NPC……だよね。

 識別するシステムが無ければ人であると誤認していたとセリニは感じる。

 その最中に強面の男性は剣を抜き放つ――それと同時にパネルが現れて二つの選択肢が現れる。


 一つは『抗う』二つ目は『自身はびとと名乗る』であった。


「戦えるんだね!」


 選択肢から戦闘可能であることを察したセリニは笑みを浮かべる。


 ――丁度いいね。

 今の状況は正に彼女が望んでいたもの――選択肢は決定したセリニは『抗う』のパネルに触れながら手元に弓を出現させる。

 パネルが消え去ると同時に強面の男性から怒りを向けられる。 


「このじょう……」


 何かを大声で言おうとするが――その先は届かない――潰される。

 言うよりも先にセリニが蹴りを入れて吹き飛ばした故に。


 ――戦闘開始して……大丈夫。

 パネルの選択を終えた途端にモンスターと戦闘するときの雰囲気になったことを察したセリニは咄嗟に動くことにした――本能的な挙動であったがそれは正解であった。


「あに……」


 プレイヤーが先制攻撃を仕掛けるのも想定済みなのか驚きの反応を見せる取り巻きの一人であったがそれも遮られた――直撃した矢によって。


「――」


 蹴りを終えた後に手早く矢を番えて放った結果をセリニは緊張した顔立ちで見ていた。


 ――モンスターと同じ感覚で……戦闘できる。

 VRMMOを始める前にゲームといえども人と対峙して戦えるのか不安であったセリニだが――迷えなく武器を向けられて安心していた。


 ――楽しいゲームだから……良かった。

 折角やり込もうと決めた以上はつまずく要素の消失はセリニにとって嬉しいものであった――そう感じる最中に残った一人が短剣で斬りかかるが横に移動して難なく避ける。


 ――他の二人も。

 それと同時に他の二人にも意識を向けたセリニだが――視界に拡がる光景を見て軽く驚いて声を出した。


「倒れてる」


 自身の攻撃を受けた二人は地べたに倒れ動く気配を感じない。


 ――さっきの攻撃でHPが無くなった。

 状況を察したセリニに向けて攻撃が飛んでくるが難なく避けると思考を続ける。


 ――そこまで強くない。

 ――雰囲気怖いけど……街で見るNPCと同じ感じの見た目だから……かな?

 あっさりと倒せた理由を想像したセリニ。


 ――なら……鎧壊がいかいは別の相手で。

 15レベルになったことで習得した弓矢のスキルを試しで使うことは断念したセリニだが――別のことを考え始めた。


 ――ここは街……街なら……終わった後に全快する。

 街に戻るとHPやMPが自動で回復することを利用しようとセリニは考えた。


 ――ゲージを空っぽに……。

 更にしたいことが脳裏を過ぎたセリニは心底楽しい気分に移行しそうになったその刹那――外的要因で身体を強張らせる。

 

 ――こっちじゃない。

 その理由は一対一で戦ってる男性ではない――上からだと気づいたセリニはその正体の憶測を立てる。


「誰かの……視線」


 ――一人じゃなくて……二人……かな?

 それは強いモンスターに見られた時の感覚に近いと直感で感じたセリニ。


 ――でもここは街……だよね。

 ――……どうして?

 疑問が浮かんだセリニだがそれを遮るように短剣が飛んできたが――弓を薙いで弾いた。


 ――短剣……取るんだ。

 投げた得物を拾いに向かう男性――その姿は隙だらけであった。


 ――わたしも気をつけないと。

 後に似たようなことをするかもしれないと思ったセリニは頭の片隅に置いておくことにした。


 ――とりあえず……倒そう。

 視線の正体を探るには敵が邪魔であり、排除すると決めたセリニはその場で跳躍――短剣を拾った男性に接近すると力を込めながら弓を振り下ろした。

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