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第82話 銀髪弓使いの二日目から

 その場所は燦々と輝く朝日に照らされるのは天に届く程に巨大な塔を中心とした街であった。

 太陽光に照らされた幅が広い街道には鎧やローブ、軍服や修道服等を着た数多の人々が往来して交流しており、賑わっていた。

 だがそこから外れた道は幅が狭く双方に建物が並ぶために影で覆われている。

 そんな路地裏の終着点の一つに砂と雑草が混在する広場があり――その端っこに座っているのは帽子を深く被り、紫色の衣服をその身に纏う少女であった。


「――――」


 ――何で……何だろう。

 ――わたしは……二日目のツインファンタジーワールドを。

 ――普通に……したいだけなのに……。

 声を出さずに気持ちが沈んで深い溜息を吐いていたセリニは数分前に発生した出来事を思い返した。


   ※    ※    ※     ※


 昨日と同じく休日であったセリニは朝から遊ぶべく早速ツインファンタジーワールドにログインした。

 昨日終えた場所がボスの部屋であったために始めた直後に選択肢が現れた。

 一つは街に戻ってゲームを始める。もう一つは終えた場所からの再開。

 選んだのは街に戻る。

 理由はアルーセとの約束であり、彼女の話を聞いて自身も入りたいと思ったミストフォロスに関わることを早々にこなす為であった。


 すると必然的に再開する場所となるのは街の中、しかしどの地点で開始となるのか表記されていない。

 そのことに気づいて不安を感じたセリニであったがそれは無為となって過ぎ去る。

 視界に映るのは既に見た街の光景――後ろから聞こえるのは噴水の音色。

 そこは自身の初期ステータスを決めたのちに降り立った地点であった。


 知っている場所であったために安心したセリニ――だが同時に別の緊張感が彼女を包み込んだ。

 その訳は周囲にいる沢山の人々の姿にあった。

 普通のゲームだったらNPCで済ませて普通に遊んでいた月影。

 しかし今遊んでいるのはオンラインゲームであり、周囲にいる人々の大半は現実と同じ人間であった。

 一日目で他のプレイヤーと話をしたり、共闘することでフレンドを得る。

 他者と関わるのが苦手ながらもそのような経験を既にしていた。

 なのだが――だからといって他の人との関わりに慣れた訳では全くない。


 とは言っても普通のプレイヤーとして無難に動いていれば陰キャで人見知りな自身のことなど誰も気にしないのでは? そんな希望的な観測をしたのだが――それは叶わないと刹那に判断した。

 セリニは周囲から視線を向けられていることに数瞬で気づいた為だ。

 それは二度目の経験であった。

 ゲームの世界に入った後に会遇かいぐうしたプレイヤーであるアーチャーと会話した後に感じたものである。


 しかしその時は自分を有名と評したアーチャーと不相応な自身が会話したことで発生したものだとセリニは思っていた。

 その為に自身の近くに誰かいるかと周りを見たが間近には誰もいなかった。


 よく分からない事態になったと当惑したセリニがした行動はとりあえずその場から離れるであり、目立たない格好にするためにパネルを操作して帽子を被りながら実行。

 そして人がいない場所を探すために街を走り回り、行き着いた先が――路地裏であった。


 ※     ※    ※    ※


 ――どうして……かな……。

 ゲームを再開したときの詳細を思い返したセリニが抱くのは困惑と恥ずかしさであった。


 ――わたし……目立つこと……してないよね。

 理由があるなら緊張感が拭えなくても納得だけは可能であった。

 しかしいくら思い返しても自身は立っていただけであり、それ以外何もしていないことから困惑がセリニの身体に染み渡る最中にも変化がなかったか思考――すると昨日と異なる点を想起する。


 ――髪飾り……。

 暗影のゴブリンを倒した報酬である装飾品、暗影の髪飾りを身につけている。


 ――それと……帽子外してる。

 昨日は一時落ちたタイミングこそあったが、今日は身につけずにあの場に立っている。

 外見がちょっと違っていた。それを把握したセリニだが――そう考えた自身に向けて冷たい声色でツッコミを入れた。


「だから……なんなんだろう」


 その程度の変化が先の状況に繋がる――どう因果関係を紡げばそうなるのか一切の想像ができなかったセリニは無関係だと切り捨てる。

 

 そんな自己完結した胸中だったが、思考したそれが数分前の出来事に繋がったことを銀髪の少女は知らない。

 色彩を気にして身なりはちゃんと整えるようにしている月影だが、美少女と他者から評されるその綺麗な容姿に関しては母親譲りであることを理由に無頓着であった。

 だがその外見がゲームに反映された結果、白銀に染められた髪に黒い髪飾りを身につけて噴水の前に立っている色白の端麗な少女――特に意図がないながらも華麗かれいで映える姿となり、その場では一際目立つ存在になって注目を集める事態となった。

 しかし他者からそう見られたとは露にもおもっていないセリニは自己評価がとても低いこともあってそれに気がつく余地は一切なかった。

 

 ――少し落ち着いた。

 ――この場所は……落ち着くね、

 陽光が差すのはほんの少しで大半が影に覆われた空間に留まったことで平常心を取り戻せたと思えたセリニはゲームのことを考え始めた。


「――ステータスポイントを振ろう……かな」


 昨日のラストバトル――ギガントスライム・アペイロン戦で勝利したことでレベルが14から17になっていたセリニは一先ずすることが定まり、パネルを開いた。


 ――ステータス……普通になってる。

 HPとMP、そして暗影のゴブリンを倒したことで得た暗影への序開を使用するためのゲージは満タンとなっている。

 街に戻れば当たり前な状況ながらもセリニは安心感を感じる。

 理由は終焉の切り札を使用したことでHPが1の状態で維持されていた為であった。


 ――終焉の切り札の対価は……街に戻れば終わる。

 それは表記されていたことであり、当然の流れでもあった。


「街に……戻れば終わる」


 心の中で浮かべた内容を口に出したセリニはある考えが浮かんだ――その刹那に楽しい声色を出した。


「だったら!」


 それは自身にとっての好奇心と実用性を試せる一石二鳥であり、極めて楽しいことになると思ったセリニは笑みを浮かべるが――頭を横に振ってそれ以上の思考を自ら遮った。 


「とりあえず……ポイントを振ろう」


 する事を決めた以上そちらに集中することにしたセリニはパネルに目を向けると操作を始めた。


「――二日目も……楽しもう」


 後々に流れる光景に期待しながら――

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