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第80話 銀髪弓使いは終焉の切り札から

「え……と――」

 

 悩みを表わす上擦った声を上げながらもセリニは頭を回転させる。


 ――どうして……体調……ですか。

 言われた意味が全く分からないセリニであったが指摘されてしまった以上、生真面目にその事を考えた――とりあえず今に至るまでの流れを浮かべる。


 ――今日は休みで……ツインファンタジーワールドのダウンロードが終わるまで中途半端なゲームを遊んで……昼ご飯を食べた後……少し迷った後……遊んで。

 ――一度ログアウトした後……色々して……またログインしてまた遊んでますけど……体調は問題ないです。

 一連の出来事を思い浮かべたが駄目な点は浮かばないセリニであったがある点に気づいた。

 

 ――半日……VRMMOで遊んでる。

 月影にとってツインファンタジーワールドは初めての買ったVRゲームであり、初めてのオンラインゲームである。

 それをここまで続けられていることに驚きがあった。


 ――ゲームだから……そうなるよね。

 しかし少し考えると学校での休憩時間は一人で過ごし、その間を勉強に費やせる為に家で勉強を殆どせずに成績が優秀なこともあって、家にいるときは全く勉強せずに家族と過ごす時間以外の大半を読書。そして自身の趣味であるゲームを遊ぶことに使っている月影からするとそれは当たり前なことだと思えた――故に自身は特に問題ないと自己完結したセリニはそれをリーザロッテに伝えた。


「その……わたしは……いつも通りです……はい……」


 思考したことは自身のプライベートに関わる。

 それを明かしたら駄目だと筑波爽陽つくばさやから何度も言われていたセリニは理由を明かさないで異常はないと伝えた。


 ――大丈夫……かな。

 体調のことを聞かれた意味が全然解らない故にセリニの心境はマイナス方面に傾きだした最中にリーザロッテは心底安心した様子を見せた。


「それならいいけど」


「そ……そうですか」


 深刻に見えたのはどうしてだろうか? そんな風に思ったセリニにリーザロッテは言葉を向ける。


「セリニが使った終焉の切り札から初めて感じるプレッシャー……威圧感とも言えるの感じてね、使用した本人に悪影響があるかもと思えたの」


 そう言われて感じるのは先から続く向けられた意図が不明な懸念の念であり、セリニは頭に疑問符が浮かぶ気持ちであった。


 ――プレッシャー……威圧感……ゲームらしいけど。

 ファンタジーな世界観ではよく使われる表現と思ったセリニは――数瞬思考するとその点は共感できると思えた。


 ――強いモンスターと対峙すると……感じることはあります。

 既に強敵モンスターと戦っていたセリニは目に見えない力を浴びた感覚の経験は既にあった――そこからある考えが姿を現わした。


 ――もしかして……わたしからもそれが現れた?

 敵の要素が自身の操作するキャラクターにも内包ないほうしていて実際に使用可能となる。

 そんなゲーム経験があったセリニはリーザロッテが言いたいことの意味が分かり始めた。


 ――けど……覚えがない。

 然れどセリニは言われた要素が自身から現れたと思えた瞬間が何処にもなかった。


 ――わたしは……スキルを使用しただけで……。

 ――そもそも戦いの時に……そんなこと……考えている余裕が……。

 色々と考えたセリニだがこれ以上の精査は不可能と思えてきた故に自身の結論を出した。


「その……わたしは……大丈夫です」


 そして続けてセリニがリーザロッテに向けて紡いだのは――終焉の切り札を使用した者に及ぼすゲーム要素に関わる内容だった。


「ゲームのキャラとしては……全然駄目な状況ステータスですけど」


 端から聞くと奇妙な事を口にしているセリニ。

 話している相手であるリーザロッテもどういうことなのかと困惑する。


「ステータス」


 セリニが言ったそれをリーザロッテが確認する術は存在しない――だがパーティーを組んでいる状況ならHPとMPは見る事ができる。

 早速試した途端に――


「これは戦えなさそう」


 先の言動にリーザロッテは共感した。

 HPが1でMPは0だが時折1に回復するが即座に1となる――それが現在のセリニの状況だった。


「なんでこんなステータスに?」


 詳細が気になったリーザロッテの問いにセリニは応える。


「あの……デバフ……代償です」


「代償」


「はい……わたしが使える……終焉の切り札の一つ……【虚影暗影しゅうえいあんえい終焉流出しゅうえんりゅうしゅつ冥漠二刃めいばくにじん】を使うには……ゲージが空っぽ……そしてHPが1であることが条件です。

 そして使った後は戦闘中でも……戦ってないときも……常にHPとMPが最低値まで下がり続けるんです……これで倒れることはありませんけど」


「だから」


 強力な奥義を放つ前か放ったその後に代償を支払う。それはリーザロッテも知っている展開の一つなこと。

 ツインファンタジーワールドにそういった要素があることは初めて知るがゲームの世界ならあり得るとあっさりと納得する。


「つまり放った結果、自身か相手のどっちかが終焉を迎えるね、初めて知ったときから大袈裟な名前と思ってたけど、相応しいかも」


 そう零したリーザロッテ。

 それを耳にして同意したセリニは既に支払ったもう一つの代償のことも口にする。


「それと……スキルが発動している時も払っているものがあるんです」


「他にも?」

 

 目の前の銀髪の少女が終焉の切り札を使用した場面をリーザロッテは見届けている。

 しかしその動きの中に代償があったとはとても思えないために面を食らう最中にセリニはその内容を話した。


「その……疾走力にマイナスの……補正が掛かるんです」


「使用中は動きが遅くなるってこと?」


 複雑ではないシンプルなものだと思ったリーザロッテはどれ程の最終的にどの程度の数値になるのかが気になった。

 それはセリニが自ずと語った。

 

「はい……あらゆる補正を無効化して……疾走力を0にします」


「0……そこまでマイナスに」


 ――わたしには殆ど関係ない。

 自身はステータスに速度を振っていないために仮に使ったとしても悪影響は殆どない。


 ――だけど使用した本人は。

 しかしセリニはその素早い動きからして相当な量のポイントを疾走力を振っている。リーザロッテはその補正が何を齎すのか想像することは容易かった。


「なら発動のタイミングによっては悲惨なことになりそうね」


 そして一瞬で想像できたことをリーザロッテが話すとセリニは頷いた。


「はい……発動させたタイミングで敵に移動されたら……一人の時は敗北確定です」


「ですから……あの時、ショック状態になって本当に良かったです」


 曖昧な表現を口にしたセリニだが、聞いたリーザロッテはギガントスライム・アペイロンでの最後の二撃のことだと察した。


「わたしが魔法を当てなくて大丈夫そうだったけど」


 しかしその時のギガントスライム・アペイロンの挙動は遠ざかる動きとは思えなかったリーザロッテはそう零すがそれ以上の言及は避けるとスキルに関わることを紡いだ。


「ところで、ダメージはどれくらい出る?」


 あれだけ派手な演出なら相応な倍率があると思えたリーザロッテにセリニは答えを口にする。


「相手の防御力を無視した貫通ダメージで……ダメージ量はメイン武器込みの攻撃力の五倍です……当てられる回数は二回です――発動させる場所は任意で選べます」


「かなりのダメージ量になるね」


 弓による一撃と仕込み武装による一撃を放ったのは確認できていた為に聞いたと同時にリーザロッテは納得した。


 ――習得したら……使いたくなる。

 ――あのRPGにある、MPを全部消費して放つ技みたい。

 その場から動けなくなるデメリットを差し引いて――攻撃力が上がれば上がるほどに増すその威力は魅力を感じた途端にリーザロッテは――セリニが終焉の切り札を使用可能な事を知った瞬間から考えていたことを口にした。


「他の終焉の切り札も同じ感じかもね」


 それが空間に響いた一指弾にセリニは反応した。


「え……知っていたんですか」


 それは予想外であり、驚愕を伴いながら総身を震わせる。


 ――リーザロッテさんは……他の終焉の切り札があると気づいていた。

 その事実を知った刹那にセリニの脳裏にある想像が過る。


 ――使う機会が無かっただけでリーザロッテさんも終焉の切り札を扱える!

 まだ遊んでから一日も経っていない自身が使えている――そんな自分が特別優秀だと欠片たりとも考えたことがないセリニが他のプレイヤーが使える可能性を考えるのは必然的な流れだ。


 ――あれ……でも……。

 ――なら……なんで……聞いて。

 しかしそれが正しかったら自身にここ終焉の切り札の詳細を尋ねる必要性が皆無なのでは? そんな憶測をしたセリニに向けてリーザロッテは流れるように認知した経緯を話した。


「チュートリアルで知ってるだけだけど」


「チュートリアル……ですか」


 それが届いたと同時にセリニは淡々とした色で口にした。


 ――チュートリアル……色々と触れるんですね。

 そんな所感を抱いたセリニはふっとどうでもいいことが脳に過ると何となく話した。


「長そうですね……チュートリアル」


 今まで端から聞いた話を総合して予想以上に沢山の内容が流れると考えたセリニにリーザロッテは反応する。


「正確な時間は計れないけど、長めなのは確かね」


 肩をすくめながら語ったリーザロッテ。

 しかし次に言ったのは――


「でも――一秒で終わるけど」


 矛盾の言動であった。


「え……長いのに……一秒」


 よく解らない物言いに当惑するセリニにリーザロッテはその矛盾を解凍する用語を口にした。


「モーメントモードを体験したの」


 それはセリニが知っているものであったが驚きはあった。 


「体感時間が……速くなるモードでしたよね」


「驚いたよ、だってチュートリアルを見る前の分数が30分で、長めのチュートリアルの最後でモーメントモードを発動してましたと明かした後に元の場所に戻されたんだから」


「――最初に言わないんですね」


 自身がリーザロッテの立場だったら、彼女以上に驚愕すると思ったセリニにその時の内容の続きが語られる。


「ええ、それで確認したら31分だった」


 そこまで聞いたセリニは疑問を口にする。


「どうして……チュートリアルにモーメントモードを使用したのでしょうか?」


「それは――わたしには解らないけど、今後も使うので体感してもらいましたーとか()()()()は言っていたの」


 ――あの子達?

 チュートリアルをしていないセリニにとってどういう意味合いで語られたのか解らない者達が現れた。


 ――誰のこと……なんだろう?

 興味を感じたセリニだが――リーザロッテからすると特に気にならない存在なのか触れずに別の話題を口にした。


「そろそろ宝箱の中身を確認しない?」


 それはギガントスライム・アペイロンを倒したことで得た報酬に関してであり、この場での本題であった。

 無論そのことも忘れていないセリニは無言で頷くと――宝箱が置いてある場所に身体を向けた。

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