第79話 銀髪弓使いは体調から
「倒せたね!」
ギガントスライム・アペイロンの討伐に成功した歓喜しているリーザロッテにセリニは困惑しながらも心に灯すのは同じ感情なことから頷いた後に応じる。
「は……はい……倒せました……リーザロッテさんの……お陰です」
戦いの最中に思っていた事を話したセリニに向けて言われた張本人は首を横に振る。
「今のわたしだと一人では倒せないよ、セリニのお陰」
それはリーザロッテにとっての本音であった。
お供のスライムが現れない一騎打ちであったのならば倒せる。そう踏んでいた。
だが二体目のギガントスライム・アペイロンが現れる展開――そこから開始される二体の猛撃への対抗手段は存在しない故に負けるのは自身だったと分析した。
「にしても」
その事を考えると同時にギガントスライム・アペイロンが二体に分裂した直後の攻撃に対処したセリニに聞きたいことを尋ねた。
「挟み撃ちを避けたけど、何かのスキル?」
分裂した後に起こした攻撃を避けたセリニは即座に反撃した。プレイヤースキルが発端であると理解できたリーザロッテだが発動したスキルがどの様なものなのかも気になっていた。
「え……と」
それに対してセリニは言葉の先が出ない。
スキルを説明する事は問題ないが他者に対して具体的に言う経験が皆無な為であった。
――せ……説明しないと……だめですよね。
だがしかしリーザロッテが攻撃を避けた方法を気にする事は理解できる。
立場が逆だったら自身も尋ねていると思った――現にセリニもギガントスライム・アペイロンが二本の矢を放った光景が脳裏に過ぎる――
――あの攻撃……リーザロッテさんにも飛んだけど……どう退いたのかな。
HPが殆ど成長させず、攻撃を回避する為の疾走力にもポイントを振っていないリーザロッテがどの様にギガントスライム・アペイロンが放った大型の矢を対処したのか――今聞こうとは考えていないがセリニだがそれはそれとしてもとても気になっていた。
――い……言わないと……。
故にセリニはリーザロッテの疑問に答える義務があると思い。気持ちを整理しながら土壇場で使用したスキルの名を明かした。
「わたしが使ったのは【暗影流出・潜穿侵泥】です」
「暗影流出・潜穿侵泥」
届いたスキルの名を口にしたリーザロッテは感慨深い様子で呟きを零した。
「色々なスキルがあるのね」
その言葉に同意できたセリニも自身が思った事を口にした。
「魔法にも……色々な言い方がありますよね」
セリニが知っているリーザロッテが使用した魔法は攻撃とデバフを与える補助の二種類であるが構成する文字は別であった。
「それに……雰囲気が……違う気が……」
現れた魔方陣も異なる意匠であると思ったセリニだが――
――言い過ぎた……よね……。
自身は魔法を使えない能力構成であった。
なのに路傍からずかずかとした物言いだったのでは? 口に出した後の瞬間にそんな感情を抱いたセリニはどうするべきか考えそうになったが――リーザロッテは問われた疑問に言葉を返した。
「違うように見えたのは当然よ」
――当然?
そう明かしたリーザロッテに疑問を向けたセリニの耳に話した言葉の詳細が届き始めた。
「それは系統が違うから」
「系統……ですか?」
「そう、大雑把に分けるとドラゴン・バレットみたいなスタンダードな攻撃魔法は西洋で発展した魔法、弱体化を与える浸蝕魔術・防壊は東洋で発展した魔術って設定。
源が同じだけど発展した場所が異なるから雰囲気はがらりと変わる、他にも北欧由来とか色々とあるみたい」
――なる……ほど
地域によって文明があり、それは多種多様なのは当然で大元が同じでも変化があるのは必然的な事柄。
それを即時に理解できたセリニはすんなりと受け入れた。
「因みに簡易術式みたいな術式系統はかつてこの世界に存在していた軍が開発していたみたい」
「軍……ですか」
「とは言っても他の人が来ている軍服みたいな装備、術式とか名残があるだけで全滅してるけど」
――だから軍服を……マノンさんのように……着てる人達が……。
今まで見たプレイヤーの中には軍隊が関わるファンタジーな雰囲気の服装を着ている者もいた。
そういった服装があるんだ程度の感情を持っていたセリニであったが世界観に触れたことで理解を深めた。
「けどどうしてこんな場所に集結しているのやら」
そんな独り言をリーザロッテは零している。
その色はとても呆れ返っているものであったとセリニは感じる。
――どういう……意味ですか?
その言葉に注目したセリニであったがリーザロッテは話として広げるつもりは全くないのか別のことを言い出した。
「潜穿侵泥だけど……」
その内容は自身に深く関わるものであったと気づいたセリニは驚きからピクリと身体を動かす傍らでリーザロッテの言葉を受け止めた。
「名前から潜るスキルみたいだけど、その間は無敵?」
自身の予想を話したリーザロッテ。
それを聞いたセリニは申し訳ない気持ちを感じながらスキルに関して話した。
「無敵とは……書いてないです……だから地面に伝わる攻撃だったらダメージを受けていました」
地中から覗く形で自分が立っていた地点で衝突した二体のギガントスライム・アペイロンを思い出しながら語ったセリニは続ける。
「ですから……ジャンプからの落下だったら……倒れていたのはわたしだったのかも……しれません」
自身は首皮一枚で繋がっている状況だったと口にしたセリニであるがその話を聞いたリーザロッテは「それはない」と言った後にその理由を語る。
「きっと潜った後に起きた攻撃で迎撃してたよ」
断言する口調でリーザロッテから言われたセリニは思考に耽る。
――あの時も……目の前で激突した時に咄嗟に攻撃できたよね……。
――それなら落ちてきた相手にも……攻撃を当てることも。
その話を聞いたセリニはそうかもしれないと思えてきた。
「そうですね……そこまで結果は変わらないと思います」
そう口にすると同時にその展開が発生してもギガントスライム・アペイロンを倒す流れに変化が起きないと感じたセリニはふっと止めに放ち――現在進行で自身に影響を与えているスキルのことを口にする。
「それに……結局は終焉の切り札の一つを使うことも」
話した内容は特に気持ちを込めていない普通のものであったと口にした本人は思っている――故にその話をした途端に目を見開いたリーザロッテの姿を見たセリニは驚くこととなった。
――何で……なんだろう?
いつもなら自身を疑い心の方向が自罰的になるセリニであったが今回はゲームの要素であるスキルに関して話しただけであると自覚している。故に困惑の感情が強く表れる。
そして数秒の時が沈黙を伴い刻まれた後にリーザロッテは言葉を向ける。
「――体調は大丈夫?」
「え……その……」
どんな言葉を返すべきか――セリニが脳裏で反芻するのはリーザロッテの言葉。
――体調はだいじょ……
だが向けられた言葉はセリニの思考の外側に位置する――完全に想定外なものであったと途中で気づく。
「――――はい?」
それを全身で受け止めたセリニは濃い当惑の色を込めた返答をリーザロッテに渡したのであった。




