表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/101

第78話 銀髪弓使いのギガントスライム・アペイロン戦 その2

 見上げなければ見えないほどの高々な位置まで跳躍して落下するギガントスライム・アペイロンを視界に捉えていたセリニはそれが攻撃であると理解すると同時に外観にも変化があることにも気づいた。


 ――輝きが増してる気が……。

 それに何らかの意味があるのかまで解らないセリニであった。

 

 ――わたしがいる場所に落ちてきてる。

 ――嫌な……予感。

 しかしその変化が自身にとってのメリットに繋がらないと推測したセリニ。


 ――どんな攻撃?

 ギガントスライム・アペイロンと戦闘経験があるリーザロッテとパーティーを組んでいるが――瞬く間に負けたために仕掛けてくる手段は未知数。

 そんな話をセリニは聞いていた。


 ――予定よりも長く。

 する事は回避――それはHPも守備力も低いセリニのいつもの選択。

 そしていつもならば回避した直後に反撃するために最低限の距離で済ませるが今回は未知のモンスター――それも強敵であるボスモンスターが相手である故に距離を取る選択を取った。


 思考の終わりを皮切りに前に跳んだセリニはその最中に身体を後ろ向けて着地した途端――視界に蒼い閃光が現れた。


 ――やっぱり。

 ギガントスライム・アペイロンが床に落ちると同時に身に宿した強い輝きは消える。

 だが落ちた中心を起点に全方位の床に蒼い光の線が奔ったその刹那――蒼い光耀が現れて物理的な破壊をもたらした。


「床を」


 光が奔った周囲には破壊の跡が刻まれている。それだけなら問題ないセリニだったが――


 ――煙で……見えない。

 蒼い光の残光の代わりとしてギガントスライム・アペイロンの周りは爆煙で包まれている。

 それはセリニの接近を拒む帳であった。 


 ――最後の一撃なら突撃してもいいけど。

 状況によっては爆煙に突っ込む事も辞さないセリニ。


 ――最後じゃない。

 戦いを始めてそこまで時間が経過していない以上――それは無謀だと判断したセリニは――別の手を使うことにした。


 ――同じ煙なら。

 弓を横に構えたセリニは力を込めると同時に振り抜いた。

 すると風切音が鳴り響いた後に――爆煙は吹き飛ばされた。


 ――溜め攻撃も活用できる!

 一定時間構えた後に振ると一撃の威力が上がる。

 ツインファンタジーワールドの近接攻撃が可能な全て武器に共通する仕様であり、そのことに気づいた当初は衝撃値を与える以外では使えないと判断した。

 何故なら自身の武器である弓本体での攻撃は矢によるダメージの半分の数値でしかなく。ダメージ目的ならば矢を連続で放った方が効率がいいと思えたからだ。

 しかし煙を周囲に散らす効果がある。それを倒したホブゴブリンが撒き散らした爆煙の前で他のモンスターと交戦していて偶然溜め攻撃を使った際に察して――意図的に爆煙の前で試した結果、セリニは見抜けた。


 ――どんな姿。

 そのことを思い出しながら良好となった視界の先を見ると一部が破壊された床と横に身体を広げるギガントスライム・アペイロンの姿があった。


 ――隙……だよね。 

 その無防備な姿から攻撃をするチャンスだと判断した矢先にセリニは跳躍――ギガントスライム・アペイロンに近づきながらスキルを口にする。


「【暗影流出・黒き浸透しんとう


 黒き影が弓に纏ったその瞬間に敵と衝突して散りゆく黒き影。

 その攻撃にてギガントスライム・アペイロンは大きく仰け反った。


 ――もういち……。

 追撃を仕掛けようとしたセリニだがギガントスライム・アペイロンから抜け落ちる様に離れた蒼い液体に気づくと体勢を立て直した。

 その最中に蒼い液体は二手に分かれるとそれぞれが纏まると膜が張られて――独自に動き始めた。


 ――また二体……増えた。

 自身の身体から別個体のスライムを生み出す。

 ギガントスライムもしたことであるとリーザロッテが話していてそれを覚えていて、今回の戦いでは二回目であるセリニは冷静に対処する。


 ――このまま……。

 初めて使用された際は自身がスキルを使用した間に現れた為に一時的に三対一な状況となった。

 その時は何とかなったが次も倒し尽くせるとは限らないと思考したセリニは道具を取り出した。


 ――使わせて貰います。

 使用するのは魔力纏(まりょくまと)そう。自身の手持ちには無かったアイテムであるが自身が使わないからとボス戦前にリーザロッテから貰っていたアイテムの一つであった。

 それが終わると同時にセリニは弓矢を構えると三体のスライムにダメージを与えられるスキルを口にした。


「【弓術・拡射かくしゃ】」


 放たれた一矢は無数に分かれるとそのまま三体のスライムを貫いた。

 その攻撃を受けた事で増援のスライムは一体は倒せた。


「――」


 一撃で片を付けるつもりはこれっぽっちなかったセリニは矢を放つと増援のスライムの止めとなった。

 それが終えると本命に目を向ける。


「ショック状態」


 するとギガントスライム・アペイロンは微動だもせずな姿である事を確認したセリニは弓矢を向けながら即時に追撃のスキルを放った。


「【弓術・強撃きょうげき】」


 光り輝く矢が衝突するとセリニは続けてスキルを仕掛けた。


「【弓術・貫穿かんせん】」


 蒼き巨体を矢は貫き穿つ――セリニは弓をギガントスライム・アペイロンに向けると三度目のスキルを使用する。


「【暗影流出・漆黒飛刃しっこくひじん】」


 黒き影に覆われた弓が激突すると同時に影の刃が蒼い球体を切り裂いた――だがギガントスライム・アペイロンは倒れない。


 ――外見通り……HPが多いのかな。

 そんな事を考えながらもギガントスライム・アペイロンの動きを見逃していないセリニの瞳に映るのは――飛散する蒼い液体。


 ――また増援……。

 既に見た光景と思ったセリニであるがその粒は先よりも小さい。


 ――違う。

 別の攻撃と思った途端に蒼い液体は小石程度の大きさに膨張する。


 ――攻撃!

 危機感を抱いたセリニは横に移動――それと同時に蒼い液体は降り注いで地面に衝突する。

 その攻撃で発生したものは形となって床に残っていた。


 ――粘ついた。

 見ただけでその物の感触を想起したセリニは寒気を感じながらゲームでの効果を想像する。


 ――拘束する……技?

 ダメージを与えるものなのか解らないセリニだが、どの道触れないようにすると決めた最中にギガントスライム・アペイロンは攻撃を仕掛けた。


「!」


 身体の一部が伸ばした後に形が鋭利な刃となると横薙ぎに振る――その一撃をセリニは跳躍して回避すると同時に仕込み脚部の刃を展開してギガントスライム・アペイロンの身体を切り裂く。そしてそのまま宙返りして着地すると弓矢を構える。


「【弓術・拡射かくしゃ】」


 スキルによって拡散した矢の全てがギガントスライム・アペイロンに命中。

 更に攻撃を仕掛けようとしたセリニだが対峙するその巨体は蒼い輝きを纏う。


 ――初めて見る。

 地上で光るパターンは知らないセリニは警戒して後ろに跳躍――その最中にギガントスライム・アペイロンから放たれた輝きは球体状の膜となった。


「どうしよう」


 その様子を見てどう対処するべきか考えようとしたセリニに一体のスライムが別方向から現れて攻撃を繰り出した。


「……」


 その存在に気づいていたセリニはあっさり避けると――ある考えが脳裏に過る。


 ――モンスターをぶつければ。

 スライムは衝撃で吹っ飛ぶことを確認しているセリニは追撃を避けた後に――実行に移した。


 ――サッカーボールみたいな扱いで……ごめんなさい。

 利用することに罪悪感を抱いたセリニは心の中で謝り終わるとスライムを思いっきり蹴る。


 ――どうなるかな。

 宙を舞ったスライムはギガントスライム・アペイロンの障壁に衝突した途端――吸収されて消滅する。


「触れたら……駄目だった」

 

 プレイヤーが触れた場合も同じ目に遭うのかはまで解らないがその光景を見て、距離を取る選択をしてよかったとセリニは安心すると変化が発生した。

 障壁が吸収されるように消えるとギガントスライム・アペイロンから蒼い粒子が現れ、それと並行して蒼い身体が膨張。

 上部に兵士の上半身の模倣が作り出される。

 携える得物は――弓矢であった。


 ――さっきの剣もだけど……見たことある。

 一部を刃として攻撃する。それはダンジョンの道中で遭遇したスライムが仕掛けてきた攻撃を大規模としたものであった。今回の弓矢もセリニは見覚えがあった。


 ――油断したら……駄目だね。

 相手がボスの強化個体である以上、特殊な動きをする可能性は頭に置くべきとしたセリニに向けて蒼色の矢が放たれた。


 ――ここまでは。

 矢の規模こそ桁違いだが――直線的な動きなことに変わらない故に横に跳躍するだけで回避できたが――それで終わらない。


「二体目……」


 ギガントスライム・アペイロンの上部に集束していた蒼い粒子は形を織り成す。

 それは弓矢を構えた弓兵であり――飾りではないと言わんばかりに弓を放たんとした。


 ――本命の矢、

 一の矢は囮で二の矢で当てる――相手の狙いを把握したセリニだが――追撃されるのは想定の範囲内であり、対処の為のスキルを口にする。


「【瞬迅しゅんじん】」


 矢が解き放たれると同時にセリニの身は消える。それから瞬く間に矢が着弾に伴うようにギガントスライム・アペイロンの目前に銀髪の少女が姿を見せるとスキルを紡いだ。


「【暗影流出・黒き浸透しんとう】」


 黒き影を纏う蹴りの直撃を受けるとギガントスライム・アペイロンの身体は変態して刃を生み出して縦に振り下ろす。

 それを最低限の動きで躱しながらセリニは追撃の蹴りを一撃与える。


 ――こっちも二回。

 蒼い巨体から現れた刃は一振りではなく、二振りであったが先の弓の追撃を受けたセリニからすると驚くに値しない。

 一撃目を避けたその身には横振りの二撃目が襲いかかるが後ろに跳んで躱すと弓矢を構える。

 放つのは普通の攻撃であったが――先端にはスライムに効果がある魔鉱まこうやじりが装着されていた。


 ――全弾……撃ちます。

 相手のHPを削り尽くす心構えで矢を放ち続ける。


 ――これが最後の魔鉱まこうやじり

 心の底で宣言したと同時に放たれた矢は蒼いの巨体を貫いた。

 するとギガントスライム・アペイロンの身から著しい輝きが出現して粒子を全方位に放射すると――その一部が規則的な動きを見せてセリニを挟んだ正反対の位置に集合すると膨張を開始する。


 ――視界が。

 何かが起きていると理解はしていたセリニだが周囲を覆う蒼き粒子によって把握しきれていない。


 ――瞬迅は……まだ使えない……よね……。

 瞬間的に距離を取るのが最も適したスキルはクールタイムの最中――しかしセリニは取り乱さずに考える。


 ――なら。

 どんな攻撃を仕掛けて来るのか解らない状況だと判断したセリニは息を吸うと目を瞑り――下手に動くことはせずに場に起こる大きな変化が起きた瞬間に備えた。


「ギガントスライム・アペイロンが二体に!」


 リーザロッテは驚愕の声を上げていた。

 セリニが戦っている間もお供のスライムを倒し続けていたのだが蒼い粒子が吹き荒れると同時に全てのスライムが吸収されて消滅。

 スライムの源であった水晶から光が消え去った事を境目蒼い粒子は集束して独りでに形成――その形はギガントスライム・アペイロンと同一のものとなった。


「援護しないと」


 そう言いながら歩むリーザロッテだが――セリニと戦闘を繰り広げていたギガントスライム・アペイロンとの距離は広がっていて彼女の疾走力では時間を費やすのは必定であった。


「他のスライムを吸収なんて、完全に想定外」


 ――けど光は微か……。

 だがギガントスライム・アペイロンは弱っている。

 

 ――HPは殆どない筈。

 ――わたしの魔法を当てれば。

 勝機はあると信じて魔法の射程範囲の位置に到達したリーザロッテの前でギガントスライム・アペイロンとその形を模範した粒子は動く。

 その狙いはセリニであり動きは突撃――両者同時であり、挟み潰す形となり、衝撃音が鳴り響いた。


「セリニ!」

 

 その光景を見た瞬間に敗北の二文字が頭に過ったリーザロッテだが――漆黒がそれを塗りつぶした。


「!」


 地より噴出するは黒き影の放射――それを真下から浴びた二体のギガントスライム・アペイロンは宙に舞い上がる。


 ――スキル。

 その禍々しい漆黒の色合いからセリニの攻撃だと判断したリーザロッテは驚きながらも援護のための攻撃魔法を詠唱する。


「【二重詠唱】――【クリスタル・バレット】」


 現出した二つの結晶の弾丸は二体のギガントスライム・アペイロンを直撃すると地に落ちる。

 それを見るのは無事だったセリニ。


 ――リーザロッテさんの援護。

 パーティーメンバーからの支援を受けたセリニは――予想外の能力を披露したボスを分体共々倒すために余計な思考を挟まずにスキルを口にする。


「【暗影変異・黒之分体くろのぶんたい】」


 赤黒い影が放射されると瞬く間にセリニと同じ体形の人型となる。


 ――右を。

 現れた自身の影に命令すると矢を放つ。そしてセリニは左側のギガントスライム・アペイロンに魔力纏(まりょくまと)そうの効果が乗った矢を放った。


 ――倒れない。

 矢を受けたボスモンスターは未だに健在であった。

 それに向けて後ろ側から放たれた二つの水の弾丸がそれぞれに直撃するが――それでも倒れない。


 ――埒が明かない……。

 ――未知の攻撃が……対処できるかな?

 何時尽きるか解らないHPに対してもどかしさと焦りを感じ始めたセリニはある決心をした。


 ――切り札で……終わらせます。

 確実に倒せる追撃の手段の使用を決めたセリニに放たれるのはギガントスライム・アペイロンから精製されて放たれた一本の矢であった。

 二つ目の矢が別方向――リーザロッテに向かっても放たれた最中に――


「【瞬迅】」


 スキルで急接近した銀髪の少女に二体のギガントスライム・アペイロンが攻撃を仕掛けようとしたが――二つの雷の弾丸に邪魔されると同時に大きく怯んだその刹那――弓を握ると終わらすための決意を込めながらスキルの名をセリニは言い切る。


「【虚影暗影しゅうえいあんえい終焉流出しゅうえんりゅうしゅつ冥漠二刃めいばくにじん】」


 身体の内側から現れた粒子となった影が武器を介して現出する。

 現象はそれだけなのだが――その色彩は他を拒絶し闇すら喰らい光を捕食する只管ひたすらに暗き漆黒であった。

 放射される影の量も桁違いであり、起点にしてセリニの得物である弓の原型は消失。

 代わりに顕現するは影で象られた漆黒の三日月型の刃であり、手が独自に息吹――脈動する暗影と同化していると見た者を錯覚させる姿であった。


 ――あれが……終焉の切り札。

 決まらなければ自爆に等しい代償の最終手段がある――そうセリニから事前に伝えられていたリーザロッテ。


「なによ……あのスキル」


 しかしそれでも驚嘆の色を隠せないほどの衝撃を受けていた。


 ――ゲームだと……解っていても。

 ――怖い……恐ろしい。

 その光景はスキルを入手さえすれば起こそうと思えば自身でも起こせる――理屈的には――その筈だが目の前で発生しているのは別次元から到来した異なる存在が引き起こした超常現象と錯覚する程の威圧感があると、全身の血の気が引く気持ちを感じながらリーザロッテは認識した。

 

「感覚は……黒之鋭刃くろのせんじんと変わらないね」


 一方スキルを発動したセリニは手になじむと安心していた。 

 

 ――リーザロッテさんに……お礼を言わないと。

 数秒の余裕が現れたのは追撃の魔法にてギガントスライム・アペイロンのショック状態に転じたからであった。


 ――切り札を切ったからには。


「――終わらせる」


 気持ちの切り替えを冷静な声で現わしたセリニは左脚の仕込み武装を展開すると弓から流出されている同一の影の刃が現出させたその刹那に蹴りを放った。

 充満した無限に等しき――夥しい暗影を内に秘めた鋭利な漆黒の刃の前に蒼球の巨体は為す術なく両断される。


 それと同時に粒子からギガントスライム・アペイロンに転じた存在が自由を取り戻して牙を向けようとしたその途端に振り下ろされた二振り目の影の刃――漆黒の三日月が地面共々真っ二つに対象を切り捨てる。


「倒せ……」


 漆黒の刃が使用されると同時に見えない重圧から解放されたリーザロッテは勝利の喜びを言いかける――だが原型が崩壊したギガントスライム・アペイロンから放たれた強烈な閃光にて中断されたが――


 ――今度はこっち!

 それと平行して崩壊が始まった影の刃から噴出された漆黒の粒子によって光は覆い尽くされて――その余波はリーザロッテにも及んで場は暗闇で満たされた。


 それから数秒後。

 影は晴れて光景を取り戻す――部屋の主は討伐され――その場に立つのは喜びを分かつ二人の少女の姿であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ