第61話 銀髪弓使いは条件から
「こんな感じでいいかな」
枝の上まで跳躍して安全を確保したセリニはその場に座り込むとレベルが10になった事で得たポイントでステータスの強化を行った。
「それにしても……レベル10の時は少しポイントが増えるんだね」
振り分けを終えた後にそんな事を呟いたセリニはレベル10になった自身のステータスを確認する。
プレイヤー名 セリニ
Lv10
HP30(-10) MP150(+20)
攻撃力【60(+25)】
防御力【0(-2)】
攻撃魔力【0】
回復魔力【0】
器用力【30(+5)】
疾走力【70(+10)】
技巧力【0(+10)』
装備品
武器
右手【ゴブリンの弓】
左手【ゴブリンの矢】
鏃【通常鏃】
仕込み武装
右足【鉄の短剣+1】
左足【鉄の短剣+1】
防衣
頭【始まりの狩人帽子】【非表示】
体【始まりの狩人服】
腕【始まりの狩人手袋】
靴【始まりの狩人靴】
見た目装備【有効】
装飾品
【暗影の髪飾り】【装備無し】
【装備無し】【装備無し】
武器スキル
【弓術・強撃】【弓術・貫穿】
【弓術・拡射】【仕込み短剣・脚部】
戦闘・アクティブスキル
【瞬迅Lv1】
戦闘・パッシブスキル
【探知軽減Lv1】【消音攻撃Lv1】【特化強化・脚力Lv1】
装備スキル
鉄の短剣+1【攻撃時MP吸収】
鉄の短剣+2【攻撃時MP吸収】【MP自動回復】
暗影の髪飾り【暗影への序開】
探索スキル【水中適応・移動LV1】【水中適応・潜水LV1】
【隠密採取Lv1】
技巧スキル【鏃作成Lv1】
エクストラスキル【無取得】
イディオススキル【無取得】
融合スキル【無取得】
契約【契約不可能】
「レベルが二桁になっても……攻撃を受けたら駄目だね」
自身のステータスを見終えたセリニは客観的にその数値を端的に評した。
しかしそれは自身の今後に関わる重要な査定であり、他人事ではない故にセリニは強い不安感を感じ始めた。
――今は……問題ない……よね?
現時点では自身に向けられた攻撃は避ける――弓で受け止める等してダメージとして受けた事は一度たりとも無い。
――けど……そうできるのは……最初だけ……。
――ゲームの難易度が高くなれば攻撃も……激しくなる筈。
然れどもその状態の持続がどれだけ続けられるのか。
詰まるところ――何時かダメージを受ける事になるのではとセリニは思った。
――攻撃を受ける前提にした方が……。
――最低でも……HPだけは……。
故に今後レベルが上がった時は耐久に関わるステータスを上げようかと思案するセリニ。
「――だけど……中途半端にしたら……あまり強くなれないような」
ツインファンタジーワールドをやり込むのを既に決めていたセリニはどうするべきか悩んだ。
そして一分後――ひとまずの妥協点を設置する。
――一度倒れるまで今のステータスの振り方にしよう……。
今は通用してもこの先通用しなさそうな極端なステータスである事実も存在する――しかし並行してそのステータスで戦えている事実もあった。
そしてレベルが上がる度に疾走力が上昇するとより早く動けるようになってその状況をセリニは底意から楽しんでおり、その気持ちを最優先としたいと思っている。
故に一つの条件を付けた上で継続することを決めた。
――本当にいいのかな?
――詰んだらどうしよう。
――初めてのオンラインゲームなのに……詰みたくない。
だが今後を左右する重要な事でもある為に心の中で迷いが渦巻いている事を自覚する。
それをできる限りおとなしくさせたいセリニは別の部分に意識を向けることにした。
「このスキル……」
まず着目したのはセリニのレベルが10になると習得した【消音攻撃】であった。
同時に得たもう一つのスキルは一定のレベルになると自動習得するものであったがこちらは違った.
「レベルが10以上。そして敵に気づかれる前に攻撃を当てることを一定回数……するのが条件?」
習得条件を読み終えたセリニは疑問符が頭の上に現れた心持ちとなった。
――そんな攻撃の方法……してないような?
別にアサシンの様に敵に見つからないように隠密行動をした後にモンスターを強襲した記憶はセリニに無い。
そういった戦い方も有用なことを把握しているが一度だけ偶発的した以降は意図的に起こしていない。
――わたしは……見つけたモンスターをひたすら倒しただけ……の筈。
先までの目的はレベル上げであり、縦横無尽にフィールドを駆け回って見つけたモンスター達を片っ端から倒していた。
そう思い返したセリニは静かさとは無縁だと思ったのだが。
――もしかして……音は関係ない。
脳裏に残る戦いの記憶の残骸を俯瞰したセリニはある事に気づくと消音攻撃の習得条件を再度目にする。
「気づかれなければ……どんな動きをしてもいい。そういう意味合いなのかな」
そう考えるとセリニは納得できた。
レベルを10にする為に遭遇したモンスターには出会い頭に攻撃を仕掛けている。
その最中にモンスター側が自身を見ているのか――等攻撃した時点では微塵も考えていなかった。
――攻撃を仕掛けたのは歩いてたり……立ち止まっているゴブリンとか狼ばかりだった。
しかしホブゴブリンを除いたモンスターは軒並み一瞬で倒しており相手が自身を認識しているとは思えない
記憶を辿ったセリニはそう考えた。
――やっぱり……知らない間に条件を満たしていた?
どんな形であれスキルを習得した事実がある以上、そうとしか思えなかったセリニは疑問を浮かべながらも受容すると想定外に得たスキルの詳細をパネルを通して確認する。
「鎧装備を着ているとスキルを使えない……今のわたしには関係ないね。
敵に発見されていない状態で武器での通常攻撃したときの限定で……攻撃の音が消える。スキルレベルが上がると消音攻撃での攻撃時の威力が上昇。
消音攻撃の効果が発揮するのは最初の攻撃でそれ以降は一度戦闘が終わるまで効果が発動することがない」
「隠れているときの最初の攻撃だけは相手に気づかれない。そういう事だね」
効果を把握したセリニは笑みを浮かべながら楽しそうに言葉を紡いだ。
実際に彼女は心の底から今の状況を楽しんでいた。
――鏃を使った攻撃は通常攻撃扱いされるのかな?
得たスキルを使用して新たな戦い方を構築して試すのも醍醐味であると思えたからだ。
そんな中スキル説明を見て気づいた点があった。
「対人戦では……使えないんだね」
『プレイヤーには効果が発揮されない』最後の一文にそう書かれている事に気づいたセリニ。
――頭の中には届いてない情報……だよね?
それはスキルを習得すると同時に身体の中に入り込んだ文字列の中に含まれていないものであった。
――聞き逃していた?
レベルが目的であった10になった時はとても嬉しいと思っていて細かい点に心が向かなかった――自身に落ち度があったのでは? そう思っていたセリニだが彼女には落ち度はない。そんな事になっているのには明確な理由があった。
※ ※
時はベータテストのまで遡る。
当初の【消音攻撃】はプレイヤー同士の戦いでも効果は発揮された。
しかしある三人の凄腕が対人戦にてそのスキルと噛み合い。最大限に活用した事によって殆どの敵対プレイヤーを一撃も攻撃させない――戦いとは決して言えない一方的な蹂躙で倒してしまう事例が発生した。
一部のプレイヤーは対応して互角の戦いを展開したがその数は少数であった。
ツインファンタジーワールドは世界を冒険する事がメインの要素でpvpはあくまで本分ではない。
取得したスキルやプレイヤースキルによってある程度のプレイヤー同士の戦闘能力に格差が出るのは仕方ないとして余程の事がない限りはスキルの調整をしないと公言していた運営であったが――戦いに巻き込まれた家屋の如くなぎ倒される――対人戦が開催された僅か三日の間で四桁を超えるプレイヤーが倒される光景を見たや苦情が殺到した事で対人戦時のみスキルの仕様変更をする事が決定された。
そして本来なら習得時にその事が伝えられる仕様なのだが――様々な理由から暫くの間それは不可能であり、パネルから確認できるスキル説明に記載する事で対処すると運営から発表があった。
※ ※
「どうなって?」
しかしベータテストに参加していない。
そしてツインファンタジーワールドのホームページで経緯を詳しく調べる気も一切無いし、知る余地もないセリニにはそれを知る術はなかった。
「文字で知ったから……いいよね」
踏ん切りをつけたセリニであったが疑問が生じる。
――何で対人戦で使えないんだろ?
それは知らない間に起きた事柄によるものであった。
だがセリニはそうなった理由の裏話を金輪際知らない立場である為に正解に到達する事は有り得ない。
――使えれば……有利になりそうだけど……。
――使われたら……厄介そう。
――初めてゴブリンに攻撃されたとき……音が無かったら。
――きっと……町に戻されていた。
しかし戦いで視界に映らないモンスターの動きを予期できるのは音が身体に届いてそれを判断材料して不意打ちを防いだからだ。
そう対処したセリニにとって攻撃の音が消える――それだけの情報で十分に脅威になると認識した。
「だけど……音が無い攻撃を避けるのも面白そう」
――何で対処するのかな……風の流れとか?
危機感を抱くその一方で未知なる攻撃に対抗する。その状況を想像したセリニは笑みが零れて戦意が高まってくる事を自覚する。
「機会があるといいね」
そんな事を言うと同時に想像を打ち切ったセリニは意識をパネルに向ける。
「もう一つのスキルは……」
そしてセリニはレベルが10になると自動習得する本命のスキルの詳細を目でしっかりと確認しようとしたが――
「――リンゴ食べてから見よう」
レベルが10になって落ち着ける場所に着いたらやろうと思っていた事があり、そちらを優先することにしたセリニの手元には口にした食べ物が実体化していた。
「甘い香り」
現われたリンゴの匂いの感想を口にするセリニ。
巨木の枝の上で既に同一の果物を手にしていたがその時の物と比べると赤みが増していた。
そして比較にならない程の甘美な香りを周囲に振り撒いており、入手した直後からツインファンタジーワールドを始めた当初に食べたものとは別な種類である事に少女は気づいていた。
「ようやく食べられる」
レベル上げに向けて動き始めた矢先に今いる場特有のリンゴを手にしたセリニであるが切りが悪いと今迄我慢していた。
「食後と運動後のデザートだね」
現実で夕御飯を食べて、ゲームの世界で動いた直後である為にそのような独り言を呟いたセリニはリンゴを食べようとした。
だが静粛とした夜気の音を退く――深閑とした場を乱す大きな何かがしなる音が耳に届いた事で動きを止める。
「!」
ある種の親近感から一聴しただけでその音の正体に気づいたセリニはリンゴを手元から消した――そして。
「今……狙ってくるんだね」
淡々としながらも――食事を邪魔された故に不機嫌を隠さない色合いの呟きを漏らしながら弓矢を出現させた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
レベルが上がったときのステータスポイントの上昇量ですが
HPとMPのポイントはレベルが1の時に100ポイントをそれぞれに振り分けて、その後は1レベル上がる度に8ポイントを振り分けですが、レベルが10になったときだけ限定で16ポイントの振り分けになります。
それ以外のステータスのポイントはレベルが1の時に100ポイントをそれぞれに振り分けて、その後は1レベル上がる度に6ポイントを振り分けですが、レベルが10になったときだけ12ポイントを振り分けです。




