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第54話 銀髪弓使いは孵化から

「まだまだ仕込み短剣には慣れない」


 上手く着地出来なかった事を呟きながら脚部の装備に収納される短剣を確認したセリニは即座に跳躍――今の持ち場である巨岩の上に戻った。


「大丈夫そう」


 同時に全方位を確認したセリニが見たものは夕暮れに染まる森林だけであった。


 ――何度見ても綺麗。

 その景色に対する感想を心の内で呟くと警戒しながら先の戦いの事を考え始めた。


 ――二回で終わった。

 攻撃回数を数えたセリニは疑問を抱いた。


 ――ここに戻ってきてからステータスを上げていない。

 ――それに……ダメージを上げるスキルは使用していないはずだよね?

 暗影流出あんえいしゅうしゅつ黒之分体くろのぶんたいでの攻撃にどれだけのダメージを与えられるのか完全に把握していないセリニであったが通常の矢を当てた時の回数で倒せた為に説明どおり普通の武器攻撃と差は無いと考えていた。

 故に今回の攻撃回数が何故なのかと思った。

 

「――あ」


 しかしそれは単純な答えが既にあったとセリニは辿り着いた。


 ――そういえば……弓矢は新しくしてたんだ。

 武器によって攻撃力が上がればダメージの数値が上昇する。それはゲームの中では必然であった。

 そう考えると自然といつでも戦えるようと手に持つ弓に目が向いたセリニは新しくなった弓矢を初めて目にした。


 ――これが。

 それを見ると同時に何とも言えない気持ちとなったセリニに――


「終わったわよ」


 アルーセの声が届いた。


「は……はい!」


 今の弓矢に抱いた感情よりもアルーセを優先することにしたセリニはとりあえず巨岩から降りた。


「急に悪かったわね」


「いえ……大丈夫です」


 言葉を交わしながらアルーセの周囲を見たセリニはある変化に気づいた。


 ――壺が無くなってる。

 スキルを使用した事で巨大化していたアルーセの武器の痕跡が消失していた。

 

 ――わたしが見たのは……幻覚だった?

 視界に入った時間が一分にも満たない事から目にしたものが本当に存在していたのかとセリニは自身を疑ってしまう。


「さっきの壺は片付けたわ」


 しかしアルーセが実在を疑った物に関して話し始めた為にセリニは一安心ひとあんしんする。


「そうだったんですね」


 声でも反応したセリニに対してアルーセは変化した部分を言及した。


「それは新しい弓矢ね」


 汚れの跡がこびり付き部位が欠けながらも総身は弓の形、所々に乾いた布が巻かれ、垂れている。

 それが現在のセリニが装備している武器であった。


「ゴブリンの弓矢は初めて見るけどなかなか良いわね」


 自身が抱いた素直な感想を口にしたアルーセにセリニは浮かない声で応じる。


「え……あ……そ……そうですか……」


 アルーセが言った事にセリニは同意出来なかった。


 ――最初の方が……好き……です。

 今の弓も悪くないと思っているセリニだが先まで持っていた始まりの弓の方が断然に好みな見た目であった。


 ――好みは人それぞれよね。

 その感情を隠しきれないセリニを見て事情を刹那に察したアルーセは解決案を話すことにした。


「性能をそのままにして見た目だけを変える方法があるわよ」


 それが耳に入ったセリニは食い気味に声を上げる。


「ほ……本当ですか!」


「ええ、装備の画面を詳しく調べれば今すぐに可能よ」


 と言われたセリニは即座に自身のパネルを出現させると装備の画面にする。

 そして数秒後――


「これ……ですね」


 そう口ずさんだその瞬間――セリニの手元にあったゴブリンの弓が白い光で包まれた。

 そして光が収まるとそこにはゴブリンの弓は存在しない――


「戻った」


 そこにあるのは始まりの弓であった。


「一度手に入れば……いつでもその見た目になる事が可能なんですか?」


 言われた通り装備場面を調べると見た目装備の項目があった。そして段取りの中で見た目として使用可能な装備は自身が入手した装備だけであると気づいたセリニの言葉に「そうよ」とアルーセは応じるとそのまま話し出した。


「だから性能関係無しに見た目装備の為に武器や防具を求めるプレイヤーもいるくらいよ」


「そうなんですね」


 ゲームの中で能力値だけでなく見た目にもこだわりを持つ事は理解できたセリニは納得した。


「そして見た目専用の装備を一から作り出すプレイヤーもいるわ」


「色々な事ができるんですね」


 武器や防具のデザインが可能な事に驚いたセリニであったが興味心は沸かなかった。

 

 ――レベルを上げて……色々な相手と戦いたいから。

 ――きっとわたしには関係ないよね。

 胸の中で自身には縁が無いことだろうと考えたセリニにアルーセは数秒前の話題とは全く異なる事を口にした。


「さっき作成したのはこれよ」


 それは先に壺を出した事と密接に関わるためにセリニはアルーセの言葉に注目するとその手には――手のひらに乗る大きさのある物がある事に気づいた。


「たま……卵ですか」


 磨かれたかの如く輝きを放ち、微かな汚れ等が一切見当たらない純白な点を除けば現実でも見られる物をいきなり見せられた少女が当惑する最中に――


「受け取ってね」


 アルーセはその卵をセリニに手渡した。


「!」


 その行動に驚きながらもとりあえず受け取ったがどんな思惑があるのか分からずに驚いたその刹那。

 卵から伝達して脳裏に広がるのはスキルの名――そして卵の使用方法。

 セリニはスキルの名を反射的に呟いた。


創生之導そうせいのみちび小鳥ことり……これってスキルで生み出した……ものですか?」


「そうよ、正確には壺秘術・創生之導そうせいのみちび小鳥ことりだけど、壺での作成が終わったから、省かれているみたいね」


 正確なスキル名を明かしたアルーセに向けてセリニは自身の疑問を口にする。


「あの……どのような……どうして……わたしに……」


 卵がスキルで生成されたものである事まで理解をしたが自分にそれを渡した意味までは汲み取れていないセリニにアルーセは答える。


「壺秘術・創生之導そうせいのみちび小鳥ことりあらかじめに指定した場所に飛ぶ小鳥を壺で作り出すスキルよ」


 そのような説明を受けたセリニはアルーセが壺を巨大化

させる前に話していた事を思い出した。


「あの時……話したスキルが……創生之導そうせいのみちび小鳥ことりですか」


 話が繋がると卵を渡されたと同時に脳裏に現れた使用方法――孵化させるとどうなるのかセリニは想像がついた。


「ならこの卵から産まれる鳥が……」


「プレイヤーを導くわ」


 セリニが予想した内容を話したアルーセ。


「その後はペットになるのよ」


 しかしその先は予想外で想像外な言葉であった。


「ぺ……ペットですか?」


 単語の意味こそ考えるまでないセリニだがこのタイミング現れた事に困惑した。


「あの……ペットは……何の事ですか?」


 ひとまず置かれた状況に対する疑問を発したセリニに「深く考えなくていいわ」とアルーセは言った。


「安全な場所に付いてくる小動物よ」


「小動物……」


 それを聞いたセリニの頭の中には小さい生物と楽しそうに戯れる人の姿が現れる。


 ――マスコットキャラみたいなものかな?

 対象が浮かび上がると同時に悪くないとセリニは思い始める。


「仲間モンスターや契約モンスターとは別枠だからその点は心配しなくていいわよ」


「そうなんですね!」


 契約モンスターと契約する予定があったセリニにとってそれは朗報であり、卵を貰った事に対する疑問も消え去った。

 しかし入れ替わるように別の疑問が生じる。


「その……そのようなのを……無料で……貰っていいのでしょうか?」


 アルーセは話していないが創生之導そうせいのみちび小鳥ことりは巨大化した壺で生み出された卵であり、何らかの素材を消費しているとセリニは推測している故の言葉であった。


「いいわよ、助けて貰ったお礼も兼ねてだから遠慮なく受け取ってね」


 ――また……その話ですか。

 セリニはアルーセを助けたとはこれっぽちも考えていない為に距離感を抱く。

 だが同時にその声色に心底からの明るさを感じ取った。


 ――無下むげにするのは駄目だよね。

 その気持ちだけは受け取ることにしたセリニはアルーセに応対した。


「分かりました。大切にします」


「ええ、大事にしてね……けど孵化するのは少し待った方が良いわ」


「え……」


 直ぐにでも孵化した方がいいと思っていた為に正反対な事を言ったアルーセにセリニは呆けた声を向けた後に疑問が現れた。


「何故ですか?」


「セリニちゃんの今のレベルは8よね?」


「そうですけど……孵化するのにはもう少しレベルを上げる必要があるんですか?」


 言われた内容から自身の推測をセリニは口にする。


「違うわ」


 しかしアルーセから飛んできたのは否定の言葉であった。


「孵化するのにレベルは必要ないわ、レベル1でも可能よ」


 そう話したアルーセ。


 ――でしたら。

 なら何でそんな話を? と心の中で思っていたセリニにアルーセは話の続きを口にする――それは疑問に対する解であった。


「わたしがレベルのことを話したのは……念の為よ」


「念の為……ですか?」


「ええ、実はレベル10になると全プレイヤー共通である戦闘用のスキルを習得するのよ」


「レベル10で戦闘用のスキル……ですか」


 初耳であったセリニであるがとても興味深い情報である為に割り込むように声を出した。


「それがセリニちゃんと相性が良いスキルなのよね」


「わたしと……ですか?」


「そう、逆にわたしのステータスには合わないわ」


 自身とそのスキルとの相性を語ったアルーセは話をセリニ側に戻した。


「そのスキルを習得しとけばボスモンスター戦に役に立つと思ったのよ」


 そう言われたセリニは直ぐにアルーセの言いたいことを理解した。


「ボス戦前の事前準備って事ですね!」


 強敵と戦う前に様々な準備をする事も好きであったセリニは自然とテンションが上がるとさらなる言葉が自然と繋がった。


「アルーセさんが言いたい事はレベル10になった後に……孵化して小鳥の後を追いかければいい……ことですか」


「そういうことよ、この周囲で戦っていればすぐにレベルがが上がるわ」


 肯定すると同時にアドバイスされたセリニは即時にこの場から動きたい気持ちに駆られる。

 しかしその欲求を抑えるとアルーセにこれからの予定を話した。


「早速レベル上げ……したいですけど一度ログアウトして……その後にしますね」


「そうするのね」


 際立った反応はしなかったアルーセであったがログアウトした後の動きの事を聞いてきた。


「なら夜に戻ってくるのかしら?」


「は……はい!」


 明日が高校がある日であったのなら、再度ログインせずに月影は寝る予定であった。

 しかし明日も高校が休みである為に色々な事をした後にログインして夜も遊ぶとセリニは最初から決めていた。

 そんな少女にアルーセは楽しそうに語る。


「ならファンタジーな光景が見れるわ」


 唐突にそんな事を話したアルーセにセリニは頭の上に疑問符が現れる気持ちとなった。


「ファンタジー……光景?」


 それなら既にゲーム世界に来てから見続けている――と思っているセリニだが意味なくアルーセが言わないと思えた為にその言葉を信じた。


「楽しみに……します」


 そして先に口にした事を実行しようとパネルを呼び出して目を向けたその刹那――パネルを確認したセリニの総身を襲うのは――底知れぬ寒気であった。

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