第51話 銀髪弓使いはシステムから
「――え!!」
自己否定したものがアルーセから受け入れられたセリニは驚嘆していた。
「ど……ど……どうしてですか」
とはいえ根拠があってそう話したと思えたセリニは動揺の色を残しながらもアルーセに問う。
「? セリニちゃんが先に言わなかった?」
そんなセリニにアルーセは疑問の表情を向ける。
「や……あ……その……」
それを聞いたセリニは心の中で完結こそしたが表に出していなかった事に気づくと慌てながら弁明する事にした。
「実は……マップからだと……攻撃する対象が見えないと思……気づいて……」
自身が感じていた内容を話したセリニであったが――
――マップから転移するの……かな。
――もしかして……別の方法で……。
自身が口にした領域転移の使い方が正しいのかさえ怪しい為に後悔の波が押し寄せてきた。
「それは思うわよね」
しかし領域転移の使い方は自身の想像どうりであるとアルーセが示唆した事でセリニはとりあえずの安心感を得た。
「けどそれは可能みたいなのよ」
そしてそのままセリニは場を紡いでいるアルーセの説明を聞く事にした。
「どうも攻撃する領域転移は転移する先に他のプレイヤーと戦闘状態になっていないモンスターがいないと使用することが不可能らしいわ」
「モンスターがいる場所じゃないと使えない……ですか」
アルーセの話を聞くと同時にその話し方からセリニはある事に気づいた。
――アルーセさんは……固有の領域転移を使えないのかな?
言葉の種類が自身が体感した事ではなく、他者から何らかの形で伝えられたものだと感じ取る。
然れどもそれを指摘する気は一切無いセリニは心の中に入れている間にもアルーセの言葉は続いていた。
「けど使用可能だと転移による攻撃はほぼ確実当たるみたいよ」
「ほぼ確実……」
その言い回しは何なのかと感じたセリニにアルーセは言葉を追加した。
「標的になったモンスターが激しく動き回っていたら外れる事もあるみたい」
素早い標的に攻撃を当てづらいのは当然であり、アルーセの言葉の意味に気づいたセリニは納得した。
「けどそれ以外なら先制することが可能よ」
「やっぱり使い勝手は良さそうですね」
直撃を狙うのが楽な部類である知った事で聞いた直後から抱いていたものが間違っていないと感じたセリニ。
しかしアルーセは――
「明確な欠点もあるわ」
忠告の色を乗せた声をセリニに向ける。
「欠点……ですか」
「ええ、マップから向かうから転移した先がどんな状態なのか分からない、だから多数のモンスターに囲まれるかもしれないわ」
「言われてみたら……そうですね」
フィールドには沢山のモンスターが点在している事をセリニは既に知っている――それを踏まえると考え無しに突っ込んだら瞬く間にHPが尽きて街に戻される。
そんな目に遭う想像は即座に可能であった。
「それに普通の転移と違ってモンスターのヘイトも向かうみたいよ、因みに普通の領域転移はモンスターがいない安全な地点を転移するようになっているわ」
アルーセから言い放たれた通常の転移手段の事も聞こえていたセリニであったがその興味心は攻撃可能な転移に向いていた。
「ヘイトですか」
「そうよ、けどモンスターが転移した人に向かうことになるから、一概に欠点とは言えないかもしれないわ」
そう話したアルーセの意図をセリニは即座に理解した。
「モンスターを自身に引き寄せて……倒し尽くす事もできるんですね」
一体多数の戦いの楽しさ――一騎当千な心地を既に体感していたセリニは少量の悦を込めた声で自身の推測を語る。
「そういう使い方もあるわ、倒されるリスクもあるけどね」
「だけどあなたが固有の領域転移を使えると思うのはあくまでわたしの予想だから……外れたら悪いわね」
推測故に勘違いの可能性を示唆しながら謝ったアルーセだがセリニはその点に関しては全く気にしていなかった。
「大丈夫です、習得できないなら普通に戦うだけですから」
と話したセリニは念のために領域転移の習得方法の確認をした。
「あの大きな塔……ヘイス・ピュルゴスに入るだけで習得できるんですよね」
「ええ、製品版でならそれが最も簡単な方法よ」
アルーセが何気ない口調で話した部分が意味深長に聞こえたセリニは聞き返した。
「製品版……ですか?」
「そうよ、ベータテストの最初の頃は違ったみたい」
アルーセの語りを聞いたセリニは既にそれが自身が関われないと気づいたが興味本位から変化した点を問うことにした。
「あの……どの様に違うのでしょうか?」
「場所も入手する条件も違うの……ベータの際は洞窟よ」
「洞窟……」
――なら条件はあれ……ですよね。
その場所を聞いたセリニはその先の答えに関するお約束に思い当たるものが脳裏に現れ、それは表情としても出ていた。
「条件は……解るわよね?」
それに気づいたアルーセの言葉にセリニは即時に自信満々な色合いで切り返した。
「ボスモンスターを倒すんですね」
「そうね、正解よ」
予想が当たった事に安心したセリニにアルーセは話の終着点を口にする。
「倒せば領域転移だけを入手できるのがベータテスト版よ」
聞き終えたセリニは疑問となった点を口にする。
「けど……今はヘイス・ピュルゴスに入るだけで手に入るんですよね……どうしてですか」
「そのボスモンスターが強くて簡単に入手できなかったからよ」
「強いですか……ボスモンスターなら強くても」
強敵を倒す事が好きなセリニからすれば然したる問題とは思えなかった。
「セリニちゃんの言うことが最もだけど、入手できるのは探索の時に必須な能力だから早めに欲しいってプレイヤーが多かったのよ」
アルーセの言い分を聞いたセリニは強すぎる事を問題とする側の気持ちも少し理解できた。
しかし同時に対応策もあると思いそれを口にする。
「オンラインゲームなら……他の人とパーティーを組めばなんとかなりませんか?」
自身は駄目な手段であるが多人数で遊べる利点を使えば何とかなると思案したセリニ。だがアルーセは首を振って否定した。
「それでなんとかなる事もあるけど、システムに阻まれて今回は駄目だわ」
「システム?」
聞いたセリニは駄目な理由が気になったがそれはアルーセが自ずから話し出した。
「そのボスモンスターはパーティーの人数で強さが変動するタイプだったのよ」
「人数で……強さが変わるんですか?」
初耳の情報にセリニは首を傾げる。
「そうよ、フィールドに現れたり、特定の場所で戦える大抵のボスモンスターはパーティーの数や周囲の人数でHPみたいなステータスや戦法が変わるわ」
「そうなんですか」
――どんな変化があるのかな?
その仕様が気になったセリニだが今話している事とそこまで関係ない為に表に出すことはしなかった。
――もしかして……そのシステムのおかげで……HPが少なくなって。
――黒いゴブリンを倒せて……暗影の髪飾りも手に入れられた。
それを聞いたと同時にその仕様が強敵にも作用された事が遠因となって誰の手も借りずに一人で撃破できた可能性が浮かび上がる。
――まだ解らないけど。
――そのシステムに感謝しないと。
黒衣のゴブリンを倒した事によって自分好みの髪飾りとスキルを得られた。
詳しく知らない少女からすればそれが紛れない事実で――得られた結果であった。
それに気づいたセリニは聞いている話とは真逆な結果となったと強く感じ取る事となった。




