第50話 銀髪弓使いは二種類から
「領域転移ですよね……どんな効果があるんですか?」
好奇心が込められたセリニの疑問にアルーセは応じた。
「そうね……一度行った事がある場所なら殆どの場所に転移可能になる効果。移動する先をある程度決められるファストトラベルと言えば分かるかしら?」
アルーセの回答を聞いたセリニは知っている要素で構成されたものであったために即座に理解する。
「便利ですね」
「ええ、利便性はピカイチよ、だからチュートリアルで説明されてるんだと思うわ」
「チュートリアルで……」
自身が選ばなかった要素の最中で解説されていることを再び知らされたセリニの内に後悔の気持ちが出現する。
――ちゃんと……チュートリアルを受けとけばよかったかな。
悔やみの感情が心から漏れ出しそうになったセリニであったがそれは既の所で抑えられた。
――最初は歩かないと転移できる場所が広がらないみたいだから。
――大丈夫……だよね……きっと……。
アルーセの話を振り返る事で冷静になって自己解決したセリニの耳に領域転移に関わる言葉が通り抜ける。
「だけど再度使えるようになるまで基本的には一時間必要になるのよ」
「そう……なんですか」
自由自在に使えない事を知り、セリニは驚きを感じる。
――オンラインゲーム……だから?
そしてそうなった理由は何なの疑問に思ったがアルーセの話の続きが聞こえた事。そして意味深長な言い方をしていた為に明かしていない仕掛けがあると判断したセリニは聞こえる音に焦点を当てた。
「因みにだけど、一度ゴブリンに倒れたわたしが直ぐにここに戻ってきたのは領域転移を使用したからよ」
「え……そうなんですか」
それを聞いて驚いたセリニ。
――でも……そうですよね。
だが少し思案するとモンスターに倒されたのに再びこの場に現わす――ゲーム内である故に復活することは気にしなかったが戻ってくるのに何らかのからくりがあるのは必然であると思えた。
納得するその傍らにてアルーセはセリニに関わる事を口にする。
「多分だけどセリニちゃんの領域転移は固有になると思うわ」
「そうなんですか……わたしのは固……」
後は普通に聞くだけで問題ないと考えながら返答したセリニ――されども途中から普通ではない情報をアルーセが話した事に気づくと同時に言葉が一瞬で塞き止められた後に再び紡がれた。
「固有……どういう意味ですか……」
当惑の声色で口にしたセリニに向けてアルーセは言葉の意図を話し始めた。
「さっきの戦いで使用したスキル、多分だけどあれは普通のスキルじゃないわよね?」
「そ……装備スキルですけど……」
相手が言いたいことがどういう意味なのか分からないセリニであったが先の戦闘で使用したスキルの大本を明かした。
「装備スキルであれだけの」
呟きを漏らしたアルーセは思案する様子となったが数瞬で納得した表情を浮かべる。
「ならそれが特別なスキルの一つね」
そう断言したアルーセ。
黙して聞いていたセリニはとりあえず今の話の先端となった言葉の意味を聞いた。
「あの……固有って何が固有なんですか?」
根本的な部分の問いにアルーセは答えた。
「まずは転移するときの演出が変わるのよ」
「演出?」
「そうよ、誰でも使える領域転移は魔方陣が出現するだけ」
――魔法を使える勢力のキャラクターの移動手段。
アルーセが語った演出はゲームの中で見た事がある内容であったためにセリニは直ぐに脳裏に想像の場面を浮かべられた。
――良さそう。
そういったものには憧れがあり興味を感じたセリニはそのままアルーセの話に耳を傾けた。
「固有の領域転移は……そのスキルの種類によって様々にあるみたいよ」
具体性の無い話の内容であったが思い浮かべる事が難しくなかったセリニはそれをアルーセに伝えてみた。
「炎の中から登場とかですか?」
「それもあるらしいわ、雷とか他の属性もあるみたいだから、それだけで九つも種類がある事になるのよ」
「色々とあるんですね」
相も変わらずに面白そうと抱き心の温度が湧き上がってきたセリニであったが気になる部分が脳裏を占拠を開始した事で沸点が静まった。
「雷……」
アルーセが何気なく口にした属性――それをここまでの道中で見ており、それは鮮明な映像としてセリニの脳に刻まれていた。
「何かあったのかしら?」
そんな様子を見ながら発せられたアルーセの声を聞いたセリニは機会を得たと感じ取り、自身の推測を表に出してみることにした。
「その……ここに来るまでの道中で雷が凍った川に落ちて……その後に人が現れたんですけど……もしかして」
「間違いなくスキル固有の領域転移よ」
セリニの推測をアルーセは肯定した。
「そうでしたか」
それを聞いたセリニだったがもう一点気になる部分があった。
「あと……その……聞いていいですか?」
――わたし……聞いてばかりだよね……。
好奇心に背を押されているが同時にアルーセと出会ってから、自身が質問ばかりしていることに後ろめたさを感じていたセリニ。
「大丈夫よ」
しかしアルーセが明るい表情と声色で問題ないと現わした。それによってネガティブな感情が晴れたセリニは質問を再開した。
「先ほど言った雷ですけど……それが氷を砕いたように見えて……攻撃にも使う事ができるのかな? って」
目前で雷が落ちた光景をを思い返しながら口にしたセリニにアルーセは「鋭いわね」と感心した色彩の声を向ける。
「貴女の予想は当たり――固有の領域転移を得ると二種類になるのよ」
「二種類ですか」
「ええ、一つは演出だけ変わった領域転移、そしてもう一つはセリニちゃんが見かけた攻撃判定がある領域転移よ」
「急襲に使えそうですね」
転移と同時に攻撃が可能であるならばそれに相応しい戦闘に於ける手段を口にしたセリニ――しかし少し考えるとそのように活用するのは難しいと思えた。
――そもそも。
――マップから敵は見えないよね。
領域転移をどのように使用するのか知らないが脳裏に過る想像では表示された地図から好きな地点を選ぶ。
そんな映像であった為にそこから敵対者を捕捉する事は不可能と断定した。
――急襲には……使えないかな。
攻撃を仕掛けたとしても敵が近くにいなければ意味が無い――戦闘要素があるゲームを頻繁に遊んでいた故にそう判断して残念と思いながらも即決した直にセリニの耳朶に当たるのは――
「使えるわね」
思考する前のセリニの言葉を肯定したアルーセの声であった。




