第48話 銀髪弓使いは独特から
響くは斬撃音――煌めく刃に刈られたゴブリンの命の数値は零となり、その身は既に消えている。
しかしその背後にあった細木も同時に切断されて宙を舞い。音を立てながら地面に落ちる。
その光景を既にその場から離れていたセリニは見ていた。同時に周囲を警戒する。
――他のゴブリンは……いない。
フィールドで初めてモンスターに攻撃された状況が不意打ちであるが故に第三の襲撃に対する警戒を怠らなかったセリニだが気配を感じない事もあり、息を吐いて気持ちを落ち着かせる――それと同時に身体の内より湧き上がるのは高揚感であった。
――想像以上……仕込み短剣は面白い。
練習無しのぶっつけ本番であったが使う事に成功した――その誠がセリニの心を熱くした。
――けど……強敵相手には。
しかし仕込み武器による攻撃を仕掛けた直後に身体の軸がぶれてしまい。三秒程度の無防備な時間を晒してしまった。
今回は倒せたから問題にはならないが相手のHPが残っていたら反撃されていた可能性があったとセリニは考える。
――使い続けて……使いこなせるように。
されども初めて使用した際に確かな手応えを感じていたセリニは今後の事を考えると心が躍らされていたその最中にアルーセの声が届いた。
「いきなり実戦になったわね」
アルーセの声は普通に話しかける色合いで突拍子なものではなかった。だがセリニにとっては意識外な出来事であったためにとてつもなく驚いた。
「は……はい!!」
――あ……アルーセさんもいたんですよね。
大声を上げるその傍らに別のプレイヤーが近くにいた事を頭から離していたセリニ。
――気をつけないと。
ここがオンラインゲームの世界である以上、これからも他のプレイヤーと関わる事があるのは間違い為にパーティーで行動するときは周りを見ないで考え込むのは程々にしようとセリニは心に釘を刺す。
「けどなかなかに使いこなしていたわ」
「そ……そうですか」
「ええ、わたしも他のゲームで隠し武器を装備した事あるんだけど、結局やめちゃったわ」
「え……そうなんですか」
自身とは真逆な結論を出したことが気になり、それが声として現れるとアルーセはセリニが気になっていた点に関して話した。
「隠し武器に意識が向いて、他がおざなりになるのよ」
「それは……分かります」
実際にセリニも仕込み武器を意識してしまい、他の動きが遅くなってしまった事を既に把握していた故にアルーセの言うことに納得の言葉を向ける。
「だから初めての使ってゴブリンを倒せたセリニちゃんはすごいと思うわ」
褒められている状況であったセリニだが初使用で上手くいったのには明確な理由があったためにそれを話した。
「あの……偽……じゃなくて羽根を出したときに近かったから、何とかなっただけです」
自身の感覚をそのままにセリニは明かした。
「羽を生やせるスキルもあるのね、弓の使い方もあるけど独特な戦い方だわ」
「独特……」
自身の戦い方は普通ではないことは自分自身が一番理解できていた為に他者から言われることは最初から想定済みであった――だが直接指摘されてしまうと想像以上に気がかりとなってセリニの心に押し掛かる。
「悪く言っている訳じゃないわ」
そんなセリニにアルーセは明るい声をかけるとそのまま言葉を紡いだ。
「遠距離から射るだけが弓矢の戦い方じゃないとわたしは思うからあなたがやりたいようにやればいいんじゃない?」
アルーセが語った言葉は弓矢を使い続けるかどうか迷った時に考えた事と近いと感じ取ったセリニは背中を押して貰ったかのような心持ちとなった。
「それにわたしもステータスも独特よ」
「え……」
「全てのポイントを技巧力に割り当てているわ」
「そ……そうなんですか」
それがアルーセのステータスだと知ったセリニ。
――けど……アイテム作成の為なら……それくらいしないと。
物を作成するのがメインならばそうするのは当然では? と思ったセリニ。
「驚くわよね」
そんなセリニの心境を察したアルーセは疑問に対する解を口にする。
「レベルが上がったときにステータスを上げるポイントを半分技巧力に振る。そうすればアイテムを作成するスキルを習得する時に必要な技巧力が満たせるのよ」
「そうなんですね」
セリニも鏃を作成可能とするスキル【鏃作成】を初期から保有している。それを通してアイテムを作るスキルを習得する為には基本的に技巧力の数値が必要な事は知っていた故に瞬時に納得できた。
「なら……技巧力にステータスを全振りしなくても」
セリニは話を聞いたと同時に抱いていた疑問が声として現れる。
「その必要はないわね」
セリニの言を肯定したアルーセはそのまま言葉を繋げる。
「本来なら残った半分のステータスは他のステータスに振るのがセオリー。人気なのは回復魔力を多めにして魔法での回復や補助を可能にする型」
「想像……できます」
アイテムが使用できて更には回復と補助魔法も可能。パーティーを組めるゲームならばその役割をこなすキャラクターは一人は欲しいと今迄のゲーム経験からセリニは思った。
「けどわたしはあえて技巧力一点に絞っているわ」
そう語ったアルーセの声と表情に誇りの色彩が込められていると感じたセリニはそのステータスの振り方をする理由に当たりが付いた。
「こだわりから……ですか?」
その言葉にアルーセは即時に反応する。
「そうよ、ステータスの数値に上限が無いゲームなのだからそういった楽しみ方もあるでしょ?」
そう言われたセリニは自身も楽しい故に近接武器ではなく弓矢を継続して使用している身でもある為に全面的に同意できた。
「そうですね」
「それに半分のステータスを技巧力に振っているプレイヤーの中に有名なプレイヤーがいるわ――ならわたしはわたしで別路線を目指すのもありでしょ?」
個性を出すためにステータスを変わった方向に弄くることを時折やっていたセリニはその選択を尊重できた故に頷いて肯定する。
「それと……有名なプレイヤー……ですか」
個人的に気になったことをセリニは問う。
「そうよ、名前はクレア。レイとコンビを組んでいるわ」
「クレアさんに……レイさん」
「間違いなくメガロスクエストに参加するから名前は覚えておいた方がいいと思うけど――あまり関係ないかもしれないわね」
一聴すると矛盾な内容を話したアルーセ。
セリニはメガロスクエストに関わる事を決めた為に興味が持ちその意味を尋ねた。
「どういう……ことですか?」
「有名なプレイヤーが沢山いるのよ、わたしが知っているだけでも10人は超えているわ」
――多い……それとも少ないのかな?
ツインファンタジーワールドが初めてのオンラインゲームな為に基準とするべきものがなかったセリニは心の内では思考――心の外側では沈黙したままアルーセの言葉を聞いた。
「だからメガロスクエストに参加したら名前付きとのプレイヤー対峙する確率は高いと思うのよね、それに今は有名じゃないプレイヤーの中には強いプレイヤーもいたりするから、要注意な人物のことを考え始めてたら切りがないのよ。
上位を目指すには出会ったプレイヤーを倒すしかないわ」
「細かいことを気にしてもしょうがない……そういうことですね」
アルーセの言を意訳しながらセリニは身体の内側で闘志が燃え始めている。
――プレイヤー全員を倒せばいいだけだよね。
戦闘するゲームが好きなセリニであるが強敵との手汗を握る戦いをする瞬間が最も好みな状況であり、それは今遊んでいるVRゲームでも変わらないと黒衣のゴブリンとの戦いを通じて感じ取っていた。
――そうした方が楽しそう。
故にアルーセの言い分に納得できた。
「そうね、けどメガロスクエストにはモンスターも出現するからどんな展開になるかわからないけど」
メガロスクエストに関する新たな情報を明かしたアルーセ。
しかしそれを聞いた瞬間に言葉の羅列の中に先に起きた事と関わっているものが含まれいる事にセリニは気づいた。
――あの……モンスター達は。
その事がとても気になったセリニはアルーセにその事を尋ねてみることにした。




