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▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
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第99話 ▶超弩級の大作戦

 紅色の着物幼女、鳥子は軽く咳払いをする。

「時間が惜しいわ。走りながら説明するわよ、あたしと風音についてきなさいっ」


 言うや否や、鳥子は混戦状態のフィールドを離れ、山を下り始めた。いまいち状況が掴めない一同もそれに続く。


 鬼は追ってこなかった。先に逃げた生徒同様、追いかける価値もないと判断されたのだろう。鳥子はそう解釈すると、先の話の続きを始めた。


「弩級からくりについては……今さら説明するまでもないわよね?」


「要はめっちゃ強いからくりだろ? 戯岩島の時も死にかけたからなぁ」

 がりがりと自身の坊主頭を掻くジョー。その言葉を受け、鳥子は大きく頷いてみせた。


「そのくらいの解釈で結構よ。で、めっちゃ強い弩級からくりの上位が、超弩級と呼ばれる唯一無二の称号……『王ノ主玉(おうのおもだま)』。正真正銘、最強のからくりよ」


 最強、というワードにあちこちからどよめきが生まれる。

「超弩級からくり……そんなもんがこの島にあるってのか?」

「あるってのよ。さて、ここまで言えばもうわかるわね。あたしが何を言いたいのか」


 ジョーは真っ先に口を開く。

「わかったぜ! そのナントカ言うからくりを探しに行くんだなっ?」

「ご名答。だけど、正確には少し違うわね。場所はすでに把握済みなのよ」

「へえ、どこに保管してあんだ?」


「学園長室……校舎の地下深くにある一室よ」

 再び生徒たちの間にざわめきが走る。毎日利用しているエレベーターで地下へ行けることも、そんな隠し部屋があることも誰一人として知らなかったのだ。


「地下行きのマスターキーは語り手様から預かっているわ。これを使って、エレベーターから地下へ潜る。『王ノ主玉』を持っての帰還。それが、あたしたちの勝利条件よ!」


 鳥子の走る速度がわずかにあがった。

 秘匿された部屋の中に、鬼さえおののく切り札が眠っている。最終兵器の開示。単純にして明快な作戦だ。


 ふむ、とガタイのいい男が顎をしゃくった。

「ちょうどいいのである。校舎に戻るというのなら、ワガハイのからくり、『ミサイル砲台』を取りに行けるのであーるる」


 それは、初戦でAランクに負かされたBランク。その代表に選ばれた一人、ゴーマンだった。


 それがどうした、とジョーは問う。ゴーマンは鼻で笑い飛ばした。

「わからないであるか? 『ミサイル砲台』をうまく利用すれば、噴射の勢いで空を飛ぶことだってできるのである」

「……ま、まさか。お前、超弩級からくりを抱えて山中のフィールドまでひとっ飛びするつもりか?」


 ジョーの顔が青ざめる。


 校舎に着けば、彼らは超弩級からくりと同時に『ミサイル砲台』を回収できる。ゴーマンは『王ノ主玉』を持ったままそれを利用し、自身ごと決戦のフィールドに舞い戻るつもりなのだ。


 そうすることで、最終兵器は戦場へと運び込まれ。

 戦いは終結する。

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