第97話 ▶アンジュ、ビドゥ、トロア
勝気な少女、アンジュ対観客席の生徒たち。
身体の引き締まった巨漢、ビドゥ対真津璃たち。
そして、トロア対備然。
各地で三連星との戦いが始まった。
トロアは右手の平を備然に向けると、赤い色のエネルギー弾を撃ちだした。当然のように行われる異能攻撃を、備然は驚きもせずかわしていく。
しかし、このままでは彼の防戦一方だ。
トロアはニヤリと口角をあげる。
「忘れたわけではあるまいな。私は気高き鬼の民。片や、お前は力なき人間のクズだ。……結局、矜恃を捨てても得るものなど無かったわけだ」
「……ッ!」
備然の地雷を的確に踏み抜くトロア。皮肉にも、備然には彼を煽る姿がかつての自分と重なって見えた。
「……かつて似たようなことをしていた手前、人のやり方にとやかく言うつもりはない。だが、相応の覚悟はしておくことだ」
彼は逃げることをやめた。後ろを振り返り、黒コートの胸ポケットから一枚のカードを取り出す。それを掲げたところで……。
一本の矢が、トロアに向けて放たれた。
「……矢、だと?」
前触れのない介入に備然は眉根を寄せる。心当たりは、あった。
「僕は信じていたよ。キミは、あんなところで膝をつく男じゃない」
「拓郎」
Aランクの仮設テントから飛び出してきたらしい。
そこには、光の弓矢こと、『ロビンフッドの悠弓』を構えた拓郎が立っていた。
「水臭いじゃないか、備然。僕だってAランクの一員なんだからさ。それに、今は状況が状況だ。キミが嫌だと言っても助太刀するよ」
「……勝手にしろ」
備然は俯きながらポツリと呟いた。
「フン。雑魚が増えたところで問題あるまい。二人纏めてかかってこい」
▶▶▶
「ほら、どうしたどうしたっ。アンタら本当に桃太郎なわけ?」
一方、アンジュサイドはすっかり彼女の独壇場であった。純粋な力量差はもちろん存在する。が、なにより観客の生徒たちはからくりを所持していないのだ。祭事だと気を抜いていたら、まさかの急襲である。護身武器など持っていなくて当然だ。
「くそっ! からくりさえあれば!」
Dランク応援団長、ジョーは不毛にも近いヒットアンドアウェイをひたすら繰り返していた。彼の持ち武器である『磁力バット』は、現在唯人に貸し出されている。
幸い、応援団はじめ観客はかなり人数が多い。そのため、数で攻めるのが最も合理的なのだ。
アンジュは手にした二丁拳銃で人の群れを乱れ撃つ。その表情は辛辣だ。真剣味に欠け、まるで目隠しをして撃っているかのような適当ぶりである。
「ほんっと、つまんないわね。近づいては逃げる腰抜けばっかり。女だから手を出せない、なんてダサい言い訳聞きたくないんだけど」
見るからに不機嫌なオーラを放つアンジュ。そんな彼女を動揺させたのは、同胞であるビドゥの声だった。
「お嬢さん!」




