第95話 ▶唯人、奪還作戦
「さて、久方ぶりだな。元気してたか?」
決勝戦が行われたフィールドの中央。
ビドゥは棍棒のような腕を組んで、真津璃たちを迎え入れた。当然、事情を知らない醍醐たちからは不振な目を向けられる。
「おい。どういうことだ、真津璃、テメェ」
「フゥン。あのマッチョと知り合いなのか?」
「真津璃さん……」
「別に大した縁でもない。ただの、因縁だ」
彼女はギッと鋭い視線をビドゥに向ける。
一度倒した相手だ。備然と戦うわけではない。それなのに。
(この威圧感……明らかに以前と違う。しかも、こっちは決勝戦を終えたばかりのコンディションよ。余裕がある状況ならまだしも、なんでこんな時に!)
真津璃の身体は先のAランクとの闘いで憔悴している。毒はいまだ全身を痺れさせ、完璧とは程遠い状態だ。
そして、それは真津璃に限ったことではない。醍醐は道中での襲撃、天地は自傷上等の電撃がダメージとして残っている。
唯一無傷なのは月尊だが、助太刀できる戦闘力を持ち合わせてはいない。
(私がなんとかするんだ。あいつに勝って、唯人を助けるっ!)
真津璃が腰を低くしたところで、ビドゥが出し抜けに頭を下げた。
「自己紹介がまだだったな。俺はビドゥ。吉良三連星の一人で、特製のプロテインを作るのが趣味だ」
「私は真津璃。特に恨みはないけど、あんたとは決着をつけなきゃいけない気がする。だから……斬らせてもらうぞっ」
真津璃は言い終わるより先に刀を抜いて突貫。他の三人は、極力固まらないようビドゥに接近する。
「覚悟しろ! あんたは必ず私が倒すっ」
「あくまで本人は真正面から向かってくるか。いいぞ、俺好みの戦闘スタイルだ。けれども、そんな調子で俺の攻撃を受けきれるかな?」
真津璃は口を真一文字に結ぶ。
ずいぶんな自信だ。しかし、まだビドゥの間合いには入っていない。仮に拳や蹴りが飛んでこようと、リーチの長さなどたかが知れている。
(あいつが動くより先に、討つ!)
真津璃はそう心の中で呟き、足を踏み込んだ。
刹那。少し離れたところで大爆発が起こった。敵味方含め、その場にいる誰もが一瞬動きを止める。
今はよそ見をしている場合ではない。
そう自分に言い聞かせ、ビドゥへの突貫を再開する真津璃。彼女は視界の隅に映るそれを見た。
(あの男……! さっきまで唯人とやり合っていたのに、どうして、もうピンピンしてるわけっ?)
三連星のリーダー格、トロアと対峙する備然の姿を。




