第87話 ▶次なる手
「備然氏、銃口より大きなエネルギー弾を、刀だけで受け止めましたぞ! その表情は余裕そのもの。さぁて、唯人氏の次なる手はなんなんですかな……っ?」
そんなもん用意してねえよ。サラッとハードルあげやがって。ぐぬぬ、とゴシップに向けてガンを飛ばし、弾丸をぶった斬ったバケモノに視線を戻す。
なんだこいつ。
弾丸って両断するもんじゃねえだろ。
備然は両断したそれを踏みにじると、挑戦的な笑みを浮かべた。
「私にも見せてくれよ、キミの次なる手とやらを」
だからそんなもんないんだっての。
しかし、こいつの前でポーカーフェイスを崩すのは癪だ。
「あ、当たり前だろ。言われるまでもねえ。だったら、お望み通り見せてやろうじゃねえか。俺の裏の手を……!」
そう宣言して俺は腰元に手をやる。掴むものは刀じゃない。応援団長こと坊主頭のジョーから借り受けたからくり、『磁力バット』だ。
俺は口の端をつとめて釣りあげてみせる。
「さあ、始めようじゃねえか。ショータイムってやつをよぉ!」
「ああ、戯岩島で見たバットだな。対象を引きつけるのだったか」
はいバレました。あの場にいたんだ、知ってるよねそりゃ。そもそも『第三の目』もあるのだ、戦術をバラさず闘うことなんてできねえよ。
それでも。
「やるしかねぇよなぁ!」
バットを握ってスイッチオン。狙う先は備然の腰元。さあ、バックルに飛び込め。飛び込んだ後のことは、まあ、その時に考えりゃいいだろ。
……。
「あれ?」
動かない。対象に引きつけられるはずの力が、どうして。頭の中を疑問符が埋め尽くす。それを打ち破ったのは、他でもない備然だった。
「アホめ、それくらい対策済みだ。バックルを付けずともベルトは留められる」
「なんだって」
間抜けな声がフィールドにあがる。もちろん俺の心の叫びだ。まさかそんな根本的な部分から対策されるとは思わなんだ。身を切りすぎだろ、お前。
「くそっ……だったら」
なんでもいい。備然の身につけている何かが、『磁力バット』に引っかかってくれたらいいんだ。ジッパー、『第三の目』……なんでもいい。何かないのかっ。
「諦めろ。私の身につけているものから、磁力を含むものはすべて取り払った。抜かりはない」
「お前ほんと嫌い」
対策済みという言葉に嘘偽りはないようだ。どうしたものかな、頭をひねって考えてみる。
今は備然が舐めてやがるから攻撃してこないが、それもいつまで続くかわからない。是が非でも一撃を入れてやりたいところだが……。
「あっ」
刹那、ふと気づく。
それは足元に張り巡らされた砂利たち。
もしかしたら、もしかするかもしれない。
「頼むぜ、『磁力バット』……信じてるからな!」
スイッチオン。
向ける先は、備然……の足元に広がる砂利である。
磁力磁力って言ってますけどバックルって磁石にくっつくんでしょうかね。手元に磁石がないのでちょっとわかんないです。……この疑問を抱くの遅くないですかね。




