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▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
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86/186

第86話 ▶出し惜しみ無し

 さて。


 決戦の火蓋が切って落とされたわけだけど、果たしてどうやって攻めたものかな。なにせ備然には心の動きを読む『第三の目』があるのだ。下手に動くとかえってピンチを招きかねない。


(……って考えていることも筒抜けなんだろ?)


 と、強い念を送ってみるが、備然は相変わらずの仏頂面だ。食えない男である。


 やめだ。結局、俺には稽古の時に行った対人の構えしかできないのだ。刀を抜いて備然を睨む。


「ほう、刀を使うようになったか。以前までのキミなら、チンピラさながら拳で語り合っていただろうに」

「驚いたか? 俺だって日々進化してんだよ」


 結構、と備然は自身の腰元から刀を引き抜いた。

「進化したというその力、私が見極めてやる。全力をけて来るがいい」

「当たり前だっ!」


 俺は地を蹴り、備然に切迫。二本の刀がフィールドの中央で衝突した。模造刀なのでキンキンなどという音はしないが、感じる重みは本物だ。


「ちぃっ……!」

「どうした、唯人? まさかもう腕が痺れてきたのか」

「冗談っ。勝負は剣戟だけで決まんねぇんだよ」


 このまま刀で攻めることを悪手と判断した俺は、一旦後退したのちにポケットから拳銃を取り出す。生力を弾丸に換えて撃ちだすからくり……『魔(ガン)』だ。


「おーっと、唯人氏。接近戦は不利と感じたか、遠距離武器にチェンジですな! これに備然氏、させるかとばかりに距離を詰めていきますぞ!」


 様子見のつもりだったが、備然は思いのほか素直に攻めてきた。

 牽制の意味も込めて、まずは軽めに行こう。力が広域に及ぶ様をイメージしながら引き金を引く。

「『散・魔銃』!」


 ダダダダ……


 横に避ける、という選択肢を封じ込める散弾。

 さながらショットガンだ。


 備然は、咄嗟に後ろに下がることで回避。わずかに口角をあげてみせる。

「器用なことをするようになったじゃないか。悪くない手だ。しかし、まだ足りない」


 備然は回り込むようにして向かってくる。こちらも追って撃ち続けるが、範囲が広い分威力は控えめだ。強引に突っ切ってくる。


 かくなる上は。


「出し惜しみはできねぇよなぁ……! 『破・魔銃』っ」


 一点集中の大技で、備然に圧力をかけるんだ。当たってくれよ? 引き金を引いた瞬間、肩がずんと重くなる。『破』は一発がデカい代わりに生気の消費が激しいのだ。


 頼むぞ……!

 激しい衝撃とともに砂塵があがる。


「なっ」

 砂が晴れると、そこにはドッジボールサイズの光る弾丸を、刀一本で受け止める備然がいた。


「まだ、足りないな。唯人っ!」

「バケモノかテメェ……!」

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