第65話 ▶作戦会議
あらすじ:ランク対抗戦のメンバーは?
ランク対抗戦の出場メンバーに、元Aランクの実力を持つ真津璃と醍醐が選ばれた。控えには天地……あとひと枠。
俺は胸のモヤモヤに苛まれながら、ことの成り行きを見ていた。それを見透かされたらしい。ジョーは腕を組んで不敵に笑った。
「なんだよ、唯人。その物欲しそうな顔は。本当はお前も出たいんだろ?」
「いや、俺は」
「なにしおらしくなってんだよ、らしくねえ。……闘いたい相手がいるんだろ?」
胸を打たれた気がする。そうだ、俺には負けっぱなしの相手がいる。戯岩島ではやむなく手を組んだが、今回の対抗戦、あいつにリベンジを果たす絶好の機会だ。
独守備然に勝つ。
「……月尊ちゃん、俺にも闘わせてくれないか」
「ええ、わかりました! ……他に出場したい方はおられませんね?」
相変わらずスッと決まってしまった。なまじ文句を言う人がいないので余計に申し訳ない。だが、決まった以上は全力投球だ。
ランク対抗戦。俺たちは、Dランクの誇りと尊厳をかけて闘う。出場しないやつらの分も、絶対に負けられない。
「それでは、チームも決まったことですし、さっそく使用するからくりを選んでいきましょうか」
「からくりを……選ぶ?」
月尊ちゃんの言葉に俺は首を傾げる。
「同じランクであれば、所有者が異なるからくりを使用してもオッケーなんですよ」
「ほほう! つまり、参加しない人のからくりを借りて闘うことも可能というわけですな」
ゴシップが興味津々に食いつく。こいつ、そういえばからくりを複数持ってるんだっけな。
月尊ちゃんは声のトーンを少し下げる。
「……といっても、今回の対抗戦は『力』に限ったものです。『智』や『心』に特化したからくりでは使い所がないので注意しなくてはなりません」
いわゆる攻撃型のからくりだな。ゴーレムの時もそうだったが、攻撃手段のない俺と真津璃はかなりの苦戦を強いられた。
「要は、大将の『透紙眼鏡』みたいな限定的すぎるアイテムは活躍しないってことだな」
「心配ご無用ですぞ。小生のからくりコレクションはまだまだありますからな」
したり顔で眼鏡のブリッジをあげるゴシップ。もしかしてこの男、からくりを買いすぎたせいでキビダンゴをほとんど持っていないんじゃないだろうな。
「からくりなら小生がお貸ししますぞ。全部はちょっとプライバシーがアレですので、こちらで選んだものを後日用意しましょう」
ダブルピースをしながら「任せろ」宣言する子狸ゴシップ。肩車しているジョーもニッコニコだ。
「でもよォ」
と、そこで低い声で待ったをかける醍醐。テーブルの上に足でも置いているかと思いきや、姿勢をただして無駄にお行儀はいい。
「メインサブ制度だったか? 無制限にからくりは使えねぇんだろ。途中で換えが効かねぇんだったら、何を選ぶかは結構重要になるぞ」
「ハッ、俺様はこの『バリ乾電池』一つで世界を獲る。サブウェポンなど不要だ」
「テメェは控えだろうが」
ううむ、からくりの取捨選択か。ゴシップから貰った『魔銃』しか持ってない俺からしたら贅沢なお誘いである。
「ちなみに、出場される皆さんはどんなからくりをお持ちですか?」
「『幻影塗料』一つだ。これを塗ると、対象が私の念じたものに見えるようになる。実践でも使えなくはないが、攻撃系のからくりが欲しいのが本音だ。むろん、刀でも闘えなくはないが」
と、ちゃっかり剣術も心得ているとアピール。真津璃なら本当に刀一本で十分じゃないかと思っちまうね。
かたや醍醐は不満げに鼻息を吐き出す。
「……俺のからくりは、『マッスルスーツ』。着ると全身の筋肉が強化される代物だ」
「……そのひよこちゃんが、ですか?」
「いや、これは私服だ」
「そうですか」
笑顔を崩さず返す月尊ちゃん。このスマイルが時々恐ろしく感じるのは内緒だ。
じいっ、と俺が視線を飛ばしているのに気づいたのか、醍醐はわかりやすく舌打ちした。
「なんだテメェ。俺に言いてぇことでもあんのかよ?」
「お前、本当にそれだけなのか?」
「とんちは嫌いだ。はっきり言え」
「一つってことはないだろ。お前が本当にAランクなら、隠し持っていてもおかしくねえ」
醍醐の堀がいっそう深くなる。
「くだらん言いがかりだな。Aランク相当の実力と言うなら、そこの真津璃だってAランクだが所持数は一つだろうが」
「真津璃は、エキシビションで備然とやり合ったせいで敬遠されている。相手がいないんだよ。で、それを抜きにしてもあいつの枚数なら……」
「唯人」
真津璃に諭されて目が覚める。危ないところだった。ここでもし真津璃の所持数を明かしてしまったら、非常にややこしいことになる。
深呼吸をして頷いた。
「すまん、話を逸らした」
「わかればいいんだよ」
「で、俺のからくりが『魔銃』だ。生力を弾丸に変えて撃つことができる」
……なーんか引っかかるんだよな。




