第64話 ▶精鋭たち
「俺様に楯突いたことに敬意を評し、今一度名乗ってやろう、我が名は天地白夜。鬼を滅し、世界に安寧をもたらさんとする者だ。……お前は?」
口だけ達者な天地の名乗りに、軍人っぽい男は胸を張って答える。
「テメェに教える名前は、ねえ」
「フッ……自己紹介もできんやつが頂点を語るとは笑止千万。そんなことではクラス委員長にもなれやしないぞ」
「ンだと?」
勝手にやってろ。視線を戻そうとした瞬間、扉の方から軽快な声が飛んできた。
「はーい、皆さん! お待たせしてすみません。この度は、お集まりいただきありがとうございます。Dランクのお世話係を務めております、団月尊です! よろしくお願いしますねーっ」
黄色い着物に三日月の髪留め。天真爛漫という言葉を体現したかのようなお姫様、月尊ちゃんのお出ましだ。あれだけうるさかった野郎共も嘘みたいに閉口する。もはやこれは……。
「カリスマだな」
「カルトの間違いでしょ」
むっ。
「まもなく夕ご飯のお時間ですので、先にお皿だけ取っちゃいましょうか。全員揃っているようですし、皆さんがお食事されている傍ら、私がお話させていただきますね」
その言葉を皮切りに、ささやかな夕食が始まった。今日は肉じゃがである。月尊ちゃんの作った肉じゃがもいつか食べてみたいものだ。
全員がトレイを持って席についたのを見て、月尊ちゃんは全体を見渡すように言う。
「えーっと、ですね。ここにいる皆さんには今朝お伝えしたと思うのですが、改めまして。今から二週間後に桃栗祭というお祭りが桃神郷で行われます。して、そこでランク対抗戦という『力』の大会が開催されます」
誰もが真剣な面立ちで聞いていることを確認、月尊ちゃんは大きく頷いて続ける。
「……対抗戦はトーナメント形式で、三対三の勝ち抜き戦です。したがって三人の参加者を選びたいのですが、希望者はおられますか?」
一同、沈黙。そりゃそうだよな。Dランク全員の責任を背負うわけだ、ノータイムで手を挙げるやつなんていやしない。
「……おい、天地といったな。テメェ、最強だったら真っ先に行くべきじゃねえのかよ?」
「アホめ。ここで自ら参加の意思を示してどうする。そんなことをすれば俺様のありがたみが薄れてしまうではないか」
何言ってんだこいつ? 俺と強面男の視線が刺さる。それに屈することも無く、天地は傲慢に息を吐いた。
「俺様はシードだ。最終兵器的、控えだ。……そういう枠もあるのだろう、月尊さん?」
「はい! 一応控えの枠は一つ存在します。チームは途中で変更できませんからね、誰かが負傷した際のピンチヒッターとして出ていただきます」
「ピンチヒッター! 素晴らしい響きだ。……もちろん、俺様は闘うための力も手に入れた。これを刮目せよっ」
そう言ってやつがポケットから取り出したのは、とても懐かしいからくりだった。掲げられる、単一サイズの電池。
「唯人、あれって……」
「ああ、『バリ乾電池』だな……」
それは、俺が初めて目にしたからくり。まさかこんなところで再会することになるとはな。思わぬ偶然である。
「フフフッ……からくりを手に入れた俺様に隙はない。AランクもBランクもかかってくるがいい!」
恍惚とした表情で高笑いをする天地。マジで決まっちまったぞ。別に依存はないけれど。
「で、本チームの三人ですが……私が個人的に二人選出しました。真津璃さんと醍醐さんです」
反射的に真津璃を見る。やつは無関心に頷いた。こいつは、まだわかる。元Aランクであることを抜きにしても備然に拮抗した実力者だ。
けれど。
「醍醐って誰だ? そんなやつDランクにいたか」
「俺だよ」
しぶしぶといった様子で声をあげたのは、さっきまで天地と言い合っていたひよこシャツの男。
「……なんだテメェら、その反応。ぶっ飛ばすぞ」
まあまあ、と月尊ちゃんは笑顔でいさめる。
「選出基準は単純明快、元Aランクの経験がある方を選ばせていただきました。元Aということは、入学当時のランクであることを意味します。つまり、キビダンゴの枚数に関係なく、総合的な実力によって振り分けられたということ。お二人の実力は本物でしょう」
月尊ちゃんの声色は本物だ。本気で考えたうえで、この二人を選出したのである。ならば文句は言えまい。
「……それで、最後の一枠なのですが」
今までずっと檜皮色=黄色っぽいイメージを抱いていました。そして、すみません。諸事情によりいつもより短めでお送りしました。




