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▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
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第59話 ▶8月31日

 あらすじ:また保存しないまま更新してキエエってなりました。

      今日お仕事がお休みにならなかったら、たぶん更新に間に合わなかったと思います。

 問題はいつだって山積みだ。

 先の課外活動から三日、生死を賭けたサバイバルからやっと日常生活に戻れ始めた頃である。もうしばらく命をベットするような思いはしたくねえな、とジョーと談笑したのがつい昨日のこと。

 だが、俺は頭のどこかでわかっていた。一難去ってまた一難、という言葉にもある通り、俺たちは問題から逃げ切ることなどできないのだ。ましてや、新しい生活を始めたのであれば尚更である。毎日が新発見とはよく言ったものだ。


 端的に言おう。今日は八月三十一日だ。

 本土の学生諸君は終わらないホームワークに追われていることだろうが、俺たち桃神郷の学生に夏休みの宿題なんてものは無い。といっても、どの道別件で苦しむことにはなるわけだが。


 別件って何かって?

 定例監査のことだ。今まで何度か説明を受けていたが、桃神郷では月末になるとキビダンゴの枚数を申告しなければならない。その結果に応じて翌月の所属ランクが決定する。ランクが変動すれば、当然拠点である寮も変わる。部屋も変わる。なんてことのない、席替えやクラス替えみたいなものだ。


 それが、俺たちにとっては由々しき問題なのだ。

「……どうするよ、真津璃」

「参ったわね。後回し後回しにしてたんだけど、ついにその時が来てしまった」


 八月三十一日、夜八時十三分。

 場所はツクヨミ荘201号室で、目の前には神妙な面立ちの真津璃。

 俺は人差し指をピンとあげる。

「問題その一、お前の風呂事情」

「そうね。今まであんたに見張ってもらいながら入ってたけど、()()()()リスクが出てきてしまう。だけど、これはまあいくらでも対処はできるわね。Aランクなんて間違いなく個室だろうし」

「問題その二、俺にAランクなんて勝ち取れるわけねえ」


 知ってる、と即答する真津璃。それはそれで悲しいな。

「最悪、あんたと同じ寮にいれば問題ないからお風呂周りは別にいいんだけど……」

「そうだな。もっと困ったことがある」

 問題その三、俺がまた真津璃と同じ部屋にあたるとは限らないということ。


「唯人、あんた今キビダンゴ何枚よ?」

「……さ、31枚。いや、違うんだよ。誰も俺と『決闘』してくれなくて。で、運よく闘ってくれても2,3枚程度しか賭けてくれねえんだよ」

「なんだか前にも似たようなことを聞いたような」

「そ、そんなことはいいんだよ。で、お前は?」

「126枚。私もあんまり闘えてないのよね。課外活動の反動か知らないけど、みんな授業が終わったらすぐ帰っちゃうんだから」

 真津璃は愚痴っぽく吐き出すとそのままベッドに転がり込む。その際、ジャージからチラリと可愛らしいへそが見えた。こいつ、日に日にだらしな――無防備になっている気がする。俺じゃなかったら秒で襲われてるぜ? 真津璃なら足で返り討ちにしそうだけど。


「って、あれ。126枚? お前こないだ『幻影塗料』でけっこう出費してなかったか」

「忘れたの? あのからくりはマスターに譲ってもらったのよ」

 つまり、百枚近くのキビダンゴを有していながらタダで済ませたわけだ。ズルいぞ。

「なんか不満そうな顔してるけど、あんただって色々貰ったんでしょ?」

「そりゃ、そうだけど」


 俺は鏡台の引き出しから『魔銃』を取り出す。生気を弾に込めて射撃できる悪魔のアイテムだ。あの時は成り行きでゴシップから貰っちまったけど、最近になって少し気にしている。大丈夫か、俺。後から凄い額を請求されたりしないだろうな。

「それ、ヘタレのあんたが持ってても意味ないでしょ」

「うるせえな。俺はトライフォースに認められた男だ」

「トライフォースに認められたのはあんたじゃなくてリンク君よ」

 サンタの正体を躊躇なく明かすタイプだな、こいつ。


『魔銃』を引き出しにしまって、俺は机の上のそれをひっくり返す。砂時計だ。

「よくそんな入れ物持ってたわね。ゴシップさんから貰ったの?」

「戯岩島から帰ってきた時、海岸でたまたま拾ったんだ。波に乗って浜辺まで流れ着いたんだろうな」

 へえ、と興味津々にそれを見つめる真津璃。


「で、中に入っているのが元『破壊神』ってわけね」

「元って付くだけでなんか間抜けっぽい響きに聞こえるよな」

「ごめん。あんたの笑いは理解できない」

 くそっ、いちいち毒のある言い方しやがって。


「じゃあさ。結局それはマスターに渡しちゃうの? からくりなんだから、元を辿れば一応あのおじいちゃんの所有物でしょ」

「いや、今のところその予定は無い。落ちてる時点であいつは野生に還ったんだ。すでに誰のものでもねえよ。……それに、もし問題があるんだったら向こうから来てくれんだろ」

「バレなきゃ犯罪じゃない理論ね。私は肯定も否定もしないけど」

「わかりやすい予防線張りやがって」


 それで何の話をしてたんだっけ。ああ、そうだ。キビダンゴの話だ。

 真津璃は仰向けのまま両手を宙に掲げる。

「基準がわからないから何とも言えないけど、少なくとも所有枚数が126と31じゃ同じランクってことはあり得ないでしょ。何度も『私をDランクにしてください』とも言えないし、どうしたものかしらね」

「俺とお前でマッチポンプして枚数を揃えるってのはどうだ。端的に言えば、お前のキビダンゴを俺に47枚寄越すんだ。そうすれば」

「それで定例監査を凌げるの? だったら、床下に100枚ほどキビダンゴを隠して『私、26枚しか持ってないんですう』とか言えるんじゃない」


 どうなの? と俺に視線を向けてくる真津璃。仰向け(その)体勢で上目遣いになるな。

 だが、実際のところどうなのだろう。要先生辺りに訊いて、もし違反だったら『お前らそんなことしようとしてたのか』みたいな目で見られかねない。ここは気軽に相談できる人を当たってみようか。

 月の髪留めがよく似合う、元気いっぱいな女の子に。

 今回一歩も外でてないですね、この二人。散々サバイバルした後だから疲れたのでしょう。

(こういう実のない話を書くのは楽しいですね。面白いかはさておき)

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