表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
PR
55/186

第55話 ▶ヒーローは最後にやってくる

 あらすじ:備然、足をグ二る。

 足をくじいたのか、備然はおぼつかない足取りでなおも逃げ続けている。間違いなくさっきの崩落が原因だ。しかし、機械(からくり)に慈悲など無い。ここぞとばかりにあげた右足を、スタンプのように振り下ろす。


 こいつは、不味いんじゃないのか。俺の持つ『魔銃』ではゴーレムのフルメタルなボディを傷つけることすらできない。ジョーの『磁力バット』で飛んでも二次被害を生むだけだ。ならば、『悠弓(ゆうきゅう)のロビンフッド』でヒットストップを……いや、今から射てもらっても間に合わない。


 どうする……っ?

「──ドガーン、であーるる!!」

 奇怪な語尾と同時にインパクトが山の麓から飛んできた。爆音も大概だが、やかましいのはその大声。遠くにいても鼓膜が痺れるほどだ。

 衝撃は辺りの砂利やらなんやらを根こそぎ吹き飛ばし、砂煙の中から闖入者が姿を現す。


「待たせたのであるなぁ!」

 人一倍大きな身体を持つ変人、ゴーマンだった。隣には得意げに鼻を擦る天地。同胞ってこいつのことかよ。色々言いたいことはあるが、とにかく備然が無事でよかったよ。


「ヒーローは最後にやってくるものであーるる!」

 なんか言ってるが無視して備然に駆け寄る。

「無様だな、あんだけ自信たっぷりだったのに」

「なに、ここが正念場だろうが。私と鉄クズの闘いに水を差すな。邪魔だてするようなら」

「はいはい、もうそういうのいいから。一旦あの化け物とは距離を置くぞ。掴まれ」

「断る」

 全力で拒否された。足を怪我した状態でなに見栄を張っているんだお前は。無理やり自分の肩を貸して坂道を二人三脚で降りる。


 しかし、ゴーレムの進行は止まらない。

「ちっ、しつこい野郎だな」

 先のバズーカ的な何かに怯んだものの、あっという間に体勢を立て直してきやがった。拓郎の弓矢を目に受けてもほとんど効いていない。そういえば、こいつには学習能力が備わっていたんだったか。くそっ、同じ手を何度も食うほど馬鹿じゃねえわけだ。


「いい加減離せ、気持ち悪い!」

 ぶんっ、と俺の腕を振り払うと備然は一人で山を下り始めた。このまま島の外に出て勝ち逃げするつもりだ。

 ……と、やつを追おうにも後ろからゴーレムがやってくる。無駄に綺麗なランニングフォームしやがって。鉄鋼色の巨人に爆風と弓矢が入り乱れかなり混沌としている。


 かくいう俺には太刀打ちするすべがないので、大人しく逃げ回ることしか出来ない。そうこうしているうちに追いつかれ、ゴーレムは文字通りの追い打ちをしかけてきた。


『──ガガ、弩級ガ危険領域ニ侵入。解答ワード、"ジャミング"ヲ発動』

 最初は何が起きたのかわからなかった。最終って言ったくせにまたレベルアップかよ、と不条理を嘆くはずだった。けれども、目立った変化は起こらない。


 今どきの機械はハッタリもかませるんだな、と感心していると俺は違和感の正体に気づいた。


 ……静かだ。

 いや、実際にはドガンドガン地面は揺れているが、それ以外の音がパタリと途絶えたのだ。ゴーマンの近所迷惑な大声も、バズーカも。


 音だけじゃない。爆風はしなくなり、矢が飛んでくることもなくなった。

 間もなくしてゴーレムの口から答えが発表される。


『"ジャミング"、成功。コレニヨリ弩級ヲ除ク全テノカラクリハ、ソノ能力ヲ失イマス』

「はあああああっ!?」


 久しぶりに声が出たね。ここに来て……ここまで来てそんな戯言がまかり通るのかよ。だが、足を止めて地団駄踏むわけにもいかない。泣くなよ、唯人。泣くのは『破壊神』を手に入れた後だ。


 なっちまったもんは仕方ない。かと言って、ここから真津璃やゴーマンの到着を待っていては遅すぎる。行き先は一つ、備然の元だ。


 風になれ。坂道でスピードを物にして、全身の余分な要素を削ぎ落とすのだ。後方からのプレッシャーが気にならなくなってきたその時、備然を見つけた。横になって倒れている。

 否、倒されていた。


「──まったく、これだから棚ぼた戦法は辞められねぇのぜ!」

「でゴワスなぁ。まさか、Aランク最強の男が釣れるとは」

 頭が真っ白になる。


 待て。


 誰だお前ら?

 どうして、備然のコートを漁っている?


「ゴーマンも馬鹿なのぜ。同胞なんざ放っておけばよかったのさ」

「まあまあ、でゴワスよ。お陰で弩級からくりを手に入れられたわけだし、結果オーライでゴワス」

 どうして、『破壊神』を手に持っている?


 落ち着け。落ち着け、俺。

 そもそも、なぜ備然がこんな連中にのされているんだ。心の読めないゴーレムならまだしも、こんなやつらの考えなら『第三の目』で事前に察知することだって……。


 ──違う、ジャミングだ。ゴーレムのせいで普通のからくりは今、使い物にならなくなっている。それに気づかず備然は不意をつかれた、といったところか。足の不調や心身ともに積み重なった疲労も要因の一つだろう。


「で、こいつぁどう使えばいいのぜ?」

「う〜ん、とりあえず島の外に持って出ないでゴワスか?」

 そこを狙って、こいつらは。


「……ふう……」


 落ち着け。落ち着け、俺。

 これも立派な戦術だろう。漁夫の利が最適解だということは最初からわかっていたことだ。それに文句をつけるなんてあまりにもナンセンス。控えめに言って無様だ。

 ならば、俺の取るべき行動は決まっている。

「ボコす」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ