第102話 ▶今どきの桃太郎
一方、決戦のフィールドでは備然、拓郎VSトロアの戦いが続いていた。拓郎が『紫毒塗料』付きの『ロビンフッドの悠弓』で矢を放ち、その隙間を埋めるように備然は『ガンダーラの如意棒』を容赦なく振るう。
矢と棒の複合攻撃に、三連星のリーダーことトロアは応戦。手のひらで生成されたエネルギー弾で的確に相殺させていく。
「即興にしてはまずまずのコンビネーションだな。しかし、所詮は愚か者。力量の違いをまだ理解していないようだ」
トロアはフゥと息を吐くと、ひと一倍大きなエネルギー弾を撃ち出した。明らかに数もパワーもあがっている。先程までのやり取りが嘘であるかのように、彼の猛攻は止まらない。
「どれ。久々に剣でも手にしてみるか」
そう口走ると、手元の弾がみるみるうちに剣の形へと姿を変えた。備然たちが驚く間もなく、トロアは薄紅色の剣で速攻を仕掛ける。
ガガガガッガッ……
剣と如意棒による一進一退の攻防。先に気を抜いた方の首が飛ぶ、そんなギリギリの戦いである。
「滑稽だな。今どきの桃太郎は、刀ではなく如意棒で戦うのかっ?」
「はん、テメェも鬼なら金棒持てよ。虎柄のパンツ履いてなぁッ」
備然とトロア。負けず嫌い同士のサガか、互いに一歩も引けを取らない。
しかし、これはタイマンではないのだ。
「──ッ!」
危険予知に従って、トロアは咄嗟にその場で身を引く。刹那、彼の目の前を一閃が通り過ぎた。誰が放ったかなど確認するまでもない。『ロビンフッドの悠弓』を構えた拓郎である。
「忘れるなよ、鬼め! ボクたちは二人で戦っているんだっ」
「……それはそれは。大層ご立派な友情パワーで」
先の矢に麻痺毒が塗られていることは、決勝戦を視ていたトロアも理解している。だからこそ、ここに来てようやく彼は意志を固めた。
(……少し、本気を出すか)
劣等種相手に、圧倒的なパワーを発揮してもつまらない。それではただの"作業"だ。戦いを面白くするためにあえて相手にも見せ場を作る……。トロアに限らず、鬼全体に見られる特徴である。
時に、そのエゴにまみれた演出が自らの首を絞めることも、彼らは心のどこかで理解していた。
「……! 山を下りるぞ、拓郎っ」
「な、ええっ?! ちょっ、どこへ行くんだ備然!」
備然は如意棒をあっさり引っ込めると、いっぺんの迷いもなくフィールドを後にした。彼らしからぬ動きである。拓郎も慌ててそれに続いた。
「…………なんだ。つまらないな」
トロアは高ぶっていた身体がすっかり冷め、声にも元気が消えていた。とりあえず追うか、と呟くとせっかく生えている羽も使わず無愛想な顔で歩き始めた。




