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▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
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101/186

第101話 ▶唯人の処遇

「処遇って……お姉ちゃん、何をっ?」

「言わんでもわかるやろ。どういうわけか、唯人はんは鬼どもに狙われとる。話してもらうんや。どういう関係なんかを」


 団四姉妹の長女、花歌は冷酷に口を開いた。まるで、鬼に関わる者であれば誰であろうと打ち倒す。そんな雰囲気を漂わせている。


 ぎらり、と花歌は目を細めた。視線の先には天地。

「な、なんだ。俺様に言いたいことでもあるのかよっ?」

「天地はん。あんさん、『バリ乾電池』持っとるやろ? ちとうちに貸してくれへんか?」


 それは、なんということのない質問。しかし、その意図を理解した月尊はたちまち目の色を変えて猛った。


「お姉ちゃん、もしかして唯人さんを……!」

「ちと起こすだけや。そない怒ることやないやろ、月尊」

「だからって……!」


 勃発する姉妹喧嘩を見て真津璃は短く顎を引く。

「天地、わかってるよね?」

「そのような怖い顔をせずとも、承知の上だ」

 天地がニヤリと口角をあげた瞬間だった。


 ドォン!


 突然起きた衝撃音が、『ゲニウスの守護神』によるバリアを震わせた。当然、姉妹の口論も一時中断である。

「なんやっ?」


 全員が音のした方を見ると、手持ち無沙汰だったアンジュとビドゥがバリアを攻撃していた。アンジュは二丁拳銃をぶっぱなし、ビドゥは両手にメリケンサックを填めている。


「その調子よ、ビドゥ。叩くバリアをトロアだと思って、派手にやっちゃいなさい!」

「あいよー、お嬢さん! ガンガン行くぜえっ!」


 ビドゥの豪腕から放たれるパンチは一撃一撃が強力で、バリアを確実に破壊へと追い込んでいく。これまでほとんど力を使っていなかった分、その破壊力は圧倒的だ。耳をつんざく轟音がバリアの内側を震撼させる。


「あ、あの男。なんつー馬鹿力だ!」

「フッ、お前と負けず劣らずの馬鹿っぷりなのではないか?」

「こんな時に嫌味かテメェ」


 軽口を叩き合う醍醐と天地だが、二人とも心の中では理解していた。あの拳をもろに受けたら、間違いなく死ぬ、と。焦燥感が否応なくバリアの内を充満させる。その空気に触発されてか――。


「ん、んん?」

 ここに来て、今まで眠り続けていた唯人が目を覚ました。


「た、唯人さん! 気がつきましたか。今、色々と大変なことになってて……」

「月尊、ちゃん? 真津璃に醍醐、天地……そ、それに花歌さんまで。どういう状況だよこれ」


 なぜかAランクの監督がいること。

 決戦のフィールドを抜け出し、バリアの内側にいること。

 鳴りやまぬ轟音。揺れる地平。


 果たして。

「……とりあえず、ヤベェ状況ってことはわかった」

 唯人はかいてもいない汗を手の甲で拭った。

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