第101話 ▶唯人の処遇
「処遇って……お姉ちゃん、何をっ?」
「言わんでもわかるやろ。どういうわけか、唯人はんは鬼どもに狙われとる。話してもらうんや。どういう関係なんかを」
団四姉妹の長女、花歌は冷酷に口を開いた。まるで、鬼に関わる者であれば誰であろうと打ち倒す。そんな雰囲気を漂わせている。
ぎらり、と花歌は目を細めた。視線の先には天地。
「な、なんだ。俺様に言いたいことでもあるのかよっ?」
「天地はん。あんさん、『バリ乾電池』持っとるやろ? ちとうちに貸してくれへんか?」
それは、なんということのない質問。しかし、その意図を理解した月尊はたちまち目の色を変えて猛った。
「お姉ちゃん、もしかして唯人さんを……!」
「ちと起こすだけや。そない怒ることやないやろ、月尊」
「だからって……!」
勃発する姉妹喧嘩を見て真津璃は短く顎を引く。
「天地、わかってるよね?」
「そのような怖い顔をせずとも、承知の上だ」
天地がニヤリと口角をあげた瞬間だった。
ドォン!
突然起きた衝撃音が、『ゲニウスの守護神』によるバリアを震わせた。当然、姉妹の口論も一時中断である。
「なんやっ?」
全員が音のした方を見ると、手持ち無沙汰だったアンジュとビドゥがバリアを攻撃していた。アンジュは二丁拳銃をぶっぱなし、ビドゥは両手にメリケンサックを填めている。
「その調子よ、ビドゥ。叩くバリアをトロアだと思って、派手にやっちゃいなさい!」
「あいよー、お嬢さん! ガンガン行くぜえっ!」
ビドゥの豪腕から放たれるパンチは一撃一撃が強力で、バリアを確実に破壊へと追い込んでいく。これまでほとんど力を使っていなかった分、その破壊力は圧倒的だ。耳をつんざく轟音がバリアの内側を震撼させる。
「あ、あの男。なんつー馬鹿力だ!」
「フッ、お前と負けず劣らずの馬鹿っぷりなのではないか?」
「こんな時に嫌味かテメェ」
軽口を叩き合う醍醐と天地だが、二人とも心の中では理解していた。あの拳をもろに受けたら、間違いなく死ぬ、と。焦燥感が否応なくバリアの内を充満させる。その空気に触発されてか――。
「ん、んん?」
ここに来て、今まで眠り続けていた唯人が目を覚ました。
「た、唯人さん! 気がつきましたか。今、色々と大変なことになってて……」
「月尊、ちゃん? 真津璃に醍醐、天地……そ、それに花歌さんまで。どういう状況だよこれ」
なぜかAランクの監督がいること。
決戦のフィールドを抜け出し、バリアの内側にいること。
鳴りやまぬ轟音。揺れる地平。
果たして。
「……とりあえず、ヤベェ状況ってことはわかった」
唯人はかいてもいない汗を手の甲で拭った。




