第二十話
「マイ、先に伝えておくね。私は消滅したくなかったから、ここにいる。ここに来たくて、来たんじゃない。そして、地球の輪廻の輪に帰る方法を提示された。私は、帰りたい。だから、帰るために必要なことを、最優先にする。私がする今後の判断には、すべてこのことが根底にある。これからする説明も同じだよ。だから、よく聞いて、自分はどうするのか、考えて欲しい。」
「はぃ。・・・アルさんは家族に・・・」
「それは、無理だと思うよ。死んだことは、受け入れているんだ。記憶があるからね。死んだ人がどうやって、生きてる人に会うの?不確かなことに縋るよりは、私は確実性を求めるよ。だから、輪廻の輪に帰る。マイもちゃんと考えて。」
「わかりました。」
「じゃ、推測交えてになるけど、説明していくね。まず、生活水準。基本的には電気・水道・ガスはない。ただし、魔法がどのくらい日常生活で使われているかによって、日本に近い生活が出来る可能性はある。これは、実際に人のいるところにいかないと、わからない。私たちの送り込まれた場所は、服から判断して、ヨーロッパの中世に該当する場所だと思う。
産業革命の前にあたるから、工業化はされていないと思う。すなわち、手工業で、様々なものを生産しているはずだよ。数が不足しているか、受注生産かもしれない。その場合、高くなるし、時間がかかる。特に、問題なのが食料が不足していた場合だよ。自分たちのところになくて、近くの国にはあって、自分たちは軍事力があるってなったら、自分たちが生き残るために、他者から奪う。これが戦争になる。戦争してる国もあるという理由の一つになると思う。ここまでは、いいかな?」
「あのっ、この付近でも戦争してるでしょうか?」
「わからない。こちらの情報は、ほぼ無いからね。昨日、寝る前にこの森を鑑定してみた。ここは、ツォーレの森。塩の道の南に位置し、塩の道に沿ってポヤの木が群生している。という情報を得たよ。塩の道を探して、人を探そう。まずは、人に会ってこちらの情報を得ないと。食料が尽きる前に、補給できる場所に着きたい。最初に調査に出る方角は、二人が向いてた方向にしよう。どう?」
「そうですよね。人を探さないと聞けないですよね。・・・道を見つけるまでは、ここで生活しますか?」
「それがいいと思う。二人で仕事を分担しよう。私が調査にでる。その間に、マイが家事とか作業をするってことにしたい。」
「一緒に調査しないんですか?」
「食事の準備とか洗濯とか、生活や移動に必要な道具を考えたり、作ったりをして欲しい。一緒に調査に出て、戻ってきて食事の準備するのは、時間のロスが大きいと思う。それに、魔物や獣の生態がわからない。ツォーレの森は、奥に行くほど強くなるそうだから、この方角に塩の道があると確証がない状況では、結界のあるとこで待っててもらったほうが、安心できる。私一人なら防御の術があるし。」
「・・・わかりました。」
「ありがとう。後、ここからが本題。身分制度・・・貴族のような特権階級があるということは、反対の立場の奴隷階級もあると思っていたほうがいい。これも戦争の理由の一つになると思う。奴隷を求めて、他国や多種族を侵略している国もあるだろう。ここには、ここの歴史がある。だから何を見ても・・・奴隷がひどく扱われていたとしても、ここでは、そうなんだと受け止めて欲しい。くれぐれも、そんなことは間違っているとか言わないで欲しい。いいかい?」
「ぁのっ・・・奴隷って・・・でも・・・」
「マイは今まで、教育を受けてきて、平等だと、人を殺してはいけないと教えられてきたね。でも、ここは日本じゃない。日本のルールは通用しないんだ。奴隷という制度がどうなっているかにもよるけど、借金の代わりに身売りしたとか、犯罪を犯したから奴隷として重労働しているとかだと、何かの対価として奴隷になったってことだよ。これは、まだ受け入れやすいと思う。これを否定したら、借金踏み倒しOK、犯罪OKになってしまうからね。
問題は誘拐されたりして、物扱いされている場合だね。その国がそのことを是としているなら、これを否定することは国の敵になるということだよ。そんなことをすれば殺される。一個人が一国に勝てると思う?」
「それは・・・でも、誘拐とか・・・ひどいと思います。」
「じゃあどうするの?口でいうのは簡単だよ。具体的にどうするの?・・・マイに何ができるの?」
「あの・・・それは・・・」
「私は死ねない。世界の成長を促すまでは。・・・帰りたいんだ!その前に死んでしまったら、帰れない!!・・・一緒に行動するなら、マイも危険を招くような行動は、しないで欲しい。特権階級は、基本的に自分たちがすることは全て正しいと思っているだろう。要は、黒いものでも特権階級が白だといえば、白と扱われる社会だと思えばいい。そんな社会で、否定する発言を聞かれれば、不敬罪で即死刑もあり得るよ。マイはそうなりたい?」
「死刑って、言っただけでなるんですか?・・・そんなことって・・・」
「ガチガチの身分制度ならあり得る。日本だって昔は身分制度があったし、現代にだって他の国ではあるよ。だからこそ、説明している。ここは日本じゃない。発言の自由があるとは思わないで欲しい。心の中で、思うことは自由だよ。でも発言と行動は違う。それを理解して。感情で行動しないで。死んだらどうなるかわからない。成長を促せなかった場合のことを・・・あの存在は言わなかった。促せた場合だけだ。促す前に死んでしまえば、役に立たないと消滅させることも十分に考えられるだろう?
マイ、マイにはもう守ってくれる親はいない。自分で考えて、自分の行動に責任を持たなくてはならない。・・・少し休憩しよう。じっくり考えて。」
「・・・はぃ。・・・ちょっと、時間ください。」
「マイも、水飲んで。時間はあるから。今日は、打ち合わせに当てようと思ってたし。・・・マイ、初対面の人間にね。いきなりあなたのしていることは間違っているって言われたらどう思う?感情で行動すれば、同じことをこの世界のひとにすることになるよ。
自分も周りの人も、ずっとそうやって生きてきた。当たり前だと思っていることを否定されたら、相手はどう動く?奴隷とか抜きにして考えてみて。」
「はい。」
ふぅぅ。空気が重い。第二段階終了。後はマイ次第。
水を飲もう。残っていた水を、飲み干す。
魔力を確認する。
魔力 : 2/25 1魔力回復か。
体力なら体を鍛えたら上がりそうだけど、魔力って鍛えることができるのか?容量を増やしたい。毎日1回は使い切るようにしてみるか?寝る前に使い切るように調整しよう。
魔力を感じ取れるようにも、ならなくては。
バスの乗客は定員40名で、運転手を入れれば、41名。引く4名で37人がこちらに来ている。12人はペアを組むから、25の場所に送り込まれた。車も電車も無い。徒歩でどれだけ旅ができるのか・・・世界がどのぐらいの大きさかで、遭遇するかどうか、変わってくるな。
死を受け入れたのは何人だ?受け入れることが出来なければ、どういう行動をする?・・・できれば会いたくないな。もともと、一人で乗っていたし、知り合いがいるわけでもない。探す必要は無いが、マイがどう行動するのか。親しい友達なら、探したいだろう。
拠点を決めるまでは、あちこち行ってもいい。問題はその後か。一緒には行けない。旅が安全とは、とてもじゃないが思えない。一人で探しに旅立つか、拠点を決めて会えるのを待つか・・・その時に、決めるように伝えておくか。
こちらの態度をはっきり認識させておこう。
マイの様子を伺う。考え込んでいる。まだ、時間が要るな。
明日からの調査で、森林対策を考えるか。行くのはいい。問題は、どうやってここに戻ってくるかだ。木に囲まれて、同じようにしか、見えない。木に傷をつけて、印にする?見落としそうだ。時間もかかるんじゃないか?
他には・・・ロープいや、糸を作って、歩きながら糸をたらして目印にする。繋がっているから見失わない。材料はある。これでいこう。
後は、木製の商品を考えよう。商売の準備だ。




