軍議
「荼の軍を退かせましょう」
クム・セナお姉さんは、はっきり言い切った。
う。
視線がささりますね。
ぐさぐさきますね。
そんなことできるの? みたいな。
アッタさんが姉妹たちを見渡した。
「かまわずに続けてください、セナ様」
「では」
クム・セナお姉さんはせき払いをした。
卓のうえには、地図が広げられている。
「荼の軍はおよそ、一万。南方からの軍は峠を越えてきた軍と合流して我らの目前におります。それに加えて、北に二千の軍が控えている」
「その通りです」
アッタさんが相づちを打った。
「これを退かせると仰るのですか?」
うなずいちゃうんだもんね。お姉さんのアタマの中、いったいどうなってんだろ。
「こたびの戦、厦軍は数では劣っておりますが、唯一勝る点があることに、お気づきでしょうか」
勝る点。わかりません。
「堅固な城と、備蓄です」
「兵糧は十分とは言えません。籠城を続けるのも、限界があります」
クム・セナお姉さんはうなずいた。
「それはあちらも同じこと。野外で人馬は消耗してゆくばかり。今回は儷が加勢しませんので、他の国も出兵をみあわせているはず。援軍も物資の補充も見込めません。荼は攻手ながら、孤立無援に陥っているのです」
ワヌ・シンの命をねらい、王宮で息の根を止めようとしたあのおじさん。内応っていうのは、つまり内側から門を開ける、っていうことだ。王サマをナキモノにして、第三王子をむかえようって、そういうつもりだったんだね。
「時がたてばたつほど、あちらが不利になります。ゆえに、焦って攻め込んでくるでしょう。城攻めにおいて、有利なのは迎えうつこちら。されど、攻防すればどちらもただではすみませぬ。大勢の民が門の内におりますので惨状になるは必至」
クム・セナお姉さんは拳で卓をどん、とたたいた。
「ですから、早急に落城の合図を」
ドスのきいた声。トリハダたちます。
はい、落城の合図ですね。
つまり降参。
はい?
お姉さん、マジですかっ。




