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添い寝のエサ

 ワヌ・シン、寝てると幼い感じになるなあ。

 そこで、はたと気づいた。


 もしかして、この人「オレマン!」弐拾参巻持ってるんじゃね?

 今、大チャンス。

 いつも懐に入れてるんだよね。服の中。

 ちょっとだけ、失礼しますよ。

 寝込みに泥棒するなんて、気が引けるけど。

 でも、ワヌ・シンがわるい。

 私にとって弐拾参巻がどれだけ大事なものか、知ってて渡さないんだから。

「おーい」

 声をかけても、反応なし。

 よし。今しかない。

 胸を押してみる。そーっと。

 単行本が入ってれば、すぐにわかる、はず。

 でも、残念。

 今日は厚めの上着をきてるから、よくわかんない。

 ここは、直接。

 おそるおそる手を入れて、お腹のあたりを探ってみたけど、みあたらない。

 持ってこなかったの?

 あぁあ、がっかり。

 添い寝のエサに持ってくるかと思ったのに。

 

 広いベッドの足下で、体育座りをして考えた。

 世界一のお金持ち。

 何でも持ってて、眉目秀麗、頭も良くて。

 そんな主人公が、ある日、お饅頭まんじゅうになっちゃう。

 昨日まで持っていたもの、全部が無意味になる。

 それは、悪の秘密結社の呪いだったんだけどね。

 思い返してみて驚いたこと。

 弐拾参巻まで、そのシンプルな設定だけで突き進んできたんだよ、「オレマン!」は。

 弐拾参巻でも、もう十分、いろいろ語り尽くされた感じだったのに、さらに四十弍巻まで続くって。

 でも、サトおばあさんのところにあるんだもんね。

 現物を見ちゃったら、死ぬに死ねない。

 それはともかく。


 「オレマン!」、続きはどうなったのかな。

 何もかも失って、そのあとイッコだけ残ったのは、恋する心。

 好きな子に、好きだって、ただそれだけ伝えたい。

「クム・セナお姉さん」

 お役目とか、責任とか。

 全部おいといて。それが許されるとしたら。

 お姉さんは誰を好きになるんだろう。

 自分をせめて、いつもそればっかりで。

 ハナさんの言うように、お姉さんはケチなんだな。

 自分のことを、ちっとも大事にしない。

 大事にしていいはずがないって、思いこんでる。

「ちがう気がします、お姉さん」

 私は、何も知らない。

 のんきで平和な世界からやってきた、ただの女子高生ですけど。

 お姉さんが、ムリしすぎてるのだけは、わかる。


 心をすり減らさないと、生き延びられなかった。

 想像は、できます。

 想像することしかできないけど。

 お姉さんの体、あっちこっち傷だらけ。

 腕やら、足やら、背中やら。

 うなじにもひとつ、ひきつれたような跡がある。

 女の人が戦うって、いったいどういうことなのかな。

 想像の範囲を超えちゃってる。


 うん?

 うなじ。

 ここ、ハナさんに「ちゅう」っとされたところだ。

 うわわ。

 思い出すと、顔が熱くなる。胸が苦しくなる。

 どうしてかな。

 どうしてって。

 考えてると疲れる。

 上掛けの中にもぐりこんで、私はちょっとだけ目を閉じることにした。

 

   


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