饅頭をください=結婚
「饅頭ってどうやってつくればいいんですか」
「きゅうに、どうした」
山でとってきた薬草。それからナンタラいう豆とか、栗とか。
果物、穀物。
竜の人の暮らす場所には、四季のものすべてが一つところになる、山がある。そのふもとに竜の人たちは暮らしていて、たくさんの実りを加工して、薬やらお酒やら、いろんなものをつくるのだ。
「饅頭、食べたいっていう人がいまして」
岩穴の中の涼しい保管庫で、栗の皮をむきながら、私はため息をついた。
「料理全般、苦手なんです」
お手伝いしてこなかったのが悔やまれる。
でも、家庭で饅頭手作りしてふかしたりって、あんまりしない、よね。
「具は何を入れたらいいのかなあ。ねえ、ジャンミさんおしえてくれますか」
私の頭上、すごく高いところにある薬棚を調べてたジャンミさん、はしごに後ろ足だけでつかまって、こっちをさかさに見下ろしてる状態。
長い髪がばさーっと水揚げされたワカメみたい。
「作ってやると、約束したのか」
でこぼこの岩壁を飛び伝いながら降りてきたジャンミさんは、私をじいっと見下ろした。きれいな赤い瞳が、踊ってる。
「口づけは?」
えっ。
「あっ、あれは別にどうでもいいんです。忘れることにしたんです」
「ワヌ・シンも形無しだな。ずいぶん悔しがっていた。逃げられたって」
「あの人にあげるんじゃありません。その、副隊長さんに」
「へえ」
ジャンミさん、まばたきをした。
「口づけは王に、饅頭はハナにやるって。はは。フクザツだな」
「なにが、どうフクザツなんですか」
にやにやしながらジャンミさんは、背中をぐいぐい押してくる。
ちょっと、なんなんですか。
「唇を許したら、共寝してもよいということ。饅頭を作ってやれば、妻になってもよいということ」
トモネ。一緒に寝ること。
っていうのも鳥肌もんだけど。
饅頭、すなわち結婚。
ひい。うそ。
饅頭をください=わたしのために飯をつくってください。
だって。うそでしょ。
つまり、結婚してください。なの?
どど、どうしよう。
お姉さん。
私、とんでもないことやらかしました。
オーケーしちゃいました。
「厦王を愛人にして、腹心の部下を夫にするか。なかなか面白い」
ジャンミさんは、大声で笑った。
「べつに一人に決めずとも、夫はたくさんでもいいものだよ」
「いやいや!」
「寝てから決めたらいい。気に入ったほうを選べば」
「はあ?」
何言っちゃってるんですか。
「おまえの好きな二本足だもの。いや、二本足にしては、どちらもいい男だよ。なかなかそそる」
「上半身限定でしょ」
「そうか、おまえさんは下半身が気になるんだったな」
雷がどっかんどっかん落ちたみたいな大爆笑だ。
下ネタ。ライトな下ネタ。
しかもそんなに笑えませんから。
「選べるじゃないか。それでいいんだよ、セナや」
いや、よくないです。
てか選んでません。
キスはその場の勢いですし、お饅頭はあげられるかもしれないけど、お姉さんの貞操は渡せませんよ。




