少なくとも五回はクチビルを奪われました
厦は、竜を祖先として建国された。
といわれる。ラシイ。
騎馬の民じゃなかった?
「その通りだ。我らは草原をすべる騎馬の民。あんた乗馬はできるか?」
私は幼稚園のころ、ポニーに乗ったことがありますけど。
「ぽにー、だと」
首をひねってる。
それよりも。
この人が厦の王様だっていうんなら、副隊長さんが訪ねていったはずだ。
「儷から、使いがきませんでしたか」
「どうかな。知りたいか?」
ほんとに、王様?
ただのイケメンじゃないですかね。
私は、王様(自称)の腕をつかんで、ひっぱった。
「なんだ、なんだ」
お姉さんは力ありますから。
お兄さんひとりくらい、ヨユウで引きずっていけますよ。
とりあえず、もっと静かなところに行きましょう。
「あなたが厦の王様だとしたら、聞きたいことがあるんです」
「何を、聞きたい?」
あれ、動かない。
「おれこそ、聞きたい。あんたは、なぜここにいる」
ふつうに立ってる王様(自称)。
「わかりません。私は、ただのセナですから」
思いっきり引っ張っても、動かない。
「ただのセナか。それはいい」
低い声が耳元をかすめた。
「戦からも政治からもはなれ、ここで何をし、おれに何を聞こうって? ここでは口にできないような、やらしいことか?」
はあっ。
「ヤラシっ?」
ち、ちちち、ちがいますよ。何言ってるんですか。
ぐっと、反対に引っ張られた。
鼻と鼻がくっつきそうなくらい近くで、その人は笑った。
「クム・セナ。やっと、来たな。あんた、おれをどれだけ待たせたら気がすむんだ?」
顔、近い。
こ、これしきっ。
あわてたら、甘く見られる。
「口づけくらい、許せ」
「むはっ」
いやですよ、なんですか、コノヤロ!
「恥ずかしいのか。なら、おい。目くらいとじろよ」
なぁあぬにいいい。
だめです、だめだめ!
「だめは、いい。おれの国では、そういうことだ」
なんですか、その超・都合のいい解釈。
いやよいやよも、なんとかって。不変の真理なんですか?
「黙れよ」
ワヌ・シン。
それが名前だとわかるまでに、少なくとも五回はクチビルを奪われました・・・・・・。
ありえねえっつうの。
クヤシイ。負けた気がする。なんか、あのう。いやじゃなかった。
あったかくて、やわらかくて、気持ちよかった。
「初めてか。ふうん」
わあああ!
我に返って、頭突きをくらわして、逃げました。
もう。もうもう!
お姉さん、ヘンなヤロウにフラチなまねさせちゃって。
ふあっ。
本当に、ごめんなさいっ。




