おまえになら、壊されてもいい
天の国ねえ。天国?
ま、キレイっちゃあ、キレイだけど。
現実的じゃないんだよなあ。
まさに、夢の世界。
空には七色の光の帯が流れてる。
オーロラみたいなの。
見とれてると、金色の光が波みたいに押し寄せてくる。
よく見ると、これ魚。
ぴかぴかの魚が、群れてドワァッてくるの。
足下をすくわれて、おぼれかけた。
タスケテ。
ごぽっと口から、空気がもれた。
体中の息を吐ききって、もうダメかも、って思ってけど。
結論。ぜんぜん、大丈夫だった。
苦しくない。
考えない。なるようになる。
そしたら、万事、大・丈・夫。
イチマツの不安はあるけど。
深~い深い場所にある、御殿みたいなとこに連れて行かれました。
タイやヒラメが舞い踊るわけでもなく。
ただただ、静か。
甘い桃のにおいがするんだよねえ。
桃の木がたくさん、植えられてんの。重そうな実が揺れてる。
どれも、MAXに熟しちゃってます。
でもね、食べちゃだめ。
おしい。めっちゃ、おいしそうなのにね。
「腹が減っても、ここになる果実には触れるな」
もったいない。
腐って落ちちゃうじゃないですか。
「かたい産毛を唇に当てでもしたら、それだけで乾きが身を灼くように辛く感じることだろう」
エロ天帝さん、うなずいた。
「眺めてもいけないし、手にとって香りを楽しむなど、もってのほかだ」
だって。ひどい話。
「みな、すべてを忘れて天上に昇って行くのだ。未練は、重い足かせになる。この桃を食えば、思い出す」
桃の園の奥の奥、ちかりと何かが光った。
門。白い石の門だ。
あ、見たことあるな、なんか。
と思ったら、吸い込まれるみたいに、体が引きずられてゆく。
「地上のすべてに謗られようと、おまえにだけは恨まれたくないものだな」
気づいたら、抱きしめられてた。
「おまえになら、壊されてもいい」
苦しいです。
壊すって。もう、わけがわかんない。
「未練が、鍵だ」
未練。
やり残したこと。
どうしても、あきらめきれないこと。
サトおばあさんにとっては、逆ハーレム。
私にとっては、「オレマン!」ってこと?
うーん、よくわかんない。
「わからずともよい、気にするな」
むり。気になります。
「ならば、そなたの片割れとともに、考えなさい。もがくのもよい。難しい道だが」
難しいことは、ちょっとやだなあ。
今まで、どうにかして難しいことをさけるかどうか、そこにアタマをつかってきましたからね。
「わたしは、いつもそばにいる。おまえが望もうと、拒もうと。忘れないでおくれ」
は、はあ。
あっさり、返答に困ること言わないでくださいよ。
え。
あの、あっ!
手、どうしてはなしちゃうんですかっ。
わ、わわわ。
吸い寄せられてますっ。
もう、や。
もうやだ。
やだやだ! コンチクショウ!
わめきながら門のなかに私は落ちた。




