すべてがつきるところ。そして、はじまるところ
手に取った、と思ったら。
「セナ。おいで」
あ、エロ天帝さん。
わたしの、マンガ。
知りません?
そういえば、そうだ。
あのう、私、けっこう頭にきてるんですけど。
あなた、言うこともやることも、めちゃくちゃですよ。
「めちゃくちゃか」
にこっと笑ってみてもダメです。
私ね、あなたのことが大嫌いになりました。
絶品ネギ料理はべつとして。
お姉さんになんであんなことしたの。
「セナのためには、ああするしかなかったのだ」
どうして?
「セナや。セナ。おまえはクム・セナでもあるのだよ。サトウ・セナ」
はい?
待ってくださいよ、もう。
名前がね、同じだって、そいつぁ無理があります。
お姉さんと私が、どうしてそうなるんです。
「話せば長い、ようで短い」
どっち。
「十五年前。開かれるべきセナの門に、大妃が鍵をかけたのだ。魂の半分を引きはがし、異界へと捨てた」
そんなこと、できちゃうんです?
ねんどみたいに、ちぎって捨てたりできるものなんですか?
「うん」
うんって。
「されど、断ち切ることはできなんだ。細い糸でつながっていたのを目にしただろう。十五年もかかってしまった。おまえをこの世に呼び戻すのに」
待って。
ちょーーと、待ってください。
呼び戻す。
私は、事故にあって、その。
死んじゃって、ここにいるんですよね。
呼び戻すって、どういうこと。
「言葉のまま」
エロ天帝さん。ねえ。
こたえてくれないの。
はぐらかされたのかな。
ムカつく。
遠くを見てる。七色の空は金銀を細かに砕いてまいたみたいに見える。 数え切れないくらいのクラゲが、ゆっくりフワフワ漂いながら上昇してく。
「人のたましいは、どれもみんなうつくしい」
たましいですか。クラゲじゃなくて。
どこへいくのかな。
ずっと遠く、空の向こうには何があるの。
「無だ」
む。
ムー。
「すべてがつきるところ。そして、はじまるところ」
ゆっくり私に向き直って、エロ天帝さんは頭をなでてくれた。
「セナや」
大きな手だ。
やめてください。
子どもじゃないんだから。
「天の国を見物してゆきなさい」




